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文・絵: ふくだ じゅんこ  出版社: 大日本図書 大日本図書の特集ページがあります!
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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  やわらかいってきもちいいよね? 親子でたのしむスキンシップ絵本『こねて のばして』ヨシタケシンスケさんインタビュー

ヨシタケシンスケ作品に漂うおかしさとやさしさ

───初めての絵本『りんごかもしれない』を作った頃のお話をもう少し聞かせてください。『こねて のばして』の編集者の沖本さんは、デビュー作からブロンズ新社でヨシタケシンスケさんの本を担当されているそうですが…。

はい。彼女は大学時代からぼくのイラスト集を読んでくれていたそうです。出版社に勤めてからも、足かけ8年間くらい、ぼくの絵本の企画を考えてくださっていたらしくて…。

───えっ!? それはすごいですね!

沖本(編集者)大学時代に友人からすすめられて、ヨシタケさんのイラスト作品集『しかもフタがない』(パルコ出版、2003年刊行)を読みました。本当に面白くて、ずっとヨシタケさんと本を作れたらいいなと思っていましたが、なかなかいい企画が出せず、社内で企画が通らなかったんです。
そうこうするうちに『そのうちプラン』(遊タイム出版、2011年刊行)の中にあかちゃんのスケッチがあるのを拝見して「ああ、お父さんになられたんだな」「今なら絵本が作れるんじゃないか」と思って、あらためて作り直した企画でご連絡することができました。

───それが2013年の『りんごかもしれない』刊行につながるんですね。

その前に一度、他の出版社さんから「絵本を描きませんか」とお話をいただいていたのですが、ぼくも絵本に思い入れがある分、絵本とは何かを難しく考えすぎてうまくいかなかったんですよ。その経緯があったので、ご連絡をいただいたとき、今回も難しいかなとは思いました。でも沖本さんの名前を伺って、「あ、『しごとば』を作った編集者の方だ!」とわかって、ぜひ会いたいと思いました。

───沖本さんが編集した「しごとば」シリーズを知っていたのですね。

本屋で見かけて知っていました。本屋ではロングセラーはもちろん新しい絵本もよく見ていました。「しごとば」シリーズを見たとき「すごい!」と思ってびっくりしたんですよ。これは、子どもが大人になることに希望をもてる本だな、ぼくも小さい頃にこの本があったら助かっただろうなと思いました。

連絡をいただいて会いにいったら、すでに企画を3つくらい用意してくださっていて。その中の「りんごをいろんな目線で見てみる本」が面白そうなのでやらせてください、と言いました。そのとき8年間も企画を出してくださっていたと知って、ありがとうございますという気持ちでした。でも今思うのは、8年前に連絡もらっていたとしても、ちゃんとしたものは作れていなかっただろうなと。やっぱり子どもができてから色々思うこともあったので、『りんごかもしれない』はあのときでないとできなかった絵本だし、ちょうどいいタイミングがあったんだなあと今になってはすごく思います。

編集者としての沖本さんには、絵本って、思っているよりも狭いものじゃないですよと教えてもらった気がします。絵本には落とし込めないんじゃないかと思っているものを、「いや、いけますよ」と言ってくださることに、すごく安心感があります。

沖本(編集者)イラスト作品集を出版されたときから、ヨシタケシンスケさんの個性やエッセンスは変わってないと思います。ただ、お父さんになられたり、さらに人生経験を重ねられたことで、物事に向きあうときのヨシタケさんなりの“解決方法”みたいなものが、絵本に落とし込まれているから、その味わいに魅力があって、多くの方に人気があるんじゃないかなと思います。

