伝統的な博物画の手法を用いて描かれた、精巧ながらもエレガントなイラストによる「観察が楽しくなる美しいイラスト自然図鑑」シリーズ（創元社）が出版されました。気鋭のフランス人イラストレーター、エマニュエル・チュクリエルさんによるイラストは、どこか懐かしいレトロな雰囲気と、いつまでも眺めていたくなる魅力に包まれています。大切な人へのプレゼントに、特別な日の自分へのご褒美に、手元に置いておきたくなるシリーズです。今回、このシリーズの編集を担当した、創元社の小野紗也香さんにお話しを伺いました。
●みずみずしいイラストに魅せられる「美しいイラスト自然図鑑」シリーズ
精緻かつみずみずしいイラストとともにおくる自然図鑑シリーズ。気鋭のフランス人イラストレーターが、世界の動植物をするどい観察眼でとらえ、精確なスケッチ画に描き出し、透明感あふれる鮮やかな水彩をほどこしました。これまでにないビジュアル自然図鑑です。
シリーズは「樹木編」「野菜と果実編」「昆虫編」「動物編」の4冊。一気に揃えるのも良いですし、気になる巻から1冊ずつ大事に揃えるなど、楽しみ方もいろいろ。
各巻のポイントを見ていきましょう。
●樹木編
【ポイント】
・イチョウやイチジクなどの身近な種から、オンブやバオバブ、タビビトノキなどの珍しい種まで、葉の形の特徴ごとに分類した計５７種の樹木が紹介されています。
・かつての博物画の描画法を用いた精確なスケッチで、写真よりも幹や葉の特徴がはっきりわかり、細部までじっくり観察することができます。
・それぞれの樹木の周辺にいる他の生き物なども描きこまれ、その樹木が育つ環境を具体的に学べます。
・全種について、学名と到達しうる最大の樹高と樹齢のデータが記載されています（一部例外あり）。
・巻頭では、樹木の構造や葉の特徴に加え、地球上の森林をめぐる状況などを、要点をおさえて解説しています。
●野菜と果実
【ポイント】
・トマトやピーマン、リンゴやサクランボといった身近な種類から、アーティチョークやデーツなど、ちょっと珍しい種類まで、100種類以上の野菜と果実を、カラフルな色合いごとに分けて紹介しています。
・学名と可食部分の植物学的な部位のデータに加え、食べ方などの雑学知識も豊富に盛りこまれていて、子どもたちの学習や大人のちょっとした読みものに最適です。
●昆虫編
【ポイント】
・テントウムシ、キアゲハなどの身近な種から、日本では見られない珍しい外国種まで、学術分類別に15系統65種の昆虫を掲載。
・学名や体長のデータに加え、雑学知識も豊富に盛りこまれていて、子どもたちの学習や大人のちょっとした読みものに最適です。
・かつての博物画の描画法を用いた精確なスケッチで、リアルな昆虫写真が苦手な人も、細部までじっくり観察することができます。
・それぞれの昆虫がとまる植物やエサ、周辺にいる他の生き物なども描きこまれ、昆虫のくらしを具体的に学べます。
・全種について、学名と大きさのデータを記載。イラストはほぼ実物大で描かれていますが、大きいものや極端に小さい種類に関しては、実寸を示すシルエット（影絵）を併載。それぞれの昆虫の大きさがひと目でわかります。
●動物編
【ポイント】
・哺乳綱（ほにゅうこう）を中心に、爬虫（はちゅう）綱・両生綱・鳥綱などの脊椎（せきつい）動物から、腹足綱・昆虫綱などの無脊椎動物まで、さまざまな分類の動物を、それらが生息している地域ごとに計95種掲載。
・学術的な分類ではなく、生息地域ごとにまとめられているので、それらの動物がくらす環境をより具体的に想定できます。
・全種について、学名と分類学上の階級（綱）のデータを記載。
●繊細なタッチのイラストはどのように描かれたのか……。
イラストを担当したエマニュエル・チュクリエルは、写真機が発明されるより以前の、伝統的な博物画の手法を用いてイラストを描きました。その手法は、製図用のペンで黒い墨を用いて線画を描き、そこにニュアンスに富んだ色調で、透き通った美しい水彩を施すというもの。どのイラストも多色刷りの銅版画を思わせる精巧さと、どこか懐かしいレトロな趣きを兼ね備えています。
それでは、次のページから編集者の小野紗也香さんのインタビュー、スタートです。
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