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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  「父」になった戸惑いを描く、ヨシタケシンスケ初の育児マンガ『ヨチヨチ父 とまどう日々』ヨシタケシンスケさんインタビュー

「ぼくが読みたいものを描く」。エッセイでも絵本でも、スタンスは変わりません。

───子育てをする中でのいろいろな発見や驚きが、『ヨチヨチ父』の中で描かれていると思いますが、連載が終了して、改めて感じたことなどありましたか?

これは、連載中には言えなかったことなのですが、子どもが生まれて、最も驚いたのが、自分が想像している以上に、いろいろな境遇の人が周りにいるということでした。もっと分かりやすく言うと、「子どもができた」というひとつの現象にも、不妊治療をして、やっとの思いでできたご夫婦もいれば、できちゃったから生むというパートナーもいる訳です。

───そうですよね。

それと同時に、子どもがいない家庭も周りにたくさん存在することに気づきました。子どもが生まれるまでは、子どもって、普通にかわいい存在で、誰から見ても、幸せな話題なんだと思っていたのですが、実はいろいろな境遇の人が周りにいて、子どものことを話題に出せる人と、出せない人がいる中で、ぼくたちは過ごしているということにビックリするとともに、ちょっとヒヤっともしたんです。

───「ヨチヨチ父」を連載していた「赤ちゃんとママ」は、子どもができた人が読者対象の雑誌だったので、あえて、その話題を出すことはなかったのですね。

はい。今回の書籍化に当たって、そのあたりのことを描き下ろしで触れさせていただきました。ただ、その表現の仕方が、本当に難しくて、すごく神経を使いましたね。

───言葉にするのが難しいテーマですよね。

正直、描き下ろしできちんと伝えられている自信はないのです。ぼくが感じた驚きは、育児の最大のタブーに当たるような気がして……。でも、やっぱり、描くことをあきらめてはいけないものだと思ったんです。「育児」「子育て」と自分たちが思っている状況というのは、とても個人的なことで、表面化されているごく一部なんだよということだけでも、何か表現したいなっていう欲がぼくの中にあって。今でもときどき、どんな表現の仕方があるだろう……と考えてはいるんです。でもやっぱり、問題自体は解決しないことも分かっているんですよ。

───そうですよね。

「切望していたのか」「できてしまったのか」。同じ「妊娠・出産」という言葉でも、意味合いが異なりますよね。それをひとつに括ることの難しさというか、難しいからこそ十把一絡げに括ってしまいたいっていう気持ちも充分理解できるんです。みんなが、一様に「子育ては素晴らしいもの」「幸せなこと」と言いたがるのもすごくわかる。でも、ぼくは、そこじゃない部分を拾い上げたいな。なぜなら、そちらを取り上げてもらった方が、ぼく自身が救われると思ったからなんです。

───『ヨチヨチ父』はヨシタケさんが感じた育児の体験記であるとともに、ヨシタケさんが読みたいと思った育児エッセイでもあるんですね。

それは間違いなくありますね。ぼくは絵本を描くときも、自分が子どもの頃に読みたかった絵本を描くというのがスタンスなので。結局、ほかの人のことってよく分からないので、「自分だったら、こういう作品があったら嬉しいな」という感覚で作るしかないんですよね。だから『ヨチヨチ父』で、全てのパパママの悩みを解決できないというのは、もう仕方のないことなんですけど、100人に2人くらい、これを読んで共感してくれたという人がいれば、もう御の字です。

───表現する媒体が変わってもヨシタケ作品のスタンスは変わらないということですね。

そうそう。やっぱり、何かを表現するとき、自分の得意技というか、売りっていうのを誰しも意識しますよね。ぼくも「じゃあ何が出来るの?」って考えたときに、「みんなが触れないテーマに触れられる人、触れても、場が荒れない人」っていう枠を狙っていきたいなというのは常にあるんです。

───「場が荒れない」というのがポイントですね。

場を荒らすことで作家性や話題性を出してる人って、割といると思うんですけど、タブーに触れて、でも「荒れない人」ってぼくの知る限り、あまりいないんですよね。

───たしかに、ヨシタケさんの手法なら、誰も傷つかずにタブーに切り込めるような気がします。

誰も傷つけないで、誰も怒らせないで、その問題に触れることができたら、何か進展する問題もあるはずなんです。だから、そういうところを言える枠に、ぼくはいられたらいいなと、常に思っているんですよね。そこで必要とされるのであれば、僕がやらせていただいている価値が初めて出てくるのかなと。

───ヨシタケさんが次にどんなテーマに切り込んでいくのか、とても楽しみです。絵本ナビユーザーの中には、育児真っ最中のパパママがいらっしゃいますが、どんな風にこの作品を読んでもらいたいですか?

「赤ちゃんとママ」で連載をしていたとき、購読者のお母さんから「私が読んで、そのあとパパも読んで楽しんでいます」という感想をたくさんいただきました。基本的に、育児エッセイは女性が読むことが多いと思います。でも、『ヨチヨチ父』は、ママが読んで、パパに薦めてもらえると嬉しいです。

───なるほど。

そして、面白かったら、パパからパパへオススメしてもらって。そういう感じに広まっていくのが一番理想かなと思っています。

───今、育児真っ只中のパパママだけでなく、プレママ、プレパパへのプレゼントにも良いですよね。

この本を渡しながら「子育てって、そんなに良いもんなじゃないからね」って最初に脅しておいていただくのも良いと思います。そうすれば、実際に子育てがはじまったときに「本に描いてあるほど大変じゃないよ。楽しいこともあるよ」ってなると思うので。

───あまり言いすぎると、はじまる前にやりたくなくなっちゃうので注意が必要ですね。

ただ、育児がはじまって「こんなはずじゃなかった」と思わないよう、良い感じに覚悟させておくっていうのは大事だと思います。

───もし、タイムマシーンがあったら、最初の子が生まれる前のヨシタケさん自身に渡したいと思いますか?

そうですね。「最初の2、3年は大変だよ。でも、そこを超えると結構楽しいよ」ということを、教えてあげたいですね。

───楽しくなるのは、赤ちゃんと意思疎通が取れるようになってからなんですよね。

まあ、その最初の2、3年が永遠に続くように感じるんですけどね、子育てって(笑)。それがやっぱり育児しているときの、一番のリアルなんですよ。だから、この本を読んだ、育児真っ最中の人も、すでに育児が終わっている人が、これから育児がスタートする人も、みんな、結果的に「アハハハ」って、笑ってもらえればそれで充分ですし、そのために描いた本でもありますね。

───ありがとうございました。


お子さんの絵をバックに記念撮影。

文・編集/木村春子
写真/所靖子

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ヨシタケシンスケ

  • 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)、『りゆうがあります』(PHP研究所)などがある。2児の父。

作品紹介

ヨチヨチ父 とまどう日々
ヨチヨチ父 とまどう日々の試し読みができます!
作:ヨシタケシンスケ
出版社:赤ちゃんとママ社
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