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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  トビラの先に広がる奇妙な世界『ヒミツのトビラ』長田真作さんインタビュー

自分で意識して、自分の中のプロ意識、専門性にこだわる制作スタイル

───『ヒミツのトビラ』を、高陵社書店さんから出すことになった経緯を教えてください。

高稜社書店・高田:長田さんからメールを頂いたんです。メールには、長田さんが五味さんと対談した記事のURLが載っていて、それを読んで「この人、おもしろいな」と思いました。僕も、今までにない絵本のコンセプトを探していたので、「一度会いましょう」と返事を出しました。
それで実際にお会いした時に、「これが最新の作品です」と見せて頂いたのが、『ヒミツのトビラ』でした。その場で読んでおもしろかったので、「じゃあやろう」ということで、出版が決まりました。


金柿:完成した絵本を持ち込んだということですか?

長田:そうです。出版者への持ち込みは、すべてできあがった作品を持って行きます。

金柿:そうだったんですね。『ヒミツのトビラ』もそうですが、頭の中にあるストーリーを絵本として描き始める、きっかけのようなものはあるんですか?

長田:あんまり衝動的に「これを描きたい」というのはないんです。あいまいであやふやな感じの中で、例えば1枚の絵ができあがったり、1個のフレーズが思い浮かんだりしたところから始まり、だんだん盛り上がっていくタイプです。

あまり覚えていないんですが、『ヒミツのトビラ』という題名も、後からつけたと思うんですよ。つくり始めは、あまりテーマとか概念みたいなところから入らないように、固定しないように……感覚的には、小学校からずっと描いてきた落書きの自由度、気質を保つことを意識しています。 それをやらないと、絵本のようにとても寛容で、読者が半分くらい話を広げていけるような想像の媒体を、最大限に活かせないんです。そこで僕がつっかえてしまったら、どれだけがんばっても、読者の手に渡ったときに世界が広がらないと思って。

だから僕は、いつも8〜10作を同時に作っているんですよ。ずっとあいまいで、「あ、これ1年経っちゃった」みたいな。これぐらいの気持ちがいいかなって。

金柿:1冊に集中して取り組むのではなくて、同時進行でいろいろなことをやっているんですね。

長田:そうです。たまに自分がノっている時は、ばーっと描きあげてしまうこともありますが、描くのが面倒だなと思ったら、ちょっと簡単な絵の制作に移って、ウォーミングアップして。そうやって、自分の気持ちを分散すると、僕が楽なんですよ。

金柿:独特の制作スタイルで、おもしろいですね。

長田:僕にとってすごく大事で、一生懸命がんばっているのは、「自分で意識して、自分の中のプロ意識、専門性にこだわる」ことです。 編集者さんとのやりとりで、既成概念とかここは変えた方がいいとか、その意見が正しくて、僕が納得できることは直します。けれど、作品の原点を作る「僕」の純度を保つことだけは、守らなくてはいけないと思っています。

金柿:確かに『ヒミツのトビラ』も、一目で長田さんの作品だとわかりますね。『ヒミツのトビラ』は、黒一色で描かれていますが、黒を選んだ理由はなんですか?


長田:もうこれは気分(笑)。そういうのって、びっくりするぐらいロジックじゃないんですよ。逆に明確に言えることは、単色を選ぶのは、墨が好きだから。墨の匂いが好きなんです。

金柿:それじゃあ、『ヒミツのトビラ』の絵は、全部墨で描いているんですか?

長田:そうです。色がついている墨が5〜6色あるんですが、それを混ぜ合わせて色を作っています。その時々でできる色が違うという、ライブ感を楽しいんですよね。もともとは、単色の濃淡のバリエーションを、山水画や水墨画とは違うフィールドでやったらおもしろいんじゃないかと思ったんです。

色選びは、本当に感覚です。色を使っているものは、その時色がいいなと思ったんだろうし、線だけを描いたときはそれが良かったんだろうし。やっぱりすぐ飽きちゃうからなんですね。飽きてはまた違うことをして、また戻ってくることを、ぐるぐる繰り返しているんです。

金柿:これはモノクロだからこそ伝わってくるものが、この作品にはあるような気がします。

長田:古いフィルムのモノクローム映画が廃れない理由は、フィルムが色を限定していない分、観た人が色を半分想像できるからだと思うんですよね。自分の目で現実の景色を見れば、絶対にそのままフルカラーで映ってしまいますから。
だからモノクロームには、「艶やかさ」みたいなものが残っていると思うんですよ。モノクローム=暗いというのは間違いで、それぞれの良さがある。

金柿:『ヒミツのトビラ』では、紙いっぱいにびっしり絵が詰まっているページと、逆に必要最低限の描き込みですっきりしているページの緩急がありますね。これが物語のリズムを生み出しているんですが、画面を埋めるように模様を描く時は、どんな思考で描いているのですか?

