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インタビュー

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2016.12.27

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世界初? 手のひらサイズの忍者が参上!『てのりにんじゃ』 山田マチさん 北村裕花さん インタビュー

忍者好きの皆さん、お待たせしました! 世界初?手のひらサイズの忍者が登場する絵本が出版されました。今回は『てのりにんじゃ』の作者 山田マチさん、北村裕花さんにインタビューを行いました。山田マチさんは100字の原稿用紙に100字ピッタリにお話を書く、「山田百字文学」(「小説NON」祥伝社)の連載をはじめ、児童書「山田県立山田小学校」シリーズ(あかね書房)などを発表し、注目を集める文章家。NHK Eテレ「ヨーコさんの“言葉”」の挿絵や絵本『おにぎりにんじゃ』(講談社)などを発表する画家の北村裕花さんとどんなタッグを組んだのか、ぜひお楽しみください。

  • てのりにんじゃ

    みどころ

    手乗り忍者は、手のひらに乗るほどの小さな忍者。足音も立てず、とても素早く動くので、なかなか姿を見ることができません。家の中で手乗り忍者を見つけた男の子は、忍者の食べ物を用意して遠くから見守りました。

    くすっと笑える、友情物語! 絵探しを楽しめるページもあります!

    小林賢太郎氏(劇作家・パフォーマー)から推薦コメントが届いています。
    「世界初なんじゃないですか? 手のひらサイズのは」

「前提のない」子どもに笑ってもらうには……?

───「てのりにんじゃ」とは文字通り、手のひらに収まるサイズの忍者。山田さんの紡ぐナンセンスな笑いと、忍者と男の子の交流を描いた、あたたかい作品です。そもそも、てのりにんじゃという言葉にパッと目が行ったのですが、「てのりにんじゃ」はどのように誕生したのですか?

山田:5年ほど前、神保町で「山田百字文学」などを展示する個展を開催していたのですが、そこにいらしてくださった方の中に、チャイルド本社の編集の方がいらしたんです。そのときに「月刊絵本におはなしを書きませんか?」と誘っていただきました。

ひさかたチャイルド・菊池:私はその日、偶然神保町の町を歩いていたのですが、なぜか、ヒューッと吸い込まれるように、山田さんの個展会場に入っていきました。会場は、壁一面に山田さんのオリジナル100字原稿用紙が飾ってありました。10文字×10文字の100字が入る原稿用紙に、短い物語が書かれていて、そのどれもが面白く、しかもちゃんとオチがある(笑)。展示を見ているうちに「絵本の文章を書いてもらうのにピッタリな方だ!」と思いました。

───それで、絵本の文章を書いていただくことになったのですね。山田さんはもともと絵本を作ることに興味があったのですか?

山田:私は10年ほど前から、「クスリ、ニヤリと鼻で笑ってほしい」という一心で、大人向けに短い文章を書いていました。そうして、ホームページに発表したり、雑誌に連載したり、ときどき、直接感想が聞きたくなると、個展を開いて、来て下さった方に読んでいただいていました。そうすると「本を作ってみませんか?」と声をかけてくださる編集者の方が何人かいるのですが、児童書や絵本に携わっている方が多くて、自然と「私の文章は、子どもの本に向いているのかな……」と思うようになりました。ただ、今回の絵本は今まで書いてきたものと少し勝手が違いました。

───それはどんなところですか?

山田:例えば、「山田県立山田小学校」シリーズは、小学校4年生の男子を笑わせるイメージで、「このくらいの表現なら伝わるかな?」と考えながら、今まで大人向けに書いてきた作品の方向性のまま書いています。前提となるものがあって、それがちょっとズレることで「笑い」が生まれるので、「前提」があることが重要なんです。でも絵本を読む年齢の子たちには、そもそも前提がない。だから、前提となるものを知らない子どもたちに、どうやって笑ってもらえるかがとても難しかったです。

文章を担当した山田マチさん

───そこで出てきたのが「てのりにんじゃ」という全く新しいヒーローだったのですね。

山田:実は最初に思い浮かんだのは、忍者ではなく、「手乗りお殿様」や「手乗りカミナリ様」など、子どもの手のひらに乗るくらいの小さいサイズの“何か”でした。何パターンも「手乗り」になって面白いものを探してみて、その中で忍者が一番面白いおはなしができそうだと思ったんです。

───おはなしよりも先に「てのりにんじゃ」というキャラクターが先に生まれたのですか?

