1992年にフランスに渡り、2002年からフランスで絵本作家として活躍を続けているフィリケえつこさん。フィリケさんの作品は、日本へも逆輸入され、多くの子どもたちを虜にしています。そんなフィリケさんが、はじめて描いた日本発のストーリー絵本『スコットくんとポワロくん』(あすなろ書房)のお話を伺いました。渡仏したきっかけや、フランスでの作家活動、日本とフランスとの違いなど、たくさん聞いてみました!
親友ポワロくんの誕生パーティーに呼ばれたガイコツのスコットくん。ポワロくんに頼まれた3つのものを探しに町へ出かけます。探しものは見つかるかな?フランスで活躍する日本人イラストレーター・フィリケえつこ、はじめての日本発ストーリー絵本!
●骨は私にとって、とても身近なものでした。
───以前、絵本ナビで『スコットくんとポワロくん』のレビューコンテストをさせていただきましたが、絵本ナビユーザーの多くが「外国のようなオシャレな雰囲気のある絵本」と感想を寄せていました。
私は、1992年にフランスに渡りまして、それから16年間フランスで暮らしていたので、それを絵本から感じ取ってくださっているのかもしれませんね。
───『スコットくんとポワロくん』は、フィリケさんが初めて日本の出版社さんとともに作ったストーリー絵本として注目を集めています。どのような経緯で、絵本の出版が決まったのでしょうか?
今でもフランスの出版社さんとの仕事が多いのですが、日本でもオリジナル絵本を出版したいなと思ってたところ、書店であすなろ書房さんの絵本を見ました。それがとても素敵で、この出版社さんで絵本を出したいと思ったので、直接、持ち込みをさせていただいたんです。
───フィリケさんから直接、連絡をして出版がつながったんですね。まず、主人公の「スコットくん」がとてもユニークなキャラクターですよね。
骸骨ですからね。
───しかも、「しゅみは、ぎゅうにゅうぶろに はいること」というのも、すごく個性的! スコットくんのキャラクターは何かモデルがいるのでしょうか?
多分、小さいときに兄が持っていた骸骨のキーホルダーですね。頭から足まで、全部のパーツがつながっていて、動かすとゆらゆら動く。その動きがすごく面白くて、いいなーって思っていたんです。それが、きっかけのひとつ。あと、私の周りに骨好きな人が多く、人間の骨の模型や動物の骨が家にあったんです。だから、骨って特別なものではなく、私にはとても身近なものでした。
───なるほど。
そういう環境にいたからか、私にとって骸骨は、怖いというものではなく、生き物の中に必ず1つあるもの。それがなければ、人間もタコみたいになっちゃう、不思議だけど大切なものという思いがあったのだと思います。それを絵本のキャラクターにするのなら、親しみやすいものにしたいと思っていました。骸骨だから、ジメジメしているよりもむしろ、カラッとしている明るいキャラクターだろうと。
───骸骨がジメジメしていたら、カビが生えてきちゃいそう。
骸骨でキャラクターを作れないかと、いろいろ考えていたときに、以前描いていたスケッチの中に、牛乳風呂に入っている骸骨の絵があったんです。それをみて、「これだ! やりたかったのは!」とハッとし、物語をスタートさせました。
───このページで、「この絵本、変だけど面白そう」と引き込まれるお子さんも多いと思いました。ポワロくんから、招待状をもらったスコットくん。ポワロくんに喜んでほしいと、町へ行きます。このページ、道が迷路になっているのが楽しいですよね。
迷路は、絵本を作る中でよく入れてしまうんですよね。今回、今までの作品よりもモノトーンの色合いを多く使って制作をしています。それは、モノトーンとカラーのページが切り替わったり、色が制限されることで、読者の想像力がより広がると思ったからです。
───この黒も、グッと中に引き込まれそうな、普通の黒よりも暗い印象があります。
そうなんです。きれいな深い黒を出したかったので、インクの「K(墨版)」に印刷で使われる残りの3色(マゼンタ、シアン、イエロー)を多めに重ねていただきました。こうしてリッチな黒ができました。印刷所ではインキが乾くのに時間がかかったみたいですね(笑)。
───だから、白い背景の上に描かれている建物も、浮き上がっているように見えるんですね。
作風として立体的にするのも好きなんですが、『スコットくんとポワロくん』はグラフィック的な感じにしました。骸骨のスコットくんが持つ、骨の白さ、新鮮さを表現したかったからなんです。