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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  『ゆうびんです!』出版記念! 宮崎順一郎さん(日本郵便オフィスサポート副社長)中野シロウさん(Play set products)インタビュー

メールやSNSなどが発達し、手紙を出す機会が減ってきている昨今。子どもたちに手紙を出すことの楽しさと、郵便局の仕事の大切さを伝える絵本『ゆうびんです!』(フレーベル館)が出版されました。
物語を考案したのは、日本郵便オフィスサポート。日清チキンラーメンのキャラクター「ひよこちゃん」など、人気キャラクターを手掛けるPlay set products(以下「プレイセットプロダクツ」)の中野シロウさんがイラストを描いています。
この度、発売を記念して、日本郵便オフィスサポートの副社長・宮崎順一郎さんと中野シロウさんに、絵本制作への想いを伺いました。

「郵便局の仕事を知ってほしい」その思いから、絵本作りがスタート

───『ゆうびんです!』は、主人公の男の子が、おばあちゃんへ手紙を出すことをきっかけに、郵便局の仕事や手紙が相手に届くまでのプロセスを詳しく知ることのできるストーリー。このおはなしはどのような経緯で絵本になることが決まったのでしょうか?

中野:最初に、ぼくとフレーベル館さんとの間で、絵本のシリーズを企画するというお話が進んでいました。ちょうどそのとき、別件で、日本郵便オフィスサポートさんから、オリジナルキャラクターの制作のお仕事もいただいていたんです。

───それが、今回の絵本のメインキャラクターである「ぽすワンちゃん」ですね。

中野:そうです。日本郵便オフィスサポートの宮崎さんと何度も打ち合わせをする中で、「このぽすワンちゃんのキャラクターで絵本ができる!」という思いが、ぼくの中でムクムクと湧き上がってきました。そこで、宮崎さんたちに「ぽすワンちゃんを絵本にしませんか?」と提案しました。

プレイセットプロダクツの中野シロウさん

───中野さんが、日本郵便オフィスサポートさんとフレーベル館さんをつなげる、橋渡し役になったのですね。

中野:そういうことになりますね。宮崎さんが「面白いですね!」と乗ってくださったので、フレーベル館の担当者にもお伝えして、『ゆうびんです!』の企画がスタートしました。

───宮崎さんは、中野さんから絵本の企画の話が来たとき、どう思いましたか?

宮崎:「ぽすワンちゃん」は元々、私共「日本郵便オフィスサポート」のマスコットキャラクターとして、郵便局の販促グッズなどに登場させることを目的としていました。なので、絵本にするなんて全く考えてもいなかったのですが、中野さんから提案いただいて、とても光栄なことだと思いました。

───絵本では、男の子がポストに投函した手紙を、ぽすワンちゃんが集荷し、大きな郵便局へ運んでいく様子が描かれています。でも、それから大人である私たちもなかなか知ることのできない、郵便局の仕事が描かれていますね。

宮崎:郵便物の配達や郵便局の窓口での引き受けは、お子さんも目にする機会がある仕事だと思います。でも、そこからどういう流れで、手紙が仕分けされ、相手先に届くか、知らない方も多いですよね。郵便局の仕事が少しでも伝われば良いなと思って、今回、絵本の中で詳しく紹介させていただくことにしました。小学校に通う子どもたちを対象に「将来なりたい仕事」アンケートのランキングをたまたま見かけたのですが、驚くことに「郵便局の職員」はランク外。それが、郵政に携わる人間としてとてもショックで。「ぼくたちが知らないときに、郵便局の中ではこんなすごいことが行われているんだ」とか、「こんなに素敵な人たちがたくさん働いている郵便局って良いな」と少しでも思ってもらえたらと思っています。

日本郵便オフィスサポート・宮崎順一郎さん

───おはなしの内容は、日本郵便オフィスサポートさんが考えられたのですね。

中野:そうです。ぼくは発案とイラストを担当しましたが、やはり、郵便局の仕事のことは、実際に関わっている方に担当していただくのが良いと思って。実際に出来上がった原稿を読んだとき、「郵便局って夜も寝ないで、働いているんだ!」とビックリしました。

───たしかに、近い場所であれば、投函した翌日に手紙が届くことが当たり前のように感じていましたが、そのためには、夜も作業されているんですよね。

中野:そうなんです。それと、絵本にも出てきますが、仕分けや消印を押す作業など、想像以上に人の手が入っているということも知らない事でした。

郵便局では、たくさんのぽすワンちゃんが、仕事をしています

宮崎:はがきや封書は機械で作業しますが、大きい郵便は人の手でも作業しますね。

中野:いったい何人ぐらいの人が、郵便局で働いているのか、宮崎さんに聞いたんです。そうしたら40万人と教えていただいて。すごい数ですよね。

───郵便にそんなに人が関わっているなんて、たしかに驚きです。

中野:しかも、その中には、富士山の山頂にある「富士山頂郵便局」など、何でそんなところにあるんだと驚愕するような郵便局も多くて……。そんなところからも、切手を貼れば、どこへでも届けてくれるというのも、実はすごいことなんだと感じました。

