あきぞらさんぽ あきぞらさんぽ
作: えがしら みちこ  出版社: 講談社 講談社の特集ページがあります!
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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  江戸の町を練り歩く、動物たちの愉快な見物行脚の物語『はなびのひ』たしろちさとさんインタビュー

ぽんきちと一緒に江戸の町を歩いている気分が味わえる! 綿密な構成と構図の工夫

───街並みも細部まで描かれていますが、これは架空の街並みなんでしょうか?

たしろ:江戸時代の両国橋付近の街並みをベースにしつつ、お話に沿ってお店の位置を変えたりしています。
川の手前にあるお寺は、両国橋の近くにある回向院です。実際にお寺の境内で相撲大会が行われていたそうなので、その様子も描きました。でも描き始めてからも、いろいろと調べ足りない点が出てきて、けっこう難しいなと思ったんですよね。

藤本:資料にした本を見せてもらいましたが、付箋だらけでびっくりしました。


制作の資料にした参考書の一部。資料を探すのは大変だったけれど、調べるのはとても楽しかったそう。

たしろ:ほかにも、昔の地図と照らし合わせて、現在残っている建物を探したり、江戸の建築の本なども読んだりしました。あとは、浮世絵のすみっこに描かれている、人々の生活がわかる絵を探したりしました。本当にいろんな所から勉強していきました。

───それでは、ぽんきちが歩いた道筋は、古地図を見ながらアイデアを練って作り上げたのですか?

たしろ:そうなんです。文章の流れというよりは、絵だけで流れがわかるような絵本になったらいいなと思って。資料集めや構成を考えるのはすごく楽しかったんですが、実際に描くとなると難しくて。イメージとしては、絵巻物みたいに連続性のある絵で、ぽんきちが歩いている様子をずっと追っていくように見せるというのが、目標だったんです。
ですから、とにかく地図をたくさん描きました。その地図と相関図を合わせて、どこにどんな建物があるか、どういうルートで人が歩いて行ったのかというのを、繰り返し検討しました。真っ直ぐ歩きたくないけれど、あまり細かく曲がってもおかしいかなとか。相撲大会など、描きたい場面の絵と同時に、曲がる位置関係をどうしようかとか……。
ぽんきちの後に大行列ができている様子を描いた鳥瞰図は、最初はもっと建物に近づいた絵だったんですけれど、藤本さんの「もっと引いた構図でもいいのでは」というアドバイスで、変えました。

藤本:たぶん私もすべてのラフを拝見していないほど、本当にたくさん描いてくださって。どうリズムを出していくかなど、展開はかなり練っていただきました。


取材のために、ファイルにぎっしりと閉じられたラフ画を持ってきてくださったたしろさん。そのボリュームに、藤本さんも驚いていました。

たしろ:本当に(笑)。最初は、大まかにページを割って流れで考えました。だんだん内容が固まっていくと、どういう道筋で隅田川まで行くのか、何回曲がるかなど、自分で体を左右に動かしながら思い描けるようになりました。


(左)絵の繋がりと話の流れを見るために描いたという、ページ割のラフ。コピーや切り貼りの跡で、順番の入れ替えや構図の変更などを繰り返し検討した様子が伝わってきます。 (右)建物の配置やアングルを検討したラフ。建物の大きさや配置などに微妙な違いがあり、細かい所にまでたしろさんのこだわりが表れています。

───地図から構図、そして絵本としての構成や流れなど、本当にたくさんのラフ画を描いていらっしゃっていますよね。
実際に出来上がるまでに、どのぐらいの時間がかかったのですか?

たしろ:資料を調べ始めて、ラフのラフができあがるまでがうんと長くて、何年もかかりました。自分の中で流れがわかるまでは、なかなか形にできなくて……。
例えば、ぽんきちの後を付いていく動物たちが、どんな風に行列を作っていくのかなどいろいろ考えたり、描いてみないとわからないので、アングルを変えた絵を何枚も描いたりしました。

───花火大会の会場である隅田川へ向かって、町を移動していく絵の流れと、「もうすぐ花火が上がる」という気持ちの盛り上がりがリンクしていて、読んでいる側の気持ちも盛り上がりました。

たしろ:読者の方に、ぽんきちの気持ちになって読んでもらいたい気持ちもあるけれど、ぽんきちが何かしながら歩いて行く様子を見る楽しさも味わって欲しいなとも思ったので、アングル違いの絵を何度も描きました。

───ぽんきちくんは、花火大会に行く途中で寄り道して遊んでいて、自分の後にできている大行列に気付いていない様子。そんな風に少しぼーっとした所があるけれど、とってもかわいらしいキャラクターです。
主人公をタヌキにしようと思ったのはなぜですか?

