みえた!きょうりゅうのせかい みえた!きょうりゅうのせかい
作: サラ・ハースト 絵: ルーシー・クリップス  出版社: くもん出版
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4世代の女の子の暮らしを描く

───『そらはあおくて』の制作に取りかかったのはいつからですか?

本当は、草案をいただいたときにすぐにでも描き始めたかったのですが、当面のエッセイの仕事が終わるまでは取りかかることができず、本が出来上がる10ヶ月くらい前から取りかかりました。実際の制作期間は約8ヶ月です。

───最初は、どんなことから取りかかりましたか?

訳文をページごとに割り振り、どのページに何を描こう?と、絵コンテ的なものを作るところから始めました。出来上がったものをなかがわさんと編集者さんにお見せして、アドバイスをいただいて、そのあとに大まかなラフを描いていきました。


訳文を貼付けたラフ絵。


女の子(お母さんの小さい頃)が、そのお母さんにベッドで絵本を読んでもらっている場面。

ありがたいことに、シャーロット・ゾロトウさんのエージェントと、出版社さんとの間で、舞台設定も時代も自由に変えていいというお話があったそうです。
舞台を日本にしてもいいし、どの時代設定にしてもいい、自由に変えていいよと言ってくださって。日本を舞台に描くことも一瞬考えたんですけど、原書の世界観もありますから、舞台はアメリカのままで、年代は今の5歳とそのママくらいの年齢に設定し直そうと思いました。

今の5歳の子のママが仮に35歳くらいと設定すると、ママの子ども時代は80年代後半かなあと……。わたし自身は41歳で出産しているので、子ども時代は70年代ですけど、今のママの年齢にあわせて描くことで、少しでも幅広い世代に読んでもらえたらいいなと。
いざ描き出してみると、80年代後半と現代はそんなに変わらないので、違いを表現するのは難しかったです。


「ねるまえには、おかあさんの おかあさんが あかりを けしに きてくれた。おやすみって だきしめてもらったわ」(『そらはあおくて』より)

───室内のインテリアや、服装にそれぞれの時代を感じます。小さい頃好きだったワンピースやお布団の柄を思い出しました!

壁紙や衣料品の柄・模様を描くのが大好きなので、当時のインテリアや流行を調べて描くのはとても楽しかったです。
自分が小さい頃のアルバムを見直して、ポーズを参考にしたりもしました。


右のパフェを目の前にした女の子のポーズは……。


制作中にアルバムを見返し、ご自身の小さい頃のポーズを参考に。

───可愛いですねえ。娘さんを参考にした絵はありますか?

アルバムを持っているポーズを描かせてもらったり、娘にもよく協力してもらいました。
ソファーのクッションや、窓辺の木の置物など、背景にはうちにあるものも描き込んでいます。木の置物は、鳴子のこけし職人さんが作ったクリスマスツリーなんですよ。こけしを作るのと同じ、ろくろで作られています。

───わぁ! 松ぼっくりと並んでいるのも一緒ですね……!


(『そらはあおくて』より)


杉浦さんのおうちの窓辺に飾られた、木の置物と松ぼっくり。

ラフをなかがわさんにお見せしたときに、「絵だけで女の子の性格の違いがわかるといいわね」とコメントをいただいて、内向的な子やおてんばな子など、なるべく意識しながら描きました。
人形も、当初は小道具として描いていたんですけど、なかがわさんに「人形はこの子たちの未来の子どもの象徴」と言われてからは、人形を描く意識も変わりました。

膨大な資料を集め、1冊の制作ノートに

───4世代に渡る場面を描くにあたって、ご苦労はありましたか。

世代ごとに30年ずつ遡っていくので、場面は1980年代後半、1950年代後半、1920年代後半となるのですが……。それぞれの時代をなるべくちゃんと描くために、資料をかなり集めました。


資料を集めた、分厚い制作ノート!

───すごい分厚さですね! このようなノートを、本作りのたびに作るんですか?

毎回作ります。これが好きなんです。楽しくて、ノート作りにいつも夢中になっちゃいます。今回は特に資料が多かったので、用紙が足りずに、紙を糊で貼ってページを足していったらすごく分厚くなって(笑)。
絵本に描く植物や鳥にもこだわって、その季節にアメリカで咲く花や、小鳥についても調べました。

家庭のインテリアは、当時の最新のものより、少し古いデザインを引きずっていたりするので、ちょっと前の時代も含めて調べました。例えば、80年代後半の場面では、80年代初頭のインテリアを調べて描いたりしていました。


1920年代は一般家庭の写真が少なく、探すのに苦労したそう。

───どのように調べたんですか?

