●塗っても塗っても先に進まない!? 和の色合いへの挑戦
───『はなびのひ』は、これまでのたしろさんの作品と色合いがまったく違うので、新鮮な印象を受けました。題材に合わせて、和風の色合いを追求したのでしょうか?
たしろ:そうなんです。江戸時代には、素敵な名前の色がたくさんあるんですよ。和の色は、今までの自分のパレットにはない色ばかりだったので、挑戦してみたいなと思っていたんです。ちょうど使っていたアクリル絵の具に、「和バージョン」があるのを知って、その色を使いました。

色を決める時には、実際に紙の上に絵の具を置いて色味を検討したそうです。
───何か、色で苦労したことはありましたか?
───全体的に江戸時代の素朴な雰囲気が出ていてとても素敵です。
一番の見所は、題名にもなっている花火のシーンですが、大きな花火が鮮やかで、迫力たっぷりですね。原画も美しいです!

たしろ:この花火だけは、史実をそのまま再現するのではなく、現代的な花火のイメージを加えています。江戸時代は、絵のように大きく開く花火はまだなくて、ススキの穂のように、下に向かって落ちる花火だったそうです。花火大会で打ち上げられるのも、20発ぐらいで終わりだったそうなんですね。
───そうだったんですね! 絵本を読んでも感じますが、花火大会の規模の大小というよりは、花火大会の日を楽しむこと自体が、江戸の人の楽しみだったんだろうなと思います。
この花火ですが、原画を見ると、黒の下に青い色が塗ってありますね。
たしろ:はい。最初の花火が上がるのは、日が暮れきっていない時間帯だったので、そこから暗くなったことを表現するために、色を重ねています。
───本当に光っているように見える花火ですが、どんな風に描いたのですか?

たしろ:もう1回同じことはできないんですが(笑)、花火の周囲の地色は夜の青なんですが、花火の光の余韻がある所は逆で、黄色の地色の上に夜の闇を乗せているんです。パラパラと火が落ちている部分は、黒の上に絵の具をたっぷり置いて描きました。
───それでこんなに、鮮やかな黄色になっているんですね。 夜空に浮かぶ花火の美しさだけでなく、迫力も感じられて、まるで音まで聞こえてきそうです。
たしろ:それは、藤本さんのアドバイスのおかげなんです。「大曲の花火」(秋田県大仙市で 行われる、全国花火競技大会)の動画を送ってくださって、「もっと臨場感があって、どーんと音が聞こえるような感じにしてください」と言われて。
藤本:実は、私は秋田県大仙市の出身なので、小さい頃から花火が好きなんですね。実際に花火大会に行くと、音もすごいし振動もある。視界全体が花火になっているというのを、絵で出しませんかと提案しました。
たしろ:私のイメージでは、暗闇に光が乱れ打つみたいななんとなくのイメージだったので、振動まで考えていなくて。でも藤本さんのお話で、確かに音や振動も大事だなと思ったんです。
───音や振動という、絵には描けない要素を、実際にどうやって絵に落とし込んでいったのですか?
───花火そのものの見え方にも工夫がありますが、それを見ている人々の絵で、臨場感を出していったんですね。
藤本:花火の大きさだけを考えると、ここだけ絵本を縦長にして見せるという方法もあるかと思うのですが、そうすると、ぽんきちの家からずっと積み上げてきた流れが途切れてしまうんです。横長だと、どうしても切らなくてはいけない部分も出てくるんですが、そこはすごく苦心して頂いて。完成した絵は、納得の仕上がりで、すばらしいと思います。
───読むと花火が待ち遠しくなる1冊ですね。長い時間をかけてじっくり制作なさった過程など、いろいろなお話を聞くことができて、とても楽しかったです。ありがとうございました。
最後に、絵本ナビ読者へのメッセージをお願いします。
たしろ:絵本を読んで、ぽんきちと一緒に花火を楽しんで頂けるとうれしいです。

───ありがとうございました!!
●『はなびのひ』原画展&サイン会のおしらせ
『はなびのひ』の原画展と、サイン会が開催されます! 記事でも紹介しましたが、たしろさんの思いがこもったとても美しい原画です。お時間があったら、ぜひ行ってみてください。
