- こんなことがあっタワー
- 作:丸山 誠司
- 出版社:えほんの杜
あかいタワーがあっタワー あるひ タワーがいっタワー 「ずっと いっしょで あきタワー」 それからどうなる?あかいタワー!? 「わらっタワー」「うたっタワー」「たのしかっタワー」 タワーでつながる、脱力系ナンセンス絵本。 みんな仲良しで よかっタワー
●「タワー」の絵本ができタワー
───今をときめく話題の「東京スカイツリー」ではなく、あえてこちらの赤いタワー(笑)をテーマに描かれたところに、昭和生まれのママとしては、とっても嬉しく感じました。
僕も昭和生まれですからね。やっぱりこちらのタワーの方が、思い入れが強くありましタワー(笑)。
───(笑)。でも、こういう建物をメインにした絵本の場合、タワーについての建設過程や歴史的な話がメインになることもあると思うんですが、この絵本の中身はひたすら「タワー」という言葉を使ったダジャレで…(笑)。「タワー」が語尾につく言葉がこんなにあって、しかもいい意味ですごく突拍子もないストーリーになっていて、本当に面白かったです。こういう言葉はどうやって思いつくんですか?
最初は「タワー」を語尾につけることができる言葉を書き出してみるんです。「おこっタワー」「わらっタワー」「はねタワー」とか…。そのあと、僕の場合は紙に32ページ分の展開を考えていきます。
───これ(写真)が構想を書いた紙ですね。
はい。ページの展開が決まったら、実際の大きさに近い形でラフ(下書き)を描いていくんです。編集さんにはこのあたりでお見せして、感想や出版ができるかなど打ち合わせを行います。
───『こんなことがあっタワー』は最初、縦開きじゃなかったんですね。
そうなんです。縦開きにする案は編集さんから提案されました。「縦開きにした方がタワーの高さがでます!」って。
───確かに、縦の方が、開いたときのインパクトが違いますね。でも下書きの段階から、すでにタワーが「もう ずっといっしょで あきタワー」という展開なんですね。
今回の絵本はラフから完成まで、展開に大きな変更はなかったんじゃないかと思います。一番悩んだのはラストの部分ですね。「あきタワー」で一回目の大ビックリがきているので、さらに大大ビックリにはどうしたらいいだろう…とかなり悩みました。
───ラフでは夕日に向かって歌うラストになっていますね。
そこはちょっと赤いタワーのノスタルジックで青春な場面にしたかったんです。でも、赤いタワーにノスタルジーを感じるのは我々大人なので…。より子ども達がびっくりするような展開に変えました。
───丸山さんは前作が富士山、その前がお子様ランチと、人間じゃないキャラクターを主人公にした絵本を多く描いていますよね。今回のタワーを主人公にした絵本を描こうと思ったきっかけはなんだったんですか?
『こんなことがあっタワー』の一番最初の話をすると、元々、日本列島の絵本を考えていたんです。北海道はいつも北にあって、九州はいつも南にあるじゃないですか。この状況に「飽きた」と…。
───なんか、そう思う発想がすでにぶっ飛んでますよね(笑)。
たまには北海道も暖かいところに行きたいし、九州もスキーをしたい。…そういう話を家族としていたときに、東日本大震災が起こって、この話を絵本にするのは無理だなと思ったんです。北海道や沖縄が移動するときはどうしても地面が割れたり、本州が海の中にザブーンと入ったりしなければならないですから、地震を連想されるんじゃないかなと…。でも、「入れ替わる」というテーマは面白いから、そこを残して、ほかに入れ替わって面白いものはなんだろう…と考えていたら、ふと「東京タワーの上と下が入れ替わったら面白い!」って思ったんです。
───入れ替わりの発想から、タワーを思いつかれたんですね。ダジャレにしようと思ったのはいつぐらいですか?
それはタワーの絵本に決めてから、ごく自然に「あれ、タワーって言葉を語尾につけられるんじゃないか?」って思って、紙に書き出してみました。
───それが先ほど見せていただいた、メモ書きになっタワーですね(笑)。まさか日本列島が最初とは思わなかったです。「あきタワー」で1度意表をついて、そのあとどうなるんだろうと思ったら、ジャンプしたり、輪になってみたり、しまいにケンカもして、大忙しですよね。
どれだけ意表をつけるか、「嘘だろー!」と思われることを全部やってみようと思いました。もちろん言葉のリズムを崩さないように注意しながら…。おかげでラストをどうするかがとっても大変でしタワー(笑)。