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しばわんこの和の行事えほん

しばわんこの和の行事えほん(白泉社)

お正月、節分、夏祭り...季節に縁のある遊びに触れながら、親子で楽しめる日本の行事をご紹介。

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に〜っこり

に〜っこり(くもん出版)

赤ちゃんの笑顔はまわりのみんなを幸せにしてくれます。累計発行部数30万部突破の人気シリーズ第1巻!

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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「父」になった戸惑いを描く、ヨシタケシンスケ初の育児マンガ『ヨチヨチ父 とまどう日々』ヨシタケシンスケさんインタビュー

パパが子育てを楽しむのに、2、3年かかると思ってください……(笑)。

───「ヨチヨチ父」は連載から3年の歳月を経て、1冊の単行本にまとまったわけですが、元々連載中から、1冊にまとめて出版することは決まっていたのですか?

ぼくはそうなったらいいなと思っていたのですが、どのくらいこの連載が続くか、スタートしたばかりのころは分からなかったので、言い出せず……(笑)。連載を続けて1、2年経った頃に、編集者さんから「そろそろ1冊にまとめてみましょうか……」とお話をいただき、出版が決まりました。

───月1回の連載ですが、毎回どのように進めていったのでしょうか? 初めに何回分か用意があったのですか?

本当は、子育てをしているときに、ストックがあれば楽だったのですが、そんなものはなかったので、毎月、締め切りの前にうーん、うーんと唸って作っていました。

───2人目のお子さんが生まれてからすでに3年ほどたってからの連載スタートですものね。

そうなんです。実は、上の子が生まれたとき、別の出版社から、「子どもの育児について描いてみませんか?」というオファーをいただいたことがありました。でも、1人目のときは、子育てが本当にしんどくて……というのも、うちの子は、「ヨチヨチ父」の中でも描いたように、夜、全然眠ってくれない子だったんです。毎日毎日追い立てられるように過ごしていました。だから、何かを描き留める余裕もなく、お断りをしていたんです。でも、2人目が生まれて、2年くらいたって今回のお仕事をいただいたとき、ようやく子育てについて、描けると思いました。

───乳幼児期の子育てが過ぎ去ったことで、当時のことを冷静に振り返ったりすることができて、懐かしく思い出せるようになったのでしょうか?

それはもちろんあると思います。でも、生まれたばかりの時期もいろいろ大変なことが起きていたのですが、やっぱり、子どもが成長することで起きる大変なことも出てくるわけで……、その都度、思い出がどんどん上書きされて行ってしまうんですよね。だから、締め切り前に一生懸命、当時のことを思い出していました。

───ネタを考えるときに、育児真っ最中のパパに話を聞いたり、子育てに関する本を読んだりなど、リサーチをすることもあったのですか?

取材をすれば、今のリアルなパパママのことをより深く知ることができるのですが、10人いれば10通りの子育てがあると思うので、今回はあえてしませんでした。それよりも、ぼく自身の経験から、何かを捻出するというスタンスをとりたかったので、あえて外からの情報は入れないようにしていました。

───では、ほとんどヨシタケ家のエピソードだったり、思い出がネタになっているんですね。

そうですね。エピソードとしては我が家のことがメインになっていますが、そのエピソードをどう面白く、調理するか、より共感してもらうためにどの形でオチをつけるかなどは、いろいろ考えています。例えば、絵の中に、いろいろなお父さんが出てきますが、坊主頭の男はぼく自身のつもりで描いています(笑)。なので、エピソードもちょっと個人的な話になっていると思います。それ以外の見た目のお父さんは、幅広く、パパママに受け入れてもらえるように描きました。

───キャラクターの描き分けにもそんな理由があったのですね。ネタにするエピソードはどんなときに思い浮かぶものなのでしょうか?

外に出ると、ちょうど新生児を抱っこしているパパやママを見かけることがありますよね。その様子を見ていると、「うちはこのくらいのときに、こんなことがあったな……」と、思い出すことが多かったですね。

───外出先のエピソードというと、泣いている子をあやすために外に出るパパについて描いた「33 背中」や「36 ゲ●デビュー」が印象的でした。

やっぱり、一回経験していると、似たシーンを目にしたときに記憶が呼び起こされるわけですよね。「あー、あった、あった!」っていう。「18 旅は続く」も同じように思い出したエピソードのひとつです。今はもうドラッグストアに行っても、オムツは買わないですけど、当時は近くのオムツの在庫を常にチェックしながら生活していましたね(笑)。

───「We need OMUTSU!」という札をかざしている絵がとても心情を表していますよね。

それと、実際に子育てをしてみなければ分からないことっていっぱいあるのですが、中でも、嗅覚に関することって、育児の本にあまり描いていないなと思ったんです。そこで、描いたのが、「11 赤ちゃんのにおい」。これは家族ぐるみでお付き合いをしているご婦人がいまして、長男が生まれたときに、会いに行ったんです。そうしたら、「におい嗅がせて」っておっしゃって、頭のにおいをスーって嗅いで「ああ、いいにおい」って。それがとても印象に残っていて、これは描いていて、とても気に入っているエピソードのひとつですね。

───赤ちゃん匂いって独特ないい匂いで、すごく記憶に残りますよね。そして、そのオチにパパのにおいを持ってくるところが、ヨシタケさんらしいなと思いました(笑)。 連載の中には、読者の反響が多かった作品もあると思います。特に印象に残っているものはありましたか?

