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写真・文: 森上信夫  出版社: フレーベル館 フレーベル館の特集ページがあります!
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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  イギリスの国民的作家が愛情を込めて描く両親の実話『エセルとアーネスト ふたりの物語』レイモンド・ブリッグズさんインタビュー

絵本