くいしんぼうのしろくまが、食べることが好きすぎるあまり、食べ物の中に入っていく妄想をくりひろげる絵本、『おいしそうなしろくま』(PHP研究所)。発売後、おいしいもの好きの子どもたちのハートをつかみ、たちまち人気になりました。そのしろくまが再び、おいしい食べ物の中に入っていく妄想をはじめたと聞き、早速、作者の柴田ケイコさんの元へ伺いました。今回のタイトルは『あま〜いしろくま』。「あま〜い」って、いったい何の中に入っていくのかしら? しろくまの妄想は今度はどこまで広がっていくのでしょうか? ワクワクしながら、お読みください。
- おいしそうなしろくま
- 作・絵:柴田 ケイコ
- 出版社:PHP研究所
ぼくは、おいしいものをたべるのがだ〜いすき。みんなから「くいしんぼうのしろくま」っていわれている。すききらいはもちろんないよ。 ある日、ぼくはおもったんだ。「たべものの中にはいってみたら、どんな感じかな?」そうぞうしただけで、よだれがでちゃう。 ごはんの中って、ふわふわしてあったかいだろうなぁ。みんなは、どんなごはんのおともがすき? ぼくがいちばんすきなのは、うめぼし! からだとこころをぽかぽかにしてくれるみそしる。きみのおうちでは、どんな具がはいっているかな? ぼくはなめこととうふがおきにいり。 つるつるもちもちうどんもいいなぁ。じゅわっとあじがしみこんだあげもだいすき。おおきくてふわっふわなあげを、おふとんにしてみたいなぁ。 きみはどのすしねたがすき? ぼくはやっぱりまぐろだね。しゃりはすくなめ、ねたはおおきめ。ぺろ〜んとしゃりにのってみたいな! 想像力をかきたてるユーモア絵本!
●しろくまと食べ物のイラストから、絵本が生まれました。
───『おいしそうなしろくま』は、しろくまが食べ物の中に入ってしまうという、驚きの展開がとても面白い作品。この絵本はどのような経緯で出版が決まったのですか?
私は普段、イラストレーターとして企業の広告や、出版物に絵を描く仕事をしているのですが、2015年くらいから本格的に絵本を作ってみたいと思い、何案か絵本を作っていたんです。そのうちのひとつが、この『おいしそうなしろくま』でした。作品のラフができて、どうやって作品を持ち込もうと思っているときに、偶然、デザイナーさんから「現在、温めていらっしゃる作品はありませんか?」とお話をいただいたんです。そこで、作品を見せたところ、PHP研究所の編集さんと共に大変気に入っていただき、出版することが決まりました。
───絵本を描こうと思ったときから、『おいしそうなしろくま』のアイディアがあったのですね。
しろくまがいろいろな食べ物の中に入っているアイディアは、以前、個展を開催したときに考えました。個展では、しろくまがいろいろな食べ物の中に入っている絵をたくさん描いて展示したんですよ。
───まさに、『おいしそうなしろくま』の原案ですね! でも、なぜしろくまと食べ物を合わせようと思ったのですか?
しろくまのポーズって、人間ぽいものが多いんですよ。それが描きやすくて好きなんです。それと、私が食べることがとても好きなので、この2つを組み合わせてみたらどんな世界が出来上がるだろうとワクワクしたんです。合わせてみたら、想像以上にしっくりときて、自分でもびっくりしました。
───大きいプリンの中に入ってみたいというのは、誰もが一度は思い描く妄想なんじゃないかと思います。
そうですね。私もプリンの中に入れたら、冷たくて気持ちいいと思います。
───絵本を描くときに、どんな食べ物を登場させるか、どういう順番で登場させるか、悩んだりしましたか?
せっかくなら、しろくまが入った姿が面白くて、「気持ちよさそう」と思える食べ物を描きたいと思いました。あと、子どもたちに身近で、好きなメニューを選びました。それと、自分が食べたい食べ物ですね(笑)。
───食べたいものを描きたい! 真理をついていますね(笑)。制作中に、変更になった食べ物はありましたか?
『おいしそうなしろくま』のスパゲッティは最初入っていなかったのですが、子どもが好きな食べ物ということで、追加しました。あと、この制作中に「もし、2作目が出ることになったら、次はおやつでやりたいですね」と、まだ1冊目も出ていないのに編集者さんと妄想していまして(笑)。甘い食べ物はあえて外していました。
───そのときから、続編のことを考えていたのですね。いろいろな食べ物にしろくまが入っていくのですが、途中で家族が出てきて、よりにぎやかになりましたね。
そうなんです。家族も最初は出てくる予定はなかったのですが、「おでん」を描いたとき、「やっぱり、おでんは家族みんなで囲むのがおいしいですよね」というやり取りがあり、家族を登場させることにしました。
───なるほど……。ポップコーンもみんなではじけていて、見ているだけでワクワクします。
ここも、最初は「そうめん」だったんです。でも、そうめんだと季節が限定されそうなのと、もう少し元気でかわいい絵があった方が良いと思って、ポップコーンに変更しました。
───『おいしそうなしろくま』の中で、柴田さんがしろくまの代わりに入ってみたい食べ物はなんですか?
パンですね。パンのふわふわした中に入ったら、すごく気持ちいいと思うんです。
───たしかに。ちなみに、どのパンに入ってみたいですか?
チョココロネかな?
───しろくまくんと一緒なんですね(笑)。チョココロネの食べ方が、とても独特だと思ったのですが、これは柴田さんの食べ方なんですか?
そうです。周りの人から「えーーー!」と言われるんですよ(笑)。
───でも、チョココロネは、チョコがたっぷり詰まっているところから食べたり、細いところから食べたり、いろいろな食べ方がありそうです。どの食べ物もすごくおいしそうなんですが、画材は何を使っているんですか?
オイルパステルを使って描いています。細かいところは、絵の具で塗っている部分もあります。オイルパステルと絵の具は、イラストの仕事をするときも多用する画材ですね。
───絵を描くときに、特に大変だった食べ物はありますか?
私もしろくまと同じで、食べることが大好きなので、どの食べ物も楽しく描けました。意外なことがあったといえば、「おでん」ですね。私の地元、高知県ではおでんのちくわは、全体が茶色く焼いてあるんです。それを編集者さんに指摘されて、一般的なちくわの色に変更しました。
───地域性が出る食べ物もあるんですね。いろいろな食べ物の中に入る妄想を繰り広げていたしろくまですが、最後は、とても納得のいく食べ物が出てきて、終わりますよね。このラストを考えるのは大変でしたか?
結構早い段階から、このラストは考えていたんです。実際にご家庭でもお子さんと一緒に作ってみることができるのも良いかなと思いました。