ひとつは「29 相性問題」を描いたときですね。これは、1人目と2人目を同時に愛せないっていうところの悩みで、ぼく自身も2人目が生まれて、悩んだテーマでした。「自分の子どもは、みんな平等に愛してこその親でしょ?」というのは、もちろんあるんだけれど、性格も年齢も性別もバラバラなわが子を、どうやったらトータルで同じ愛情を注ぎましたって言えるのかという難しさですよね。でも、思い返してみると、自分も子どものときに、全然平等に愛されていなかったということを気づいちゃうみたいな……。描いていて、とても深いテーマだと思いました。あと、反響が大きかったのは「14 イチャイチャしたい」ですね(笑)。

───夫婦のスキンシップの話ですね。

これも、あまり普通の育児エッセイでは取り上げられないことだなぁって思って、ぼくも描いていて、楽しかったです。まあ、子育てが中心になると、パパとママは今までできていたいろいろなことに折り合いをつけなければいけない。でも、そこがなかなか難しくなっていくのが、子育てだなって。ママも大変だけど、パパにもちょっと優しくしてね……というところを描いたら、とても共感していただいたみたいで、描いて良かったなぁと思いました。

───読んでいると、育児が大変だということを感じるんですけど、その中にも悲壮感は少なくて、ある意味開き直りというか、忙しすぎてハイになってしまっているような場面も多々出てくるように感じました。

そうですね。育児自体は本当にもう、すごく目まぐるしく日常生活を送るわけなんですけど、あるとき、育児ってこのバタバタした状態を「楽しい」と思うよう気持ちを変える作業なんだなって気づくんです。そうしないと、とてもじゃないけれど、自分を保てなくなる。ある種、今までの価値観をガラッと変える作業。その方法が分かると、なんでも来いっていう感じになれるんですよ。

───まさに「26 スクラップ・アンド・ビルド」の状態ですね(笑)。

ぼく自身、そういう楽しむ方法が確立できてからはじめて、子育てが楽しいって思えてきたんですよ。

───実際に、どのくらいしてから子育ては楽しいと思えるようになったんですか?

やっぱり、長男が言葉を喋るようになって、意思の疎通が図れるようになってからですね。

───それって、子育てがスタートしてから、結構時間がたっていますよね……。

そうそうそう。だから結構、パパになるって時間かかるんですよ(笑)。ママは10か月間、お腹の中でわが子とつながっているけれど、パパは最初、完全にアウェーなんです。自分の体に何の変化もない中で、いきなり赤ちゃんをポーンと渡されて、さあ、愛情を持てっていう方が、難しい話なんですよ。もちろん、出産で感動して、一気に愛情が湧いてくるパパもいますが、ぼくはそういうパパじゃなかった。だから、2,3年くらいはただただ育児が大変で、辛くて……。でも、そういうパパは決してぼくだけじゃないと思うんです。そのリアルさを共感してもらうために、どう面白がってもらえるかを、ずっと考えて描いていましたね。

───だからあえて、きわどいところにも踏み込んでいったんですね。

「子育てが毎日楽しくて、幸せ!」という子育ての話があるように、「子育てがしんどくて、辛くて、どうしよう!」という話があっていいと思うんです。ぼく自身、そちらを体験したから、「楽しいことばっかりじゃないよね」ということをきちんと伝える枠としてきちんと描きたいなと思うんです。子育ては笑顔ばかりじゃない。子どもの寝顔を見ても、疲れが吹っ飛ぶことはない。せいぜい、「ちょっと軽減された気がするくらい」(笑)。美談に終始してしまいがちな「子育て」を、「そんなわけないよね」っていう部分でまとめられたら、それを共感してもらえる人が、少しでもいてくれたら嬉しいですね。

───それがヨシタケさん自身の感じた、リアルな子育てなんですよね。

そうですね。だから、その「子育ては大変」というリアルを、ちゃんと面白がることができれば最強だよというメッセージを、ぼくの立場として描くことができればいいなと思っています。

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ヨシタケシンスケ

  • 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)、『りゆうがあります』(PHP研究所)などがある。2児の父。

作品紹介

ヨチヨチ父 とまどう日々
ヨチヨチ父 とまどう日々の試し読みができます!
作:ヨシタケシンスケ
出版社:赤ちゃんとママ社
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