長田:僕は、びっしり描くほうが好きなんです。シンプルで明確な絵の方が、大変なんですよ。

びっしり描き込んでいるとき、僕の中にはなんのテーマも概念もなくて、本当にやりたい放題自由にやっているから。それに関して、形容する言葉はないですね。

ただ、描き終わったときに「こんなものができた!」と自分でびっくりするのが、一番うれしいです。その上で、この絵を殺さないように文章をつけるという、苦しい作業が(笑)。「これだけ描いたんだから、なにか感じてくれ」と思いながら、文をつけています。

金柿:絵を先に描いて、後からその絵に合った文章をつけているんですね。長田さんの文は短いけれどすごく厳選した表現、言葉遣いをしていますね。

長田:言葉へのこだわりが強かった、父の影響かもしれません。小さい頃から、稚拙な言葉を使うと「そんなことを言うと、人生がつまらなくなる」と言われていました。どうしてそんなことを言うのかなと思いながらも、嫌ではなかったです。

だからこそ、シンプルなページに載せる文章を作るのが、大変なんです。助詞1つ間違えただけで、「これは絶対に絵を殺すな」とピリピリしています。

日本語って、すごくあいまいな言葉、表現が多いんです。あいまいなことが大好きな僕としては、日本語ってすごくまさぐりようがある題材なんですよ。主語がなくても通じる言葉があるし、ひらがなとカタカナと漢字の使い分けもできるしで、まだまだ開発できるなって思っています。

金柿:絵本には、絵にも文にも、長田さんの探究心をくすぐる魅力があるということですね。改めて、長田さんから見た絵本の魅力はなんですか?

長田:描いた自分の感覚と気持ちと、読んだ人の感覚と合うことで化学反応を起こす、というのが絵本のすべてだと思っています。だから、僕はその化学反応が楽しみで、あいまいな部分をきちんと残しておくことに全力を注いでいるんです。

今、海外出版を進めている作品もあるんですが、日本語を外国語に置き換えるのが、なかなか難しいんですね。特に僕の言葉は。でも絵は見た人によって解釈が違うから、伝わるものは伝わるんじゃないかと。海外の方が僕の本をどう読むのか、その反応が楽しみですね。

金柿:デビューからの2年間を振り返って、自分の中でなにかが変わったという感覚がありますか?

長田:最初の頃よりも、絵本を意識しなくなりました。当初は「絵本にするから」と意識して、絵本を作っていた状態だったと思います。でも今は、「結果的に絵本になる」と少しずつ実感していて、より楽に、自然にできるようなってきました。

金柿:つまり、自分の中にあるストーリーを無理に絵本に落とさなくても、自然と絵本という形にすることができるようになってきた、という感じですか?

長田:そうです。何ページにしなくちゃというつっかえもなく、自然とそのストーリーに合った状態を考えられる。何が一番いい状態かというと、作品が、100%の純度の「僕」として、とびきり元気に生まれてもらうことなんです。

金柿:長田さんにとって絵本は、まさに自分の分身なんですね。そういえば、長田さんは絵本創作以外にも、コラボTシャツのデザインやグッズのイラスト制作などの活動をなさっていますが、絵本以外に興味があることはなんですか?

長田:僕はないんですけれど、僕に興味を持ってくださる方が声をかけてくれるので、それは一緒に楽しめればいいかなと思っています。

でも僕の根本、軸には「絵本」があるし、飽きる予兆がまったくないので、これからもずっと続けていくことになるんでしょうね。絵本自体が、何かを固定しないという存在そのものなので、僕もそういう域で臨まないと腐るというか、もったいないと思っています。

金柿:長田さんの独特の世界観は、長田さんそのものだということがよくわかりました。最後に、絵本ナビの読者にメッセージをお願いします。

長田:僕は20代をすぎてやっと絵本に触れたので、僕の読み方になりますが、絵本は自分を引っ提げて読むのがおもしろいと思います。
表面的なストーリーをなぞるだけよりも、「自分だったらどうだろう」とか「自分はこう考える」みたいに、自分をどんどん絵本に入り込ませることで、物語がより密着して迫ってくると思います。
だから自分がおもしろいという感覚を大事にすると、傑作に出会えるんじゃないのかなと思います。

───それこそが、絵本が生み出す「化学反応」なんですね。いろいろとおもしろい話が聞けて、楽しかったです。ありがとうございました。

文:中村美奈子(絵本ナビ編集部)
写真:所 靖子(絵本ナビ編集部)



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作品紹介

ヒミツのトビラ
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作:長田 真作
出版社:高陵社書店
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