時代が古くなるにつれて一般庶民の風俗を本で調べるのは限界があって……、インターネットでアメリカの一般家庭のアルバムを大量に見ました。古いアルバムをアーカイブして、インターネット上にアップしている人たちがたくさんいるんですよ。様々な英単語を検索サイトに打ち込み、服装やインテリア、食卓の風景、人形やドールハウスなどを見て、大量にプリントアウトして、ノートに貼付けていきました。

乗り物からお買い物へ。制作秘話

───それぞれの時代を描くとき、特に難しかったところはありますか?

そうですね……。実は、はじめにいただいた訳は「こんなお店でお買い物していたのよ」ではなく、「こんな車に乗っていたのよ」だったんです。
原文では、車から遡って最後は馬車になるんですが、絵コンテを作ったとき、1920年代後半の設定で馬車を描いたら、この時代はもう車が走っています、と指摘されたんです。
このままの設定した時代だと馬車が描けない。かといって、年代で車の種類を描き分けるのもどうかという話になり、ここで「変えましょう」となかがわさんからご提案があったんです。


当初、馬車を描くつもりで描かれたラフ。

───原書の設定とは時代がずれることになるんですね。


原書『THE SKY WAS BLUE』(1963年刊行)


(原書『THE SKY WAS BLUE』より)

はい。実際にはわたしは制作が終わるまで原書を見なかったので、見比べたわけではないのですが……。でも、せっかくだから杉浦さんのイラストが生きる楽しい場面に変えたらどうか、と、なかがわさんが仰って「こんな おみせで おかいものを したの」という訳文にしてくださいました。

───乗り物の場面から、お買い物の場面になったのですね。


馬車が描かれた場面(原書『THE SKY WAS BLUE』より)。


馬車から変わった場面。「ひいおばあちゃんが こどものころは こんな おみせで おかいものを したの」(『そらはあおくて』より)

これが馬車から変わった、1920年代の買い物の場面です。
英語圏ではおなじみの「グロサリーストア」と呼ばれるお店で、缶詰などの食料品や野菜や果物、石鹸などの日用雑貨が対面式で売られています。

───年代をここまで詳しく調べて、描き分けていたなんて……びっくりしました。

おはなしに惚れ込んだ分、プレッシャーも大きかったんですね。資料を集めまくる一方で、なかなか絵が描けず、制作中はけっこう苦しみました。
慣れているイラストエッセイとは全然スピード感が違って、例えば普段141ページを書き文字も含めて8ヶ月間で描いているのに、絵本は32ページしかなくて、絵だけなのに同じ8ヶ月間がかかるんですから。
1人で絵本に向き合って、ああでもないこうでもないと描き直したり、作品を掘り下げていくのは、孤独で、自分を試されるような時間でした。

───逆に、気持ちよく描けたところはありますか。

色塗りの段階に入ると、すごく楽しかったです。色塗りはどんな仕事でも一番好きなんです。どのページも楽しかったですが、やっぱり一番描きたかった、寝転がっている女の子と青空の場面でしょうか。
モノクロ写真のページは、どうやって強弱や表情を出そうかなぁ……とおっかなびっくりでしたけど、それも楽しかったです。同じセピア調でもいくつかの色を塗り分けて描いているんですよ。

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杉浦さやか(スギウラサヤカ)

  • 1971年生まれ。日本大学藝術学部美術学科卒業。在学中より、フリーのイラストレーターとして活動。イラストエッセイの著作や、雑誌などの連載多数。絵本作品に『ちいちゃんのたからもの』『りらのひみつのへや』(共に、学研)や、『あかずきん』(白泉社)、『そらはあおくて』(あすなろ書房)など。児童書の挿絵に『うちはお人形の修理屋さん』『お人形屋さんに来たネコ』(共に、徳間書店)がある。

作品紹介

そらはあおくて
そらはあおくての試し読みができます!
文:シャーロット・ゾロトウ
訳:なかがわ ちひろ
絵:杉浦 さやか
出版社:あすなろ書房
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