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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2013.01.17

『新世界へ』あべ弘士さんインタビュー

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「ガン達の約束の地は、地球上で一番行きたい場所なんだ」

───『新世界へ』はカオジロガンの親子が、故郷である場所へ向かう。ただ空を飛んでいる場面が続くのに、ひとつとして同じ構図がないことにとても驚きました。
例えば、この俯瞰から描かれた氷山の構図。あべさんは実際には海の上から見ていたんですよね。それなのに、どうしてこのようなアングルが描けるのか、すごく不思議でした。

この場面は、『こんちき号北極探検記』にスケッチも載せているけど、世界一の氷河といわれているモナコ大氷河の景色。巨大な氷河が4つ固まっていて、その1つだけでも東京ドームの1000倍くらいある氷山なんだ。その中をこんちき号が進んで行ったら、目の前の氷河から体中をさすような冷凍風がグワーーーと襲ってきて…。すごく印象に残っているね。

───絵本から、ものすごい冷気を確かに感じました。

構図に関して、今回ちょっと新鮮だったのが、画面の奥からこちら側にガン達が飛んでいるように見える構図にしたことかな。元々ここはガンが横一列で飛んでいる絵を2見開きに渡って描いていたんだけど、ちょっと単調になるから1見開きにしてほしいと編集さんに言われたんだよ。「はて、どうしたものか…」と思っているときに、たまたま丹波篠山の兵庫陶芸美術館に行く機会があって、そこでお祭行列の描かれた青磁の壷を見たのね。それを見たとき、「あ、これだ!」って思ったの。壷は円筒に絵を描くから、遠近感が生まれる。絵もそういう風に描けば良いんだと思って、実際に絵を描くときも紙を筒状にして描きました。

───そういった試行錯誤を重ねながら、ガンがこちら側に来る、非常に立体的で面白い動きが出来上がったんですね。

そうだね。この雪渓が生き物の形に見えるところなんか、完全に幻覚症状だよね(笑)。フィヨルドは基本的に波がないから、油を流したみたいにベターっとしている。だから山々が全部逆さ富士のようにきれいに海面に写るんだ。この場面に出てくる山々を見たとき、一目で「あぁ、ムーミンの世界だ」って思った。トーベ・ヤンソンさんはフィンランドの人だから、きっとこの風景を見てムーミン谷の山々を描いたんじゃないか…って。

───確かに、尖った山並みはムーミンの挿絵の山々と似ていますね。あべさんの絵を見ていると、ガン達が飛んでいる場面が、今の出来事というだけでなく、はるか太古から脈々と続いている鳥の渡りという感じがして…。そんな風に先祖からずっと約束の地を目指し続けている渡り鳥ってすごいなと感動しました。

彼らは人類が生まれるずっとずっと前から地球上に住んでいて、そのときからずっと同じところに渡っている。この絵本は誕生から現在、そして未来へ続く膨大な時間の話でもあるんです。最後のページにも描いたけれど、ガンたちは6月頭くらいに抱卵と育児のためスヴァールバル諸島にやってきて、約2ヵ月半後の9月初旬には越冬地である“約束の地”に向けて飛び立たなければならない。だから生まれたばかりの雛たちの成長は早く、そして長距離を飛べるようにならなければいけない。約3000kmの距離を1ヵ月以上も飛び続けるんだ。

───数字にすると、とても過酷な、そして気の遠くなるような距離を進んでいるんですね…。その長い時間が『新世界へ』というシンプルでありながらインパクトのあるタイトルにつながっているんですね。

タイトルは「新しい世界」ということをしっかりと伝えたいと思ってあえてシンプルにしたんだよ。ドヴォルザークの「新世界より」は“from”だけど、私は“to”(笑)。実は絵を描く前にタイトルを『新世界へ』にしようと決めていて、折角だから作業をするときのBGMに「新世界より」を聴こうと思っていた。でも、実際に描き始めてみると、イメージに合わなくて…(笑)。結局、ドヴォルザークではなく、エンヤの曲を流しました。これがまたぴったりで…。

