あきまつりピーヒャラおはやしの日! あきまつりピーヒャラおはやしの日! あきまつりピーヒャラおはやしの日!の試し読みができます!
作: ますだ ゆうこ 絵: たちもと みちこ  出版社: 文溪堂 文溪堂の特集ページがあります!
行事絵本シリーズ最新巻!
まゆみんみんさん 40代・ママ

秋祭り!
私が生まれ育った地域は,お祭りというと…
【在庫限り】ゲットするなら今!絵本キャラグッズ
絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  ミキハウスの「宮沢賢治の絵本」シリーズ とことん語ろう!【座談会】編集者・松田素子さん、絵本ナビ編集長・磯崎園子、絵本ナビライター・大和田佳世

うずまく感情に翻弄される恐ろしさ

大和田『土神ときつね』には、賢治さんのドキドキするような言葉が詰まっているなと思いました。きれいな女の樺の木は、花も葉も美しくつややかで色気すら感じるし、きつねは樺の木によいところを見せようと心地よい言葉を並べます。
その一方で、土神は樺の木を思うあまり、きつねに対して嫉妬します。「一本の樺の木など、自分にどれほどの価値があるものか。いやしくも自分は神ではないか」とくりかえし自分に言い聞かせる。けれどもますます感情は燃え、ちょっとでもきつねのことを思い出すと、まるで体が灼けるくらい、つらい……。賢治さんの作品の中でこんなに感情がうずまく作品は珍しいのではないでしょうか。

宮沢賢治の絵本 土神ときつね
作:宮沢 賢治
絵:大畑 いくの
出版社:三起商行(ミキハウス)

一本の樺の木など、自分にどれほどの価値があるものかと、土神は繰り返し自分で自分に教えた。それでもどうしても悲しくて仕方なかったのだ。ことに、ちょっとでもあの狐のことを思い出したら、まるで体が灼けるくらい辛かったのだ。 星の話、ハイネの詩集、美学の話……。宮沢賢治自身の興味・知識の片鱗を感じさせるモチーフが、ロマンチックに散りばめられた中に、人間性の幅や悩みの深さを感じさせる、賢治自身の肉声をきくような物語を、画家大畑いくのが色鮮やかに美しく渾身をこめて描いた作品。


「一本の奇麗な女の樺の木がありました。それはそんなに大きくはありませんでしたが幹はてかてか黒く光り、枝は美しく伸びて、五月には白い花を雲のようにつけ、秋には黄金や紅やいろいろの葉を降らせました。」(『土神ときつね』大畑いくの・絵)

松田:珍しいと思います。ただ、人間には、誰しもこういう感情がありますよね……。押さえ込むから、なおさら内側に感情の圧力が高まって、最後は爆発してしまう……。

大和田:「べらべらした桃いろの火でからだ中燃されているよう」になる土神の絵は、強烈でした。そしてやわらかな感じさえする最後の場面はとても切なかったです。


「土神は今度はまるでべらべらした桃いろの火でからだ中燃されているようにおもいました。息がせかせかしてほんとうにたまらなくなりました。なにがそんなにおまえを切なくするのか、高が樺の木と狐との野原の中でのみじかい会話ではないか、そんなものに心を乱されてそれでもお前は神と云えるか、土神は自分で自分を責めました。」(『土神ときつね』大畑いくの・絵)


「それからぐったり横になっている狐の屍骸のレーンコートのかくしの中に手を入れて見ました。そのかくしの中には茶いろなかもがやの穂が二本はいって居ました。土神はさっきからあいていた口をそのまままるで途方もない声で泣き出しました。その泪は雨のように狐に降り狐はいよいよ首をぐんにゃりとしてうすら笑ったようになって死んで居たのです。」(『土神ときつね』大畑いくの・絵)

松田:ほんとにね……切ないですよね。キザなことを言っていたきつねも、ポケットの中に持っていたのは、かもがやの穂がたった2本だった。土神は、きつねを殺してしまった後にそれに気づき、身も世もないほどの後悔で泣きます。
『土神ときつね』は大畑いくのさんに絵をお願いしました。大畑さんは、絵本作家としてデビューしたばかりの方でしたが、ある意味で、天性の才能をもつ人。この物語の激しさと切なさを見事に描き切ってくださったと思っています。

松田:この作品はどうしてもこの絵描きさんにということで言えば、降矢ななさんに『グスコーブドリの伝記』を、そしてスズキコージさんに『北守将軍と三人兄弟の医者』を、シリーズ2冊目となる依頼をしています。
このシリーズで同じ画家の方が登場することはあまりないのですが、どうしてもと思って依頼しました。コージさんは、「ぼくの一番好きな作品だ」と言ってくださいました。数年先になると思いますが、楽しみにしていてくださいね。この後からも、まだ画家未定の作品がありますから、こういうケースが出てくるかもしれません。