───絵本の中でも、ぽすワンちゃんが「この きってで どこにでも おくれるのよ」と言っていますよね。

宮崎:郵便局の仕組みのひとつとして、切手を貼れば、どこへでも届けられること。そして、その切手は郵便局だけでなく、コンビニなど、身近なところで購入することができるので、手紙を出したいと思ったら、どんな場所からも出すことができる。これが、手紙の仕組みとして、とても大事なところだと思っているんです。そこで、この切手を絵本の中でも重要なアイテムとして登場させたいと思いました。

男の子は、「まほうのきって」につかまって、手紙が届くまでを見に行きます

───男の子に、郵便局の仕事を見せてくれる、「そらとぶ きって」ですね。

宮崎:はい。男の子は、「そらとぶ きって」につかまって、自分が出した手紙がどうやっておばあちゃんの元に届けられるのかを、追いかけることになります。

おばあちゃんに出した手紙は、無事届けられるのでしょうか?

───絵本には、郵便局で使われている機械がたくさん登場しますが、中野さんは実物を目にしたのですか?

中野:実物を目にすることは出来ませんでしたが、日本郵便オフィスサポートさんに現場を取材してもらい、写真や動画などの資料をたくさんいただいて、郵便局の内部の様子の参考にしました。機械の作りや働いているぽすワンちゃんたちの動きなど、何度も何度も修正をしました。

───絵を描くときに特に難しかったページはありましたか?

中野:郵便局の内部の仕事の様子や、使われている機械などを描くのは大変でしたね。普段、描く絵本は、ぼくの想像の世界なので、何でも自由に描けるのですが、今回は、「郵便局」という場所と、そこで働く人々がいますから、空想だけですませてはいけない気持ちがありました。でも、ぼく自身、知らないことを知るのはすごく楽しくて、刺激になりました。

───宮崎さんたちは、絵本の構成を考えるのは大変ではありませんでしたか?

宮崎:おはなしの核となる内容は、私たちの良く知ることだったので、特に難しいと感じなかったのですが、それを、小さいお子さんに分かるように伝えるにはどうしたらいいか……という部分でかなり試行錯誤を重ねました。
「そらとぶ きって」を登場させたのも、現実から別の世界へといく要素があった方が、子どもたちがおはなしの世界に入っていってくれるのではと思ったからです。そのあたりのファンタジーと現実との描き方は、フレーベル館さんにも相談して、アドバイスをいただきました。

全国で働く郵便局員ひとりひとりが、ぽすワンちゃん

───今回、物語を動かすキャラクターとして登場する「ぽすワンちゃん」。先ほど、お話にあったように、元は日本郵便オフィスサポートさんのメインキャラクターだったんですよね。

宮崎:そうです。ぽすワンちゃんは、郵便局で働く人々を表したキャラクターというイメージで、プレイセットプロダクツさんに依頼しました。

───犬のようなビジュアルがとてもかわいいですが、モデルはいるのでしょうか?

中野:ぼくがプレイセットプロダクツをスタートさせたのが2002年なのですが、最初に生み出したのが「モダンペット」シリーズの「ベアドッグ」という犬のキャラクター。郵便オフィスサポートさんとキャラクターの打ち合わせをする中で、ベアドッグのような犬のキャラクターで、もっと仕事に特化した、擬人化キャラを作ることが決まりました。そこで、人気の犬種「トイプードル」をベースに、2足歩行ができる「ぽすワンちゃん」が誕生しました。

「モダンペット」シリーズの「ベアドッグ」という犬のキャラクター

───ぽすワンちゃんという名前もとても印象に残りますが、名前も中野さんが考えたのですか?

中野:名前は日本郵便オフィスサポートさんの方で決めてもらいました。

宮崎:全国の郵便局の職員の方に公募をしまして、そこから選びました。「ぽすワンちゃん」の名付け親は、鹿児島県志布志市の郵便局員さんです。

───自分で考えた名前が、キャラクターの名前になるなんて、すごく嬉しいですよね。郵便局の制服姿以外にも、いろいろなコスチュームを着ていたり、ご当地の名物や名産に扮したぽすワンちゃんがいるのも、ユニークですね。

宮崎:第一弾として、制服姿のぽすワンちゃんのデザインを中野さんにお願いしました。この姿は、郵便局員を象徴してると思っています。現在、全国に約24000の郵便局があるのですが、1日に何千、何万通という郵便物を扱う大型局から、山の中にある小さな郵便局など、その形はまちまち。でも、そこに勤める郵便局員は、地域と一体となって、働いています。
ぽすワンちゃんも、この郵便局で働く人たちのように、環境に合わせて変身していくキャラクターになって、郵便局のすべての方々に、これは自分たちと同じように、地域に溶け込もうとしている、と感じてほしいと思っています。

