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児童養護施設の子どもたちと作った絵本『もうひとつのにじのしま』【えほんdeみらい】 高原かずきさん 永井みさえさん インタビュー

心あたたまる絵本、みんなで笑う楽しい絵本、泣ける絵本、怖い絵本、おいしそうな絵本……。世の中にはいろいろな絵本がありますが、今回ご紹介するのは、ある特別な目的を持って作られた絵本です。作者は、「えほんdeみらい」という子どもたちのためのボランティア活動をされている、高原かずきさんと永井みさえさん。
高原さんは普段は会社員として働き、永井さんと休日に児童養護施設でボランティア活動をする中で、絵本づくりを企画し制作されました。完成した絵本『もうひとつのにじのしま』について、おふたりにインタビューしました。【えほんdeみらい】の活動について、この絵本を制作した理由、子どもたちや絵本にこめた思いについて伺いました!

───たぬきの「たろ」ときつねの「きっつ」と一緒に、いろいろなところに行ける、「行きたいところ」がテーマの楽しい絵本ですね。にぎやかなところや静かできれいなところ、いろいろな場所が登場します。
『もうひとつのにじのしま』は、ボランティア活動がもとになり、子どもたちが参加して作られた絵本だと伺いました。

高原:僕たちは、【えほんdeみらい】という活動をしています。活動の中で絵本を制作していて、『もうひとつのにじのしま』は、第2作目の絵本となります。


えほんdeみらい 高原かずきさん(左)と永井みさえさん(右)

───まず、【えほんdeみらい】の活動について伺えますか?

高原:僕はもともと図書館でボランティアをしていて、そのときに、「オレンジリボン運動」に参加している絵本作家の永井さんと知り合ったんです。

永井:「オレンジリボン運動」というのは、子どもたちの虐待防止の象徴として「オレンジリボン」を広める市民運動です。毎年11月に推進月間がありまして、「オレンジリボンたすきリレー」というイベントが行われます。東京や神奈川などで、オレンジ色のたすきをかけて走ってリレーをすることで、虐待防止の啓発をしています。私はそのイベントのMCアシスタントをしているんです。高原さんはその活動で私を知ってくださって。

高原:図書館でのボランティアが一段落して、次のボランティア先を考えていたとき、永井さんと出会えたので子ども向けのボランティアとして児童養護施設での学習支援をやってみようと思いました。
僕が学習支援をしていることを永井さんに伝えたら、「自分もやってみたい」とボランティアを手伝ってくれるようになって。そのとき、たまたまそこの児童養護施設の施設長さんが永井さんの絵本作家としての活動をご存知で「絵本をつかったボランティア」を提案してくださったんです。それで、絵本をつかったボランティアを何かやっていこうと思ったのが【えほんdeみらい】の始まりです。

───そこから絵本を制作することになったのですね。どんな絵本を作るのか、最初からイメージはありましたか?

高原:絵本を作って子どもたちに届けること、それが少しでも、施設で暮らす子どもたちの生きる力になったらいいなと思いました。

───絵本の内容はどのように考えられたのでしょうか。

永井:どんな絵本にするか、施設長さんに相談していたときに、「自己肯定」というキーワードが出てきました。

───「自己肯定」ですか?

高原:はい。児童養護施設には虐待が理由で入所する子どもが多く……、その経験は「自己肯定感」を下げてしまうことがあると聞きます。
自己肯定感が下がって自分のことを好きになれなくなってしまった子どもたちに、どうやって絵本を使ってアプローチできるか考えたとき、施設長から聞いた児童養護施設でのエピソードがヒントになりました。

永井:「募金箱を、朝出して夜しまう」という役目をもらった子が、そのことがきっかけで昼夜逆転していた生活も徐々に直って、「僕はここにいたい」と言ってくれるようになったそうなんです。

高原:自己肯定感を高めるためには役割があることが大切ということを施設長は教えてくださいました。
そのことをヒントに考えた【えほん de みらい】第1弾の絵本が『てをつなごう』でした。


『てをつなごう』 (Parade books)

高原:これは、子どもたちに、主人公の名前をつけてもらうことをコンセプトにした絵本です。
神奈川県には33ヶ所の児童養護施設があるのですが、その一ヵ所一ヵ所にカラーコピーで名前がない主人公の絵本を送って、子どもたちと先生に読んでもらいました。「きみたちなら、なんて名前をつける?」という問いかけに戻ってきた名前のなかから、「たろ」と「きっつ」という名前を我々で選ばせていただきました。

───キャラクターのきつねとたぬきはどのように決めたのですか?

永井:ふたりセットになるキャラクターにしたかったんです。一人じゃないよというメッセージをこめたかったので。セットになって違和感がなくてバランスが良い動物のキャラクターを考えて、たぬきときつねだと、犬と猫のコンビより面白いかなと思いました。

───自分のつけた名前が絵本の主人公になるなんて、子どもたちにとって、とても嬉しいことですね。

永井:「たろ」の名前をつけたのは4歳くらいの男の子だったと思います。会いに行ったら、普段恥ずかしがりやでお礼を言えない子だったらしいのですが、絵本を持って走ってきて、泣きそうになりながら、きちんと「ありがとう」と言ってくれたことが、とても印象的でした。

───その子の嬉しい気持ちが伝わってきますね。絵本の最後に、「たろ」と「きっつ」以外の子どもたちから応募された名前が載っているのも印象的でした。

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高原かずき

    永井みさえ

      作品紹介

      もうひとつのにじのしま
      作:えほん de みらい と こどもたち
      出版社:銀の鈴社
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