山田:そうですね。ただ、最初の頃は今のおはなしと違って、「飼い方」を紹介するような作品でした。よく「ハムスターの飼い方」や「文鳥の飼い方」みたいな感じで、「てのりにんじゃの飼い方」という内容だったんです。でも、編集の方と何度も打ち合わせを重ねるうちに、「てのりにんじゃ」について詳しくなれるHow to本のテイストを残しつつ、物語性を少し加えた作品にしようと内容も大きく変わってきました。

───私たちの身の回りに「てのりにんじゃ」がいて、秘密の忍務を行っているという設定で進むストーリー。「もしも おなかを すかせて ちからつきた てのりにんじゃが、あなたの おうちに まよいこんできたら どうしましょう?」という部分で、グッとおはなしに引き込まれていきました。

山田:忍者たるもの、簡単に知らぬものに心を許すわけではないので、そのあたりの作り込みをしっかりすることで、「てのりにんじゃ」は本当にいるかもしれないぞ……と子どもたちに思ってもらおうとしました。

───「てのりにんじゃ」という、今まで誰も見た事がないもの、知らないものを生きている存在として形作らなければならないというところに、ひとつハードルがあると思います。それを、「取り扱い注意書」のような巻物が出てきて、説明が入ることで、「てのりにんじゃ」は本当にいるのかも……と思うようになっていく。その肉付けと、過程がすごく楽しく感じました。

山田:自分のなかでも「てのりにんじゃは、いる」というふうに決めて、「どういうふうに接すれば仲良くなれるか」を考えていきました。巻物にすることで、極秘の内容をこっそり教えてもらったような得した気分になってくれるかもしれない。おはなしの舞台を家の中にすることで、「うちにも、てのりにんじゃが来てくれるかもしれない」と、おはなしに入り込んでくれるのではないかと、いろいろ考えました。

───普段、「てのりにんじゃ」は素早くて、私たちには見えず、ピンチな状況に陥ってはじめて姿を現すという設定が、とてもリアル。この状態になるまで、「てのりにんじゃ」には何があったんだろう……と想像力が膨らみました。絵を北村裕花さんが担当されていますが、北村さんとは以前から面識があったのですか?

山田:今回の『てのりにんじゃ』の絵を誰にするかを考えているときに、はじめて北村さんの作品を拝見しました。一目見て、「この人に描いてほしい」と思ったのを覚えています。絵の描き方に幅があって、かわいいものを可愛すぎずに描いている感じがとても良いなぁと思いました。私の文章は、ちょっと淡々としすぎているところがあると自分で思っているので、北村さんの躍動感のある絵で「てのりにんじゃ」を描いていただけたら、きっと、面白い作品になると思いました。

───北村さんは『てのりにんじゃ』の原稿をはじめて読んだとき、どう思いましたか?

北村:とても面白い作品だと思いました。山田さんは、ご自身の文章を淡々としすぎていると言っていますが、私は、その少し距離のある文章だったことで、とても絵がかきやすかったです。

絵を担当した北村裕花さん

山田:手のひらに乗るくらいの小さい忍者というと、ファンタジーのおはなしのように感じてしまいますよね。でも、物語の舞台は、私たちの日常。その日常に「てのりにんじゃ」がいるかもしれないと子どもたちが思うような、リアリティを出したいと思っていました。北村さんの描く男の子や、井戸端会議をしているおばちゃんたち(笑)、家の中の様子がとても現実的で「てのりにんじゃ」にもしっかりと血が通っているようになったのは嬉しかったです。

北村:私は普段、ラフを本当に粗い状態で描くことが多いのですが、今回は「てのりにんじゃ」の小ささをしっかりと表現しなければいけなかったので、身の回りにあるものと「てのりにんじゃ」とのサイズを比較したりと、山田さん、編集者の方と相談しながら進めていきました。

───「てのりにんじゃ」の忍び装束は、とてもオーソドックスなものだと思うのですが、ビジュアルはどのように決まったのですか?

山田:イカ型の頭巾というのは、実は身分の高い忍者が身に着けるものらしいのですが、ここは、かっこよさ優先で(笑)。そして、大人の忍者であることにもこだわりました。

北村:ラフの段階では、男の子と同じくらいの年齢の忍者も描いたのですが、「ちいさいけれど、格好良く」というのが私たちのイメージにあったので、今の切れ長の流し目忍者になりました。

山田:やり取りの中で、「俳優の●●●●みたいに!」というお願いをしたりして……(笑)。最終的に、とてもイケメンの忍者になりました。

なんて、良い話になってしまったんだ!