見にくさが大事なことがある

松田:ふだん「宮沢賢治の絵本」シリーズは、私の方から「この作品に絵を描いてください」とお願いするパターンが多いのですが、画家自らが選ばれたものが3冊あるんです。
ひとつは片山健さんが選ばれた『狼森と笊森、盗森』です。それと『山男の四月』の飯野和好さん、nakabanさんの『フランドン農学校の豚』が、そうでした。

磯崎:「描き手が賢治作品を、何から見た視点で描いているのか。それを想像しながらこのシリーズを読んでいくのはおもしろい」と思ったきっかけが『フランドン農学校の豚』でした。
「これは灰色の気分である。透明なるところの気分である」と不思議な文章を読みながら、あ、もしかしてnakabanさんは、豚の気分、豚の視点で絵を描いているんじゃないかと思いついたらハッとして。半分透明に見える風景も、豚の食料であるじゃがいもやネギがやたら鮮明に描かれている絵も、豚の目にうつっているものだと想像したら視界がひらけてきました。「絵を読むって楽しい!」と思った瞬間でした。

宮沢賢治の絵本 フランドン農学校の豚
作:宮沢 賢治
絵:nakaban(ナカバン)
出版社:三起商行(ミキハウス)

ところが豚の幸福も、あんまり永くはつづかなかった。 ・・・・・・これ灰色の気分である。 灰色にしてややつめたく、透明なるところの気分である。 さればまことに豚の心もちをわかるには、豚になって見るより致し方ない。


「そのあとの豚の苦しさ、(見たい、見たくない、早いといい、葱が凍る、馬鈴薯二斗、食いきれない。厚さ一寸の脂肪の外套、おお恐い、ひとのからだをまるで観透してるおお恐い。恐い。けれども一体おれと葱と、何の関係があるだろう。ああつらいなあ。)」(『フランドン農学校の豚』nakaban・絵)

松田:なるほど、他の方の、読み方、感じ方を聞くのは興味深いですね。
nakabanさんはいろんな表現方法を持っておられるけど、これは色指定でした。色指定で描かれるとは想像していなかったのですが、テキストの量が多いこともあって、結果的には、文章をしっかり読みこんでもらうためには、いい選択肢でもあったのかなと思っています。抽象性も増したかもしれません。
最後の場面で、とうとう豚は殺されます。その場面まで慎重に使われなかった真っ赤な血の色が、小さい面積ながらも鮮烈な印象を残します。私たちはこうして命を食べているんですよね。この絵本を読むことで、豚の気持ちに立って、しばし考え、しんとしてもらえたらと思います。

宮沢賢治の絵本 狼森と笊森、盗森
作:宮沢 賢治
絵:片山 健
出版社:三起商行(ミキハウス)

「ここへ畑を起こしてもいいかあ。」「いいぞお。」森が一斉にこたえました。人が自然の声にちゃんと耳をすまし、礼儀をつくしていた時代。人と自然との仲は、豊かで温かくユーモアに満ちたものだった・・・。現代こそ見つめ直すべき、賢治が提示した人と自然との関係を片山健が力強い油絵で温かく描ききった渾身作。

磯崎:『狼森と笊森、盗森』は、「ここへ畑起してもいいかあ。」「いいぞお。」「ここに家建ててもいいかあ。」「ようし。」という人間と森のやりとりを読んでいくと、絵本のカバー袖に書いてあったように、人間が自然に対して礼儀を尽くしていた時代が描かれているとわかります。そうやって礼儀を尽くしてやってきたからこそ、「森は冬のあいだ、一生懸命、北からの風を防いでやりました。」という文章があるんですね。

松田:そうです。だから、ほら、片山さんの絵を見てください。森の木にかぶった雪が手の形になっていて、北風を防いでやっている。


「森は冬のあいだ、一生懸命、北からの風を防いでやりました。」(『狼森と笊森、盗森』片山健・絵)

大和田:『狼森と笊森、盗森』の最初の場面、大きな岩手山がどーんとものすごい存在感で目に飛び込んできました。まるで山が主人公みたい!
そして次へページをめくると、「アリが描かれているの?」と一瞬勘違いするくらい、山刀や鍬を背負った人間たちが小さく描かれているんですよね。この絵本では、人間が中心じゃない。人間の背景に自然があるのではなく、自然と人間がまるっきり同じ重さで描かれているように感じました。


「『おらの粟知らないかあ。』『知らないぞお。』森は一ぺんにこたえました。『さがしに行くぞ。』とみんなは叫びました。『来お。』と森は一斉にこたえました。」(『狼森と笊森、盗森』片山健・絵)

松田:大和田さんの、その読みはおもしろいですね。
それとね、片山健さんのこの絵本の絵を見ていると、私は、見ようとして目をこらす必要があることの大切さを思うんです。見えづらかったら目をこらす。聞こえづらかったら耳をすます。そうすると、自然に心が一歩前に出るでしょ?
今の私たちはデジタル社会に生きていて、数字で簡単に波長を合わせ、聞こえにくいときはいくらでもボリュームを上げられるし、見えにくければすぐ拡大して見ることができる。でも、そうやって親切過ぎるくらいに提供される見やすさや聴きやすさで得たものは、不思議と心に残らない気がするんです。
昔ね、必死でチューニングを合わせて、それでも聞こえたり聞こえなくなったりするラジオで聞いた言葉や音楽があって、そういうものの方が、今も心に深く残っている気がする。