───ぽすワンちゃんは、郵便局員の方々の地域とのかかわり方を象徴するキャラクターなんですね。

宮崎:そうです。

中野:ぼくは、今までにもいろいろなキャラクターのデザインに関わらせていただいていますが、キャラクターを作っただけでは、まだそのキャラクターが生きている感じはしないんです。でも、あるときを境に、キャラクターがすごく生き生きとしてくるというか、関わっている方の中に浸透していって、愛されていることを感じることがあります。
今回のぽすワンちゃんは、いろいろなパターンを描かせていただくことで、どんどん郵便局の中に浸透していって、そこで働く人たちに愛されていることを感じるようになりました。

───絵本に登場するぽすワンちゃんもひとりではなく、手紙を仕分けするぽすワンちゃんや、トラックで全国の郵便局に手紙を届けるぽすワンちゃんなど、たくさん登場するのがとても印象的でしたが、郵便局員すべての方の姿ということなんですね。

宮崎:そうです。すべてのぽすワンちゃんが、「手紙を届ける」ということで、つながっているということ。どのぽすワンちゃんも、自分の働いている場所で、リレーのように手紙をつないでいくんです。その繰り返しで、手紙が届くということを、絵本を読んで感じてもらえたらありがたいです。
そしていつか、絵本を手にしたお子さんが、ぽすワンちゃんのように「手紙を届ける」仕事に興味を持って、郵便局員になりたいと目指してもらえたら、すごく嬉しいですね。

───絵本がぽすワンちゃんの、ひいては郵便局の活動を身近に感じるきっかけになるなんて、素敵ですね。

中野:こういう広がりができるキャラクターは、とても珍しいと思います。ぼくがキャラクターを作るとき、まず何を主軸に置くかを決めるのですが、それは、製品だったり、オモチャだったりいろいろあります。
ぽすワンちゃんのお仕事をいただいたとき、そして、フレーベル館さんから絵本のお話をいただいたとき、直感的にこの2つはつながると思いました。絵本だから伝わる内容の深さを、ぽすワンちゃんは持っていると感じました。

絵本は映像など、いろいろな媒体に派生していく可能性があるところが魅力

───思い出深い手紙は、ずっと手元に残しておきたいと思うように、絵本もずっと大事にしたいと思いますよね。中野さんはいかがでしたか?

中野:『ゆうびんです!』では、郵便局のお仕事を中心に、ストーリーが進みますが、1冊作ってみて、まだまだ郵便局には、おはなしの種がたくさんあるように感じました。

宮崎:そうですね。郵便局で働く人、ひとりひとりにスポットを当てたおはなしもできますし、山の中や海の近くなど、環境が違う郵便局のおはなしもできる。あとは、郵便の歴史は長いですから、その長い歴史を追うようなおはなしも作れますね。

───たしかに。時間を超えるのには、また「そらとぶ きって」が活躍しそうですね。

中野:今回、最もベースとなる、手紙を配達するお仕事の部分をしっかり紹介させていただきましたから、次はほかの切り口で、郵便局の魅力をどんどん引き出していけたらと思います。

───これから、シリーズを重ねるごとに、郵便局の魅力が明らかになりそうですね。

中野:切手を貼れば、手紙は海外まで届けることができますから、日本の子と外国の子の交流も、描けるかもしれません。

宮崎:とてもたくさんの人が携わっている郵便局だからこそ、いろいろなエピソードがあります。それを取材して、実話をもとに、ぽすワンちゃんのおはなしにできたら、とても面白いシリーズになると思います。

中野:ぼくが絵本が特に面白い媒体だと感じている理由の一つに、一度出版しただけでは終わらないメディアだと実感していることがあります。ぼくは以前、『SCARECROWMAN』(ゴマブックス)と『カリーノ・コニ』(プチグラパブリッシング)という絵本を出版したことがあるのですが、どちらも、出版から数年たってアニメーションになっているんです。
それは、ぼくから何か働きかけをしたというわけではなく、絵本を見て、アニメにしたいという方が現れて、実現したものばかり。ぼくとしては、全くのイレギュラーというか、想定していなかった展開でした。そのこともあり、絵本を出版することは、ほかのメディアよりも長く誰かの印象に残り、新たな活動の広がりが得られる面白さを感じているんです。

───『ゆうびんです!』もアニメ化されるかもしれないですね。

中野:可能性はゼロではないと思います。ぽすワンちゃんはキャラクターも魅力的ですし、「仕事」がテーマなので、映像化に魅力を感じる人は多いのではないかと思っています。絵本を軸に、日本郵便オフィスサポートさんと、これからいろいろ広げていけたら面白いですよね。

宮崎:中野さんにそう言っていただけると、こちらとしてもすごく夢が広がります。『ゆうびんです!』が、一人でも多くのお子さんの手に渡って、おはなしを読んだ子が、郵便局の仕事を魅力に感じてもらえると嬉しいですね。

───本当に、ありがとうございました。

まるでおもちゃ箱みたいな、プレイセットプロダクツのアトリエ

アトリエ中にプレイセットプロダクツで生み出した作品が並んでいて、おもちゃ箱の中にいるみたいです!

取材・文/木村春子
写真/所靖子

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