───忍者が家の中にあるものを使って、大好きな修行をする場面も、「洗濯バサミでこんな修行をするんだ!」と発見がありました。

山田:この忍者の修行のところは、北村さんにがんばっていただきました。

───そうなんですか?

山田:一度、ラフスケッチまで仕上げていただいたのですが、絵を見たら、家庭にあるものでできるもっと面白い修行があるような気がして……。北村さんに何度も提案して、編集の方と3人で、何度もすり合わせをしました。

北村:山田さんや編集の方からたくさん提案いただいたのですが、絵に描いてみると修行の内容が分かりにくくなってしまうものもあって、最終的なアイディアが決まるまで、時間がかかりました。

───例えばどんな修行が提案されたか、覚えていますか?

北村:「てのりにんじゃ」のアクションシーンを表現できたらということで、電卓をパンチしている様子や、お母さんの肩を足踏みで指圧しているような案も出ました。

試行錯誤を重ねたラフ(下絵)を見せていただきました。

───それは楽しそうですね。

山田:ただ、実際に絵にしてみると子どもに伝わるか、躍動感が出せるか……などの疑問が出たりして、話し合って、カットした場面もありました。

北村:最後のパーティーの場面も、いろいろ案が出ていたんですよね。

山田:そうなんです。料理は鍋やちらしずしなど、いろいろな案が出ました。でも、鍋だと全体の色味がちょっと地味になってしまうので、考え直すことになり。ちらしずしもよかったのですが、忍者の技のバリエーションをたくさん入れられて、しかも出来上がった料理に忍者らしさを出せるものを……と考えて、「てのりにんじゃ」にケーキを飾り付けてもらいました。

──キウイを手裏剣の形に切っていたり、苦無でクリームをぬっていたり、アクションと動作が合っているのがクスッと笑えますね。お父さんのビールの栓を抜いている忍者もいる!

山田:忍者道具の中でも、鎖鎌は派手な武器のひとつなので、どうしても登場させたかったんです。

とても貴重な原画も見せていただきました。

───家族みんなが「てのりにんじゃ」と友だちになっている様子を見ることができて、ほのぼのする場面ですね。しかし、そんな楽しい日々も束の間……。「てのりにんじゃ」は秘密の役目のため去っていってしまう。山に上がったのろしに向かっていく「てのりにんじゃ」たち、たくさんいるのが良いですね。

山田:「てのりにんじゃ」はひとりじゃないぞ、実はたくさんいるぞ! ということを表現したくて、ここはたくさん「てのりにんじゃ」を描いてもらいました。「もしかしたら、うちにもいるかも……」って思ってもらえたらいいですね。

北村:描いているなかでも結構楽しい場面でした。ネコの背中に乗せたり、カラスの背に乗っていたり、「あ、こんなところにいる!」って見つけてもらえたら嬉しいです。

───「てのりにんじゃ」が去った後、男の子はいつかまた「てのりにんじゃ」と会えると思い、窓から外を見ています。この季節の移り変わりがとても美しい。そして……ラストは、すごく感動しました!

山田:私も絵本が出来上がったとき、「なんていい話になってしまったんだ!」と思いました。

───それは喜ばしいことですよね?

山田:そうなんですが……。これまで作ってきたおはなしは、とにかく教訓がない、心に響くことがない、ただクスッと鼻で笑ってほしいというものばかりだったので、絵本ではじめていいはなしを書きました(笑)。ただこれは、北村さんの絵でなければ、成り立たなかったと思います。絵がつくことで、こんなにも感動的で、ロマンチックなはなしになるなんて……と、絵本の奥深さ、絵と文の相乗効果の面白さをしみじみと感じました。

───北村さんは、絵本ができあがってどう感じましたか?

北村:今回、私にもかなりチャレンジなことが多くて、美味しい食べ物や、派手なアクション、そしてイケメン忍者(笑)。「てのりにんじゃ」の大きさも、気をつけて描かないと前のページとサイズが変わってしまうことなどがあって、今までにないくらいラフスケッチをしっかり描き、「てのりにんじゃ」が本当にいるという説得力が生まれるよう、工夫しました。

───男の子の部屋の間取りや、居間に置かれている家具など、細かい所がしっかり描かれているので、よりリアリティが増しているように思いました。そして、忍者のスピード感。本当に軽やかで神出鬼没な様子が出ていました。

北村:ありがとうございます。スピード感は最も出せるか分からないものだったので、どう描いたらいいか悩みました……。「てのりにんじゃ」の軽やかな身のこなしが読者の方にも伝わると嬉しいです。

『てのりにんじゃ』の笑いの原点。

───『てのりにんじゃ」は、独特のユーモアが楽しい作品ですが、その原点について教えていただければと思います。山田さんはずっと「百字文学」などの文章を書かれているのですか?