たしろ:この作品のアイデアを考えたときに、「江戸」に続いて出てきたのが「タヌキ」だったんです。私の頭の中に最初に思い浮かんだ文章が、「ポポン ポン ポン。ここは大江戸 タヌキ横町」だったんです。できあがった『はなびのひ』とは全然違いますが、その一文のひらめきから、タヌキを主人公にしました。

───たしろさんの作品で、タヌキが登場するのは初めてですね。仕草もかわいらしくて、お母さんにおんぶされた小さな弟・妹たちもかわいいです。
絵本には、タヌキ以外にもいろんな動物が登場しますが、登場させる動物の種類は、どんな風に決めたのでしょうか?

たしろ:日本にいる動物にしようと思って、鳥獣戯画にも描かれているウサギとカエル、サルを入れました。お武家さんはウマかイヌという風に、職業からなんとなくイメージして決めた動物もいます。ブタは、私が好きなので入れてみました。


相撲取りは力が強いクマやイノシシに、軽業師はユニークな雰囲気を持つカエルになっています。右下のラフは、アングルの違いを検討した際に描いたものだそう。

藤本:寺子屋のお師匠さんは、どんな動物にするか迷いましたよね。

たしろ:そうですね。ハクトウワシという案もありましたが、最終的におじいちゃんっぽさが出るヤギにしました。

───どの動物も活き活きとした姿で描かれていて、仕草にも特徴がありますね。ネコは、粋な雰囲気で、歩き方も艶っぽさを感じます。

たしろ:気付いてもらえて、うれしいです。実はこの絵は、最初の構成の時にはなかったんですよ。着物を着ている人の歩き方が難しくて、キャラクターを考えながらスケッチを描く中で、入れようと思って追加しました。
着物と洋服では、着ている人の体の重心が違うんです。着物姿の人の歩き方を映像で見ると、洋服に比べて、少し腰が後ろに落ちているんですね。着ている衣装だけでなくて、仕草も違うんだなと思ったので、それを絵にも反映させました。着物の柄も、時代に沿ったものを選んでいます。

───細かい部分の表現も、こだわって描かれているんですね。一番苦労した絵はどれですか?

たしろ:やはり、この鳥瞰図ですね。メインの人が、ちゃんと順番に付いてきているかチェックしたときは、間違い探しをしているようでした(笑)。藤本さんに指摘されて、回向院の土俵脇にある酒樽も、最初3段で描いたんですが、前のページは4段だったので付け足して。

藤本:のぼりの旗も数が少なかったので足しましたね。でもそういう細かい所を見つけるのが、楽しみな絵本になったと思います。またこの絵は、列の先頭から離れた場所はぼかして描かれているんです。それでなんとなく、道筋にフォーカスが当たるように見えるのが、すごいなと思います。

───本当ですね! ページの隅々までたしろさんのこだわりが感じられます。 次のページでは、和の色づくりについてお伺いします。

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たしろ ちさと

  • 東京都生まれ。大学で経済学を学んだ後、4年間の会社勤めを経て、絵本の制作を始める。世界的編集人、マイケル・ノイゲバウアーが見い出し、「ぼくはカメレオン」で世界7カ国語同時デビュー。『5ひきのすてきなねずみ ひっこしだいさくせん』で2011年日本絵本賞を受賞。作品に、『ぼくはカメレオン』(グランまま社)、『かあさん』『ねえ、あそぼうよ』(以上、「こどものとも0.1.2」福音館書店)、『じめんのしたの小さなむし』(福音館書店)、『くんくん、いいにおい』(グランまま社)、『ポレポレやまのぼり』(大日本図書)、『ぼくうまれるよ』(アリス館)などがある。神奈川県在住

作品紹介

はなびのひ
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作:たしろ ちさと
出版社:佼成出版社
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