絵本アプリ「こえほん」で人気のデジタル絵本『だっこ だっこ』が、昨年12月、紙の絵本として出版されました。そんなニュースに、「こえほん」ていったいどんなもの?なぜデジタルから紙の絵本に?どんな作品なんだろう?と、絵本ナビスタッフも興味津々。『だっこ だっこ』作者の古賀ようこさんと、デジタル版の制作と出版までを担当されたアイフリークの中尾さんと永田さんにお話を伺いました!
●家族みんなの声でつくる「こえほん」
───『だっこ だっこ』は、モバイル端末で絵本を読めるアプリ「こえほん」で楽しめるデジタル絵本として誕生したと伺っています。最初に「こえほん」がどんなものなのか教えていただけますか?
中尾:「こえほん」は、昔話や童話とオリジナル作品、250作品以上が楽しめる絵本アプリとして2011年2月にリリースしました。
もともと、CREPOS(クリポス)というクリエイター支援サイトを運営していまして、イラストやオリジナルの絵本を投稿できるサイトなんですが、そこに投稿されているクリエイターさんのいい作品を、デジタル絵本として世の中に出していきたいと思っていたんです。それと、子育てに関われるアプリが作りたいという社内の声とも合わさって、「こえほん」は誕生しました。
機能として大きく2つあります。ひとつは「聞く」ことなんですが、字の読めない小さいお子さんでも、見本の音声を再生することでお話を楽しめます。もうひとつ、「録る」の機能は、アプリに録音機能がありまして、録音した声で絵本を楽しめるというのが特徴なんです。家族の声でつくった紙芝居のように、絵本を楽しむことができますし、録音した絵本を簡単にYouTubeに投稿できる機能もあって、他の人と共有することもできるんですよ。
───絵本ナビスタッフでも、実際に家族で『だっこ だっこ』を「こえほん」上で録音してみました。スタッフの家族で2歳の女の子なんですが、実際録音してみて感動しました!絵本に声が残せるというのはすごく思い出になりますね。
永田:ありがとうございます。元々、お父さんお母さんが読んだ声を録音して、お子さんに聞かせることを想定した機能だったんですが、こういう風に、お子さんが読まれているケースも多いですね。
───成長の記録にもなりますよね。
永田:そうなんです。言葉を覚える練習として使う方もいるみたいですね。
●100万回読まれたデジタル絵本
だっこの嬉しさ、あたたかさが伝わる絵本です。言葉のリズムも楽しく、いろんな動物が登場するため、小さなお子さんとのコミュニケーションに最適です。 大人が読んでも、どこか懐かしい気持ちで楽しめる、優しい作品となっています。 この「だっこ だっこ」は、古賀ようこさんによるオリジナル絵本で、クリエーター支援サイトCREPOSにて開催された「ぽかぽか絵本コンテスト」最優秀賞受賞作品です。
───「こえほん」は、昔話や童話以外にオリジナルの絵本もたくさんの作品がありますよね。『だっこ だっこ』はどのような経緯で「こえほん」の作品になったんですか?
中尾:2010年に、サイト上で絵本コンテストを開催したんです。『だっこ だっこ』はそのときの最優秀賞作品でした。172作品応募があったんですが、審査で何度も応募作品を読む中で、古賀さんの『だっこ だっこ』はシンプルでも、何回でも繰り返し読める感覚がありました。読むたびに良さがあって普遍的だなと。そこから最優秀賞作品に決定しました。その後、「こえほん」のアプリの企画が出たときに、受賞作の『だっこ だっこ』をデジタル絵本として作品化しようということになったんです。
───受賞されたときはどんなお気持ちでしたか?
古賀:嬉しかったです。応募する前に、作ったラフを周囲の人に見てもらって反応を聞いていたんですが、小さい子どもがいる方に「これ、いいかもしれないよ」と言ってもらって、「よし、これで応募してみよう」と決めて。それが実際に受賞したので驚きました。
───デジタル絵本として完成するまでに、大変だったことはありますか?
中尾:デジタル絵本はBGMやサンプル音声が入っていたりしますが、『だっこ だっこ』の、お話を読む見本となる音声をどうするかという部分は悩みましたね。子どもの声にするか、お母さんやお父さんをイメージする声にするかなど。見本は結局お母さんの声で入れることになったんですが、会社の女性のスタッフにお願いして読んでもらったんですよ(笑)作品によっては、音声を作成するソフトで声を作っているものもあるんですが、やはり「お母さん」を感じさせる声がいいなと。BGMも、『だっこ だっこ』は何回も読めるようにこだわっています。通常、物語絵本だと、盛り上がるところや悲しいシーンなどお話の展開に合わせて曲を変えるものなんですが、『だっこ だっこ』はお話を通して1曲なので、繰りかえしても飽きない心地良い音を選んでいます。
───そうやって絵本の画像と音声が組み合わされて「こえほん」の作品として完成するんですね!実際にデジタル絵本になって、反響はいかがでしたか?
古賀:ユーザーの方で、お子さんの声で録音した『だっこ だっこ』をYouTubeに投稿している方がたくさんいらっしゃるんです。年齢を書いて投稿されているものもあって。たどたどしかったり、元気いっぱいだったり、ちょっと恥ずかしそうだったり。いろんな子どもの声で『だっこ だっこ』が読まれていて、その動画を観たときは感慨深かったですね。後ろで家族の声がしたり、楽しそうな家の雰囲気が伝わってくるんです。『だっこ だっこ』がどんな風に読まれているかが分かって、とても嬉しかったです。
───実際に動画を観ると、子どもたちが「だっこ だっこ」と読んでいる声が本当に可愛いくて。家族みんなで楽しんでいるのが分かりますね。
中尾:「こえほん」上のデジタル絵本の中でも『だっこ だっこ』は、読まれた回数が非常に多かったんです。100万回以上読まれているということが分かっているんですよ。
───100万回って、すごい数ですよね!書籍版の帯にも「100万回読まれた」とあって目をひきますが、デジタルの絵本が100万回読まれるというのはどういうことなんですか?
中尾:この数字は、作品の最後のページが見られた回数なんです。「こえほん」のデジタル絵本は、それを作品が読まれた回数のデータとして集計しているんですが、『だっこ だっこ』は100万回以上カウントされています。たくさんの方が繰り返し読んでくれているということでもあります。
───読んだ回数でユーザーさんの反応が分かるというのは、デジタル絵本ならではですね。『だっこ だっこ』の人気が伺えます。