この絵本の絵は、暗い森の奥にまだ何か描き込まれているのではないかと思わせるように、ある意味、見やすいというよりは見分けづらい。だからこそ、私たちは目をこらす。そうすると、絵の中へ入っていける。森の奥に入っていけるんですよ。
画材は油彩でした。その画材の持つ厚みというのは、土を開墾して自然との交流をするこの物語にとてもふさわしいものだったと、編集者として感じています。

宮沢賢治さんの作品には、耳をすましたり目をこらしたりしないとわからない、小さなたねがたくさん埋まっているような気がします。絵本を読んだ人がすぐには腑に落ちなくても、いつか心に落ちたたねが芽吹くときが来るかもしれませんよね。

>>座談会はまだまだ続きます。【後編】もお楽しみください。
「宮沢賢治の絵本」シリーズ とことん語ろう!座談会【後編】

文・構成: 大和田佳世(絵本ナビ ライター)
撮影: 所 靖子



※期間内【2018年6月28日から2018年7月25日まで】にご回答いただいた絵本ナビメンバーの方全員に、 絵本ナビのショッピングでご利用いただける、絵本ナビポイント50ポイントをプレゼントいたします。

出版社おすすめ



「楽しみながら生活する気持ち」と「生活習慣」を学べる絵本♪
年齢別絵本セット&学年別児童書セット

松田素子(まつだもとこ)

  • 1955年山口県生まれ。編集者、作家。児童図書出版の偕成社に入社。雑誌「月刊MOE」の創刊メンバーとなり、同誌の編集長を務めた後1989年に退社。その後はフリーランスとして絵本を中心に活動。これまでに約300冊以上の本の誕生にかかわってきた。各地でのワークショップを通して、新人作家の育成にもつとめており、なかやみわ、はたこうしろう、長谷川義史など、多くの絵本作家の誕生にも編集者としてたちあい、詩人まど・みちおの画集なども手がけた。また自然やサイエンスの分野においても、企画編集、および執筆者として活動している。

作品紹介

宮沢賢治の絵本 注文の多い料理店
作:宮沢 賢治
絵:スズキ コージ
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 雪わたり
作:宮沢 賢治
絵:方緒 良
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 水仙月の四日
作:宮沢 賢治
絵:黒井 健
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 どんぐりと山猫
作:宮沢 賢治
絵:田島 征三
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 やまなし
作:宮沢 賢治
絵:川上 和生
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 なめとこ山の熊
作:宮沢 賢治
絵:あべ 弘士
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 オツベルと象
作:宮沢 賢治
絵:荒井 良二
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 狼森と笊森、盗森
作:宮沢 賢治
絵:片山 健
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 よだかの星
作:宮沢 賢治
絵:ささめや ゆき
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 いちょうの実
作:宮沢 賢治
絵:及川 賢治
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 ツェねずみ
作:宮沢 賢治
絵:石井 聖岳
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 月夜のでんしんばしら
作:宮沢 賢治
絵:竹内 通雅
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 山男の四月
作:宮沢 賢治
絵:飯野 和好
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 気のいい火山弾
作:宮沢 賢治
絵:田中 清代
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 土神ときつね
作:宮沢 賢治
絵:大畑 いくの
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 蛙のゴム靴
作:宮沢 賢治
絵:松成 真理子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 氷河鼠の毛皮
作:宮沢 賢治
絵:堀川 理万子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 寓話 洞熊学校を卒業した三人
作:宮沢 賢治
絵:大島 妙子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 セロ弾きのゴーシュ
作:宮沢 賢治
絵:さとう あや
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 銀河鉄道の夜
作:宮沢 賢治
絵:金井 一郎
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 黄いろのトマト
作:宮沢 賢治
絵:降矢 なな
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 虔十公園林
作:宮沢 賢治
絵:伊藤 秀男
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 猫の事務所
作:宮沢 賢治
絵:植垣 歩子
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 ひのきとひなげし
作:宮沢 賢治
絵:出久根 育
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 カイロ団長
作:宮沢 賢治
絵:こしだ ミカ
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 フランドン農学校の豚
作:宮沢 賢治
絵:nakaban(ナカバン)
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 雨ニモマケズ
宮沢賢治の絵本 雨ニモマケズの試し読みができます!
作:宮沢 賢治
絵:柚木 沙弥郎
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 ざしき童子のはなし
作:宮沢 賢治
絵:岡田 千晶
出版社:三起商行(ミキハウス)
宮沢賢治の絵本 貝の火
作:宮沢 賢治
絵:おくはら ゆめ
出版社:三起商行(ミキハウス)
全ページためしよみ
年齢別絵本セット