───ボローニャ・ラガッツィ賞を受賞した『もうぬげない』をはじめ、ヨシタケシンスケさんの絵本は海外でもどんどん翻訳されているそうですね。

イタリアのボローニャで会ったある国の編集者が、『もうぬげない』をすごく気に入って、「この本はすごい。世界中で昔から子どもは服がひっかかっている。でもそれを絵本にしようとしたのはこの本がはじめてだ」と言ってくださったそうです。それを聞いたときは「だろお?」って、すごく嬉しかったですね。
世界中、人種を問わず、子どもは頭が大きいものなので、服をかぶるときに頭がひっかかるはずなんです。

───たしかに(笑)。

当たり前すぎて誰も気づかなかったけど、こうして絵本にすると世界中で共感を得られる…(笑)。
いろんな国で翻訳が決まるたびに、そうか、スウェーデンでもスペインでも、やっぱり子どもは服がひっかかっているのかと(笑)。

人間は、胴体の上に頭が1つだけのっかっていて、手が2本、足が2本あってという形で生きている生き物だから、何かしらの条件が重なったときにやることや考えることって、そんなにバリエーションはないはずなんですね。原始時代も100年前も、スネをぶつけたら痛いだろうし、お腹がすけばしょんぼりするし、お母さんが死ねばやっぱり悲しいわけです。

ぼくの考えの軸には、「人はなぜ、これを“こういうもの”だと認知するのか」「どんな条件が重なったときに、人はそれを“そういうもの”だと判断するのか」という認知学みたいな考え方が常にあります。
目の前で起きている現象を“何かのもの”として受け止めたときに、それが悲劇になったり喜劇になったりする。
ぼくは物事を人一倍ネガティブなものにとらえてしまいがちなので、こう考えると許せたりあきらめたりできるんじゃないか、逆に笑えちゃったりするんじゃないか、と一所懸命考えざるを得ないんです。それがすべてのネタ元になっています。

絵本作るとき考えるのは、昔から疑り深かったぼくみたいな子どもが、この本を読んで信用してくれるだろうか。ちゃんと最後まで読んでくれるだろうか、ということです。あとどの絵本も「人ってわかりあえないよね」がテーマなんですね、どうやら。
ぼくが大きなメッセージとして言えるのは「人のことってよくわかんないよねえ」と「人って弱いよなあ」と。自分が弱いからよくわかるんです。「強くなれって言われても、なれやしないよなあ」と。正しい理屈がわかっても、できないことを何よりぼくが実感している。だから作家としてぼくなりに「できゃしないよねえ」ということは描ける。
案外そのことに「そうだよねえ」って言ってくれる人が多かったんだなと。

───なるほど、そうだったのですね…。

いつも考えているのは、いかに身も蓋もないようなことを、おもしろおかしくちゃんと言うかです。リアルなつらい部分をどう受け止めれば、この世界を、明日も生きていくに値する世界だと考えられるのか。そこでささやかな答えをひねり出せれば、つらいことが1こか2こは消えるはずなんですね。
どうしたら幸せになれるの? そもそも幸せってなんなの? そういう疑問への答えは、ぼく自身が切実に必要としているからこそ、ひねり出さざるを得ないんでしょうね。

───ヨシタケシンスケさんの作品に漂う、おかしさややさしさの意味が少しだけわかった気がします。
最後にメッセージをお願いします。『こねて のばして』をどんな風に楽しんでほしいですか?

本にできることはたいしたことないけれど、『こねて のばして』が「そういえば最近さわってないなあ」と思い出すきっかけになってくれたらいいですよね。「やわらかいものって気持ちいいよなあ」と思い出して、さわりたくなって悶々としてほしいです(笑)。近くにお子さんがいれば、思うさま、もんでほしいし、子どももお父さんやお母さんをむにゅむにゅしてほしい。親密な欲情のきっかけになって、一緒に読んだ大人が、勝手に深読みして照れてくれたらさらに理想的です(笑)。

子どもにとって、お母さんのやわらかさは何よりも求めるものです。子どもの「さわりたい」「さわられたい」という気持ちを『こねて のばして』で肯定できたらいいなあと思います。
それに、小さな子どものほっぺや体のやわらかさって、子育て中の親にとっては親冥利に尽きるというか、日々の何よりも救いになるものですから。この本を読むときはお互いにさわっていい!もんでこねていい!という暗黙の変なルールができたら嬉しいなと思っています。

───ありがとうございました!

