●「いちにち」シリーズは、企画の持ち込みから生まれました!
───2009年に『いちにちおもちゃ』が出版されてから、年1回のペースで新刊が出版されている「いちにち」シリーズ。このシリーズはどのようなきっかけでスタートしたのですか?
おおの:最初はクライアントさんへの持ち込みでした。ぼくらが勤めている広告会社の企画で、絵本を作るという話があったんです。その企画自体は日の目を見なかったのですが、絵本の内容はできていたので、何とか形にしたいと、出版社とつながりのある同僚に相談して、PHP研究所さんを紹介してもらいました。そのときに持って行った企画のひとつが『いちにちおもちゃ』でした。
───自分がおもちゃになってしまう『いちにちおもちゃ』はすごく人気があります。絵本ナビでもたくさんのレビューが寄せられている作品です。
おおの:かわしまさんの軽やかなタッチの絵が、作品の世界観とピッタリだったんだと思います。
───主人公の男の子が、「いちにちおもちゃ」と書いてあるタスキをかけて立っている姿が、とても目を引きます。この男の子はモデルがいるのでしょうか?
かわしま:この子はさくらももこと、藤子・F・不二雄と、手塚治虫へのリスペクトが詰まっているんです。顔はさくらももこのタッチ、服は藤子・F・不二雄のキャラクター、そして足は「鉄腕アトム」の足をモデルにしています。
───そうなんですね。ちょっと内股ぎみなのが特徴だなと思っていました。「鉄腕アトム」の足がモデルだったんですね。翌年には2作目となる、『いちにちぶんぼうぐ』が出版されたのですね。
ふくべ:ぼくらは、当初企画していた1冊を出版できればと思っていたのですが、続編を作る話が来たときは驚きましたね。
構図などの提案をする、おおのこうへいさん。
───先程、テーマは皆さんで持ち寄って決めると教えていただきましたが、『いちにちぶんぼうぐ』のテーマは早い段階で決まったのでしょうか?
ふくべ:そうですね。今までの企画は編集者さんも交えて、ぼくらの中でやりたいと思った企画をどんどん絵本にしている感じです。
おおの:4冊目の『いちにちおばけ』は、「おもちゃ」「ぶんぼうぐ」「のりもの」とパターンが決まってきて、読者の方にも飽きられてきてしまうのではと思ったので、少しリズムを変えました。
ふくべ:今までは変身したものの大変さを伝えていたのですが、おばけは、「おばけになったら 意外と楽しい」という内容に変えたんです。そうしたら、より子どもたちに受け入れられるようになりました。ぼくたちの中にも、「こういう展開でも面白がってもらえるんだ」という発見もあり、次の『いちにちどうぶつ』や『いちにちむかしばなし』など、ちょっと変わった展開へも冒険できるようになりましたね。
───たしかに『いちにちおばけ』は表紙も暗い色で、ぐっと目を引きますね。
ふくべ:『いちにちおばけ』は帯にもしかけがあって、帯を巻いている状態では、足があるのですが、帯を取るとおばけになる。こういうしかけがすごく好きで、実現したときは嬉しかったですね。
帯をめくると……。
───「いちにち」シリーズの中で特にお気に入りの1冊を教えてもらえますか?
かわしま:私は『いちにちのりもの』ですね。
おおの、ふくべ:え?!
かわしま:何ですか?
おおの:だって、かわしまさん、機械を描くのがすごく苦手で、『いちにちのりもの』は、ぼくが何度パースを描いたか分からないくらいなんです。だから、一番大変だった作品なんじゃないかと思って……。
かわしま:たしかに個人的に一番気持ちが乗って描けたのは『いちにちむかしばなし』なんですが、『いちにちのりもの』は乗り物のフォルムを崩さずに、うまく擬人化していると思うんです。
───なるほど。
かわしま:あと、『いちにちぶんぼうぐ』の鉛筆削りや、『いちにちおもちゃ』のカスタネットも形の面白さ、造形の面白さをうまく表現できたと思います。
ふくべ:ぼくは、最初の『いちにちおもちゃ』と最新の『いちにちじごく』が、今の自分の中でツートップかなと思います。『いちにちじごく』は地獄という、相当チャレンジングなテーマを取り上げているので。『いちにちおもちゃ』はこのシリーズのすべてのはじまりだから、思い入れもあります。
おおの:ぼくは、『いちにちむかしばなし』ですね。かわしまさんがノリノリで描いていたのをすごく覚えています。
かわしま:でも、「かぐやひめ」の部分は、なかなか納得のいくものが描けず、何度も描き直しをしました。ピノキオはうまく描けたと思います。
───「ピノキオ」もそうですが、『いちにちおばけ』の「のっぺらぼう」や『いちにちこんちゅう』のちょうちょうなど、ときどきイケメンが出てくるのがとても気になっていました。
おおの:イケメン、出てきますね(笑)。これは、芸能人のGACKTをモデルにして描いているんだよね?
かわしま:そうです。手の角度とかすごく参考にしています。
ふくべ:8冊も続いていると、いろいろ前の作品からよかった部分を参考にしているところがありますよね。イケメンもそうですし(笑)。あと、『いちにちおばけ』のラストの窓からお化けたちが見ている場面。やっぱりあれは怖かったなと思い、『いちにちじごく』の最後にも使いました。
───地獄の鬼たちがふすまの隙間から「みてるぞ」と言っている場面。ゾッとしますね。