『とりがいるよ』ギフトセット 『とりがいるよ』ギフトセット
作: 風木 一人 絵: たかしま てつを  出版社: KADOKAWA KADOKAWAの特集ページがあります!
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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  ほんとうにあった難民の家族とねこの物語『難民になったねこ クンクーシュ』翻訳者 中井はるのさん、編集者 三輪ほう子さん インタビュー

より日本の子どもたちに手渡しやすい形に

───日本の子どもたちのために、工夫された点がいろいろあると伺いました。

中井: たとえば、原書では「クンクーシュ 」は本当の名前がわかるまで「ディアス」(ギリシャ神話の神の名前)と名付けられていて、文章のなかでもディアスと書かれていたのですが、読み手の子どもによってはわかりにくいので、翻訳ではディアスの名前は出さず、「まいごのねこ 」という形にしました。


翻訳のラフでは、Facebookページの名前は「ディアスを家族のもとへ」でしたが、完成した日本版では「まいごのねこを家族のもとへ」という訳になっています。

中井: それから、原書は、淡々と事実を述べた文章だけで構成されていたのですが、日本版では、子どもたちがわかりやすいように、一部会話を入れた文章にしています。

───もともとは、会話がなかったのですね!

三輪: 今回、難民という難しいテーマを扱っていますが、小学校中学年くらいの子どもたちから手に取れる絵本にすることをミッションにしていました。
この本の完成前に、ある小学校の図書の時間に、司書さんが子どもたちの前で試し読みしてくださることになりました。その結果、3年生から6年生までの100人くらいの子どもたちと、学校司書さん、先生方から、いろいろなアイディアや意見をいただくことができました。会話があるとわかりやすいというのも、子どもたちの意見を生かしたものです。

───子どもたちからの意見は、ほかにどんなものがありましたか?

三輪: ある学年の子どもたちは、ちょうど本ができるまでの工程について社会科で学習をした後だったそうで、「僕なら、私ならこうする」という意見をたくさんくれたんです。はじめ、子どもたちが知らない言葉は、巻末に説明をまとめていたのですが、これも、子どもたちの声をもとに、各ページの文中に説明を掲載して、低年齢の子でも読みやすいようにしました。また、名前もはじめテレビで紹介されたときは「クンクシュ」という名前でしたが、実際はアラビア語での発音に近いのは「クンクーシュ」だったんです。でも1度テレビに出た名前でしたから、変えることを躊躇していたところ、子どもたちが「クンクーシュ」のほうがかわいらしくて言いやすい、と言ってくれたんですよ。

───「クンクーシュ」の名前にも、子どもたちの意見が反映されていたんですね!

三輪: また、1番良かったと思うのが、子どもたちのリクエストで、クンクーシュと登場人物の移動地図「クンクーシュ5000キロの旅」を入れたことです。


巻頭の地図・クンクーシュ5000キロの旅

───登場人物と、クンクーシュが移動した国の位置が一目でわかりますね。

三輪: やはり登場人物が日本の名前ではないので覚えにくいですし、移動するたびに違う人が出てくると混乱してしまう子どももいます。わかりやすいように地図を入れてほしいということでした。この物語の骨組みがこの地図でとてもわかりやすくなったと思います。

───世界地図を勉強する前の子どもたちでも、ストーリーを追いやすいですね。

中井: 日本語版のデザインをしてくださった桂川潤さんが原書をベースに作ってくださって、素晴らしい地図になりました。まるで原書に最初からあったようなできばえでできあがりをみて驚きました。


『クンクーシュ』制作チーム、印刷所(光陽メディア)での印刷立ち会いにて。
デザイナーの桂川潤さん(手前)もいっしょに。
「用紙も製本も、印刷機も色校正も、アイディアを出し合って、チームワークでがんばりました。」

───おはなしの最後の、「もっとしらべてみよう!」「考えてみよう! 書いてみよう!」のページも、とても充実していますね。「もっとしらべてみよう!」ページでは、難民に関する基本データや、興味を持った子どもたちのために、ウェブサイトや児童書などの資料も掲載されています。