山田:元々、テレビやラジオの放送作家をしたり、舞台のコントを書いたりしていたのです。

───『てのりにんじゃ』の帯に、小林賢太郎さんがコメントを寄せていますね。

山田:はい、面白いコメントを書いていただいて感謝しています。帯の表だけでなく、裏にまで感想のコメントを書いてくださいました。小林賢太郎という人は、コントや演劇など舞台を中心に活動していて、私はそのアトリエでスタッフとして働いています。サポートのお仕事をしながら、自分の世界も表現できないかな、と考えているときに、文章で人を笑わせたいと思うようになりました。

───コントなどの「お笑い」の世界での経験が、創作の源になっているのですね。

山田:実は、「百字文学」も、元々小林賢太郎さんのアイディアなんです。

───そうなんですか?

山田:はい。「百字の原稿用紙にぴったりで描いたら面白いんじゃないか」と原稿用紙をデザインしたり、おはなしを書いたりしていて。それを横で見ているうちに、うらやましくなって、「それ、私もやっていいですか!?」と。「いいよ」と言われたので、ごっそり企画ごと頂戴して、書かせてもらっています(笑)。

百字の原稿用紙! とても小さくてかわいいです

───絵本や面白い文章のアイディアはどうやって生み出すんですか?

山田:よく聞かれるのですが、「一生懸命考えます!」と答えています。机に向って、「やるぞ!」と自分を奮い立たせて作ります。

北村:はかどる時間はありますか?

山田:うーん……喫茶店とか、夜中のファミレスとか、新幹線の移動中とか。書くことは、紙と鉛筆があればどこでもできるので、なるべく自分の生活空間から距離を置いて、出かけた先で書くことが多いですね。

北村:私も、原画を描くときはアトリエで描きますが、ラフを考えるときは、外に出ますね。家の中だと誘惑が多くて(笑)。

山田:誘惑が多すぎますよね。しなくてもいい掃除をはじめたり、ちょっとお菓子をつまんでみたり(笑)。

───なんだか、創作活動はお二人、似たところがありますね。

山田:そうですね。でも、自宅で仕事をしている人は、皆さんそういう所があると思います。

北村:私、自分でなかなかおはなしを作ることができないので、山田さんのようにおはなしを書ける方をとても尊敬しているのですが、アイディアを思いつくきっかけはあるのですか?

山田:私の場合は連想ゲームでしょうか。「サンタクロース」→「白い袋を持っているおじいさん」→「同じようなのが日本にもいたな」→「七福神」→「年末年始に活躍する」……と考えていった絵本がデビュー作となった『のんびりやのサンタクロース』(あかね書房)です。とにかく、散文をいろいろ書いていくと、あるとき、パッとつながる感じです。

───山田さんの物語を生み出すきっかけなど、貴重なお話を伺えました。ありがとうございます。最後に、絵本ナビユーザーへメッセージをお願いします。

山田:もし、「てのりにんじゃ」が家に来たら、どうしよう……というのを、家族で話し合ってほしいですね。今、家の中にいるかもしれない。今日、来るかもしれない……。そのためには何を準備したらいいかの心構えを、いろいろ考えてもらえたら嬉しいです。

北村:絵本の中に、にんじゃの修行をたくさん描きました。でも、まだ描かれていない修行や、あなたのお家にしかないものでできる修行があると思います。家族皆さんで、「てのりにんじゃ」が修業したくなるような、新しい修行を考えていただけたらと思います。

───ありがとうございました。

もっと知りたい! 山田マチさん、北村裕花さんに一問一答!

───お二人が「てのりくのいち」になれたら、何をしたいですか?

山田:敵の小さい忍者を色仕掛けでだまして、秘密の情報を聞き出したいです。

北村:ゼリーの上でトランポリンみたいに跳ねる修行がしてみたいです。

───家に「てのりにんじゃ」がやってきたら、どんなことをしてほしいですか?

山田:家事を手伝ってほしいです。たんすの裏の手の届かないところとか、隅々まできれいにしてくれそうです。

北村:食器を洗ってくれたり、洗濯物を干してもらえたら嬉しいです。

取材・文:絵本ナビ
撮影:絵本ナビ

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