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絵本を制作するきっかけとなった五味太郎さんとの出会い

金柿:絵に関しては、特別に習ったことがありますか?

長田:ないです。僕は普通の授業も嫌なのに、絵の勉強をするのはきついなと思っていて。教えられなくても、やることがいっぱいあるし、と。それは勉強する人を否定する気持ちではなく、当時の僕は、自分でやろうと決めたことがたくさんあったみたいなんですよね。でも、なにをしていたかという強烈な記憶が残っているわけでもないんです。
僕は気質として、目標というものを本当に立てないんですよ。なにか1つのことを突き詰める前に飽きて、他のことをしたくなっちゃうんです。だから、ちょっとかじっては次に行き……という風に、だんだん違う方向に進んで行くんです。落書きすらもそんな感じなので、ずっと同じ事を続けて行くのは向いていないなというのを、割と早い段階で察知したんですね。

金柿:そうすると、絵で身を立てようと考え出したのは、なにかきっかけがあったんですか? 今のお話を聞いていると、表現の世界でやることがいっぱいあるということは、何かしら授業中の落書きから越えた所へ行こうとしたのかなと思ったのですが。

長田: 強いて言えば、五味太郎さんという強烈な個人主義の人に会って、「こういう人が絵本を描いているんだ」という、それまでの絵本作家に対しての認識が、僕の中でずれたことですね。でもすごく強烈な意識ではなく、「僕も絵本を描いてみようかな」と思って、家に帰って描いてみた……というのが今も続いている感じです。

金柿:実はそこがすごく聞いてみたかったんです。五味さんと長田さんは、どういう経緯で出会ったんですか?

長田:僕は広島から上京して、東京の学童保育で働いていた時期がありました。その勤め先で、ある男の子が、熱心に五味さんの『ワニさんどきっ はいしゃさんどきっ』(偕成社)を読んでいたので、すごく気になったんです。そこで、その絵本を作った五味さんについて知りたくて、五味さんのエッセイ『とりあえず、絵本について』(リブロポート)を買って読んで、衝撃を受けたんです。

すぐに五味太郎さんの事務局に電話をして、「五味さんに会いたいです」と言ったら、「わかりました。じゃあメールを1本ください」と言われたので、自分が何者であるかを書いて送りました。そうしたら、わりとすぐに会ってくださって。五味さんのお家にお邪魔して、けっこう長い時間おしゃべりをしたんです。

そうしたら、五味さんがふと僕の目を見て、「お前、俺のことあまり知らないだろう」と言われたので、「知らないです」と返したら、五味さんはすごく笑って。それで打ち解けて「またおいでよ」という感じになったんですよ。

金柿:五味さんに直接会いに行こうという、長田さんの行動力もすごいですが、会ってくれた五味さんの懐の広さもすごいですね。

長田:そうですね。それで五味さんの家に出入りしていたら、五味さんに「引っ越しをするから、手伝え」と言われたんです。五味さんは、蔵書が8000冊以上もあるし、原画もたくさんあるしでとにかく荷物が多い。本を段ボールに詰めて運んで、ゴミを選別したり掃除したりで、1〜2ヶ月ぐらいかかったんです。その間、いろいろな出版者の編集者さんや他の作家さんが出入りするので、とりあえず僕は、爽やかに笑顔で全員と挨拶していました。
新参者が、いきなり五味さんとずっと一つ屋根の下で一緒にいるという状態になったので、僕ってやっぱり「運を持っているな」と思いましたね。五味さんの家に出入りしている人の中で僕が一番若かったので、野球大会があれば「球場押さえろ」みたいな、雑用みたいなことをしていました。

金柿:なるほど。勝海舟が、坂本龍馬を門人にしたみたいな感じですね。五味さんに絵を教えてもらったことは、ないのですか?

長田:一度もないですね。模写をしたこともないです。そもそも、五味さんが絵を描いている姿を見たことがないので、そういう意味では、一般の人と同じですよ。お互いの手の内を見せないみたいな。

この前会ったときも「お前、描いているの?」と聞かれたので「描いています。五味さんも描いているの?」と聞き返したら、「もちろん描いているよ」と。これで終わりです。

金柿:あえてすべてを言葉にしないところが、お互いのことを認め合っている感じがして、すごくうらやましい関係性ですね。長田さんは、五味さんのどんなところに惹かれたんですか?

長田:根っこの部分が自分と似ていて、考えていることもすごく近いものを感じるんですよ。

金柿:2人が「似ている」というのは、読者の立場からも感じます。長田さんの作品を読んだ時に、解釈の自由、読んだ人がどう捉えてもいいような余白とか、読者に問いかけてくるものがあるところが、五味さんの作品を読んだ時の感覚に似ているなと思ったんですね。
具体的に何かを習ったわけでもなく、なんとなく2人に通じるものがあるというのは、お話を聞いてわかった気がします。きっと、思っていることも似ているんでしょうね。

長田:そうですね。自分で思っていることは、自分で見ることができないじゃないですか。だから五味さんを見て、自分の性質みたいなものを見つけているんですよ。五味さんも時々「お前、俺に似ているな」と言うんですが、お互いに相手を見ることで、違う形の自分を見つけているのかもしれないですね。

金柿:先ほど、同じ事を続けていると飽きてしまうとおっしゃっていましたよね。ではなぜ、絵本の制作は続けていることができているんでしょうか?

長田:落書きと一緒にしたらいけないですけど、絵本には絵本の「定石」というものがちゃんとあるんですが、その「定石」に縛られずに自由に表現できる懐の広さもあって、すごく試しがいがあるんですよ。「定石」があるおかげで、それを破ることができるという感覚が、ちょっと学校みたいでおもしろいなと。
だから逆に、何もないところから感じたままに表現するという「現代美術」のような分野は、難しいんですね。「定石」があるおかげで、そこからずらしたものが「創作」になるのかもしれません。

───五味さんとの長田さんの共通点を垣間見た、おもしろいお話でした。次はいよいよ、最新作『ヒミツのトビラ』についてお話を伺います。

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