おまけ


リビングに飾られたなが〜い角の動物は、ヨシタケさんの作品。タイトルは「強いんだか弱いんだか」。

ちょっと横から見るとこんな感じ。


玄関には、極限まで「なで肩」なハンガー。
こちらもヨシタケさんの作品です。

扉には、お子さんたちの絵がますますいっぱい貼られていました!


サインを書いてくださいました!

かわいい…。

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ヨシタケさんにもうちょっとだけ質問!

Q. お子さんとのスキンシップはどんな風にとっていますか?

小さい頃はかつぎあげたりふりまわしたり、肩車もよくしていましたよ。今は大きくなって持ち上げるのも大変になりましたが、ダイナミックに遊ばなくても、ちょっと体をさすったりぎゅっとしたり、ささやかな場面でその心地よさは味わえるものなので、ごく自然にしています。

Q. なぜ「つめこんで かたむけて ほっといて」は、かたむけるんですか?

「どうしてかたむけるの?」と息子にも聞かれました。ぼくの答えは、「…なんでだろうねえ」(笑)。すべて親子のスキンシップに置き換えられる場面だけだと、変化が少なくなってくるので、無理な部分もちょこちょこ入ったほうが面白いかなあとは思っていました。あと、絵本の中にちょっぴり謎が入っていたほうがいいなと。
子どもの頃、佐々木マキさんの『やっぱりおおかみ』(福音館書店)が好きでよく読んでいましたが、「これ、よくわかんない話だなあ」と思っていました。でも大学生になって読んだときわかったんですよ。「こういう話だったんだ!」とびっくりして。「すごい! こりゃ、子どもにはわかんないよ」と思ったし、「わからないながらに何度も読んでいたおれ、すごいな」と思いました。
子どもって「わかんないけど面白い」という場所をもっているように思います。それって、たぶん、すごく幸せな場所なんですね。いい感じに謎が残り、記憶に残る絵本は、いい絵本じゃないかなとぼくは思っています。まあ、大人になっても、かたむける意味なんてわからないと思いますけどね(笑)。

Q. 今回も、原画から拡大しているのですか?

『もうぬげない』と同じ、2倍拡大です。A4の紙一枚に見開き4つ分を割り付けて、0.3ミリの細いペンで原画を描いています。今回は絵本でははじめて、影の部分を別版で描きました。トレーシングペーパーを重ねた上から鉛筆で描いたのですが、慣れないことなのでけっこう大変でした。

Q. 色付けが苦手だとおっしゃっていましたが、今回の色付けは…?

アートディレクターの寄藤文平さんと文平銀座のみなさんが、彩色とデザインをしてくださいました。
寄藤文平さんは同世代ですが、ぼくが大学生の頃から活躍されていて、ぼくにとってはヒーローのような方です。今回お仕事をお願いすることができて、色付けされたページがあがってきたときはすごく嬉しかったです。一目見て「うわあ」「きゃー!」という感じで感激でした。細かいところまで考え抜いて仕上げてくださり、おかげでとっても自然にさらっと読めるきれいな絵本になったと思います。

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インタビュー・文: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所靖子



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ヨシタケ シンスケ(よしたけ しんすけ)

  • 1973年、神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞などを受賞。著書に、『しかもフタが無い』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(以上、講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)、『ぼくのニセモノをつくるには』(ブロンズ新社)、『りゆうがあります』(PHP研究所)などがある。2児の父。

作品紹介

こねて のばして
作:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
りんごかもしれない
作:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
ぼくのニセモノをつくるには
作:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
このあと どうしちゃおう
作:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
もう ぬげない
作:ヨシタケシンスケ
出版社:ブロンズ新社
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