───とても象徴的でいろんな意味を持つタイトルだと感じましたが…。

そうだね。私はガンに託したストーリーにしたけれど、「新しい世界に行く」ということは、今の日本の現状や、子ども達にも繋がると思っているんです。震災以降、どこに行っていいかわからない。子ども達は将来に対して見えない不安を感じている。そんな現状に新しい世界が見えてくれば良い…そんな思いも込めました。絵本を読んでくれた子ども達が、「あ、鳥だってこんなに大変なんだ。でも、希望を捨てちゃいけないんだ」と思ってくれれば…というのは…直接は言わないけれど、感じてもらえたら嬉しいね。

───最後にガン達が降り立つ「約束の地」は実際に存在する場所なんですか?

それが…あるんだよね(笑)。この島は私が今、地球上で一番行きたい場所なんだ。千島列島のいちばん北の方の小島でね。1年中、霧におおわれているらしい。実際のカオジロガンの越冬地は、イギリスや北海沿岸なんだけどね。でも、15場面、ずっとガンたちが目指している場所をどう描こうか考えていたんだけど、結局、私の夢の島にしたんだ。

───ではもし、この島に行くことができたら、また新しい絵本が生まれるかもしれないんですね。

…でも、ここに行くための働きかけを、自分では一切しないつもりなんだよね。
まあ、いつか行けるだろうし、行けなくても良い。行くんなら日本の温泉の方が気持ちいいから、まあ、いいんだよ、行かなくて…って感じなんだよね(笑)。

───(笑)。そうなんですね。ファンとしてはあべさんに早く行ってもらいたいような、まだまだずっと先の事であって欲しいような…。今日はありがとうございました!北極や動物、特にガンについて俄然興味が湧いてきてしまいました。息子と一緒に色々調べてみたいと思います。







<編集後記>

東京に滞在されている僅かな時間の合間をぬって、貴重な取材の場を作ってくださったあべさん。北極での体験や私たちの知らない動物の話を、端的に、でもとっても濃密な内容で話してくださるので取材中はずっと身を乗り出しっぱなしでした。あと2時間位聞いていたいー!というのは贅沢な要望でしょうが、あべさんをお見送りした後のスタッフ一同の本音です(笑)。

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<お知らせ>

◆あべ弘士さん『新世界へ』(偕成社)刊行記念 トークイベント
「北極の空、鉤となり竿となり雁はゆく」


2011年に、念願の北極旅行を実現させたあべ弘士さん。帆船による約一ヶ月の旅のなかでみたもの、感じたものがつまった新刊絵本『新世界へ』の刊行を記念して、絵本や北極旅行についてお話しされます。ぜひ足をお運びください。

◎会場:ジュンク堂書店池袋本店 4Fカフェ
◎住所:東京都豊島区南池袋2-15-5
◎日時:2013年2月5日(火) 19時30分〜 
◎お申し込み:お電話または、池袋本店1Fサービスカウンターにて先着順に受付
◎入場料:1000円(ドリンク付)

*お問い合わせ・ご予約・ご予約キャンセル
ジュンク堂書店池袋本店 TEL 03-5956-6111

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(編集協力:木村 春子)

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あべ弘士(あべひろし)

  • 1948年北海道に生まれる。1972年から25年間、旭川市の旭山動物園に勤務。自然に対する知識と愛情に裏打ちされた作品は、自由闊達な線と色の魅力、大らかなユーモアによって多くの読者に愛されている。『あらしのよるに』で講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞JR賞、『ゴリラにっき』で小学館児童出版文化賞、「ハリネズミのプルプル」シリーズで、赤い鳥さし絵賞、『どうぶつゆうびん』で産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞。そのほかの作品に『ライオンのながいいちにち』『どうぶつさいばん ライオンのしごと』『なめとこ山の熊』『エゾオオカミ物語』『こんちき号北極探検記』などがある。
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