三輪: ここでもUNHCRの方に用語などを細かくチェックしていただきました。

───ここに記載されている「日本への難民申請 1万9629人・国籍82か国」に対して「在留を認めた人数 65人」(法務省ホームページより 2017年度速報値)という人数にショックを受けました。

三輪: そうなんですよね。でも実際は「難民認定」という言葉で言うと、さらに少ない20人なんです。けれども、子どもたちにもわかりやすく「在留を認めた人」まで入れて65人と記載しました。

───本当は20人なんですね……。

三輪: すごい数字ですよね。このページでは、最低限の基本情報入れているのですが、大人も知らないことがありますね。さらに疑問を感じた方は、関連のウェブサイトとして掲載しているページを、調べてもらえればと思います。

───「考えてみよう! 書いてみよう!」のコーナーでは、おはなしの理解を深めるための設問が掲載されています。この設問も面白い内容ですね。

中井: 設問は、私と三輪さんで考えて作成しています。子どもたちに向けた設問を考えるのは楽しい作業でした。

三輪: 中井さんのアイディアで「ネコを主人公にしたおはなし」を書いてみることのすすめなど、子どもたちに興味を持ってもらえそうなユニークな提案も加えています。日本語版は、難民になじみの薄い日本の子どもたちが、さらに感じたり考えたりしやすいように、パワーアップしたものになっていると思います。

───子どもたちがそれぞれに調べたり考えたりするヒントがつまっているんですね。授業や調べ学習でも活躍しそうです。

三輪: 絵がはっきりしていて、遠くからでも場面がわかりやすいので、教室など大勢の前で読むのにも良いと思います。


絵本の帯で紹介されている、小学校4年生の感想、“「人間はやさしい」ということがわかりました。”

───最後に、絵本ナビ読者へ向けてメッセージをお願いします。

中井: この本の表紙を見て、「このネコかわいい」と思ったら、手に取って開いてみてください。ネコが好きな子はネコ中心に見てくれればいいし、ネコを見失った家族の気持ちを掘り下げて考えてみてもいいです。これをきっかけに難民について知って、ちょっと調べてみようかなと思ったり、人の優しさってすごいなと思うのでもいいんです。とにかく、この本を読んでみて、感じたこと、真似してみたいと思うことがあったら、その翌日から何か行動を起こしてもらえたらと思います。渾身の一冊です。

三輪: 小学校の図書室の椅子の上に、この本を置いておいたら、子どもたちがやってきて、「クンクーシュだって!」「ネコだ!」「かわいい!」と表紙を見て口々に言ってくれたんです。それがとても嬉しくて。クンクーシュの絵だけで、子どもたちをひきつける力のある絵本なんだなと思いました。 1970〜80年代、インドシナ難民を受け入れた頃は日本でも今とは違う意識や関心が社会で持たれていました。けれど、現在のヨーロッパ難民に対しては、縁遠いイメージがあります。でも実際に世界では難民の方が増えて助けを必要としている人たちがいます。子どもたちがこれから向き合っていく世界の現実です。今後、日本でも難民問題をテーマにした絵本や児童文学が増えて広がっていくと思います。この絵本も、子どもたちが難民の方の気持ちや生活に触れるきっかけのひとつになってくれればうれしいです。

───ありがとうございました!

インタビュー・文:掛川晶子(絵本ナビ編集部)

撮影:所靖子(絵本ナビ編集部)



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中井はるの(なかいはるの)

  • 東京都在住。子どもの誕生をきっかけに、児童書の世界に入る。『木の葉のホームワーク』(講談社)で第60回産経児童出版文化賞翻訳作品賞受賞。
    『グレッグのダメ日記』(ポプラ社)、『ワンダー』(ほるぷ出版)、『木の葉の中の魚』(講談社)、『みんな、ワンダー』(アルファポリス)、『あかちゃん、はじめまして おゆびでさして あそぼうブック』(教育画劇)、『ちっちゃなサリーはみていたよ』(岩崎書店)など児童書・絵本の翻訳多数。

作品紹介

難民になったねこ クンクーシュ
難民になったねこ クンクーシュの試し読みができます!
作:マイン・ヴェンチューラ
絵:ベディ・グオ
監修:ヤズミン・サイキア
訳:中井 はるの
出版社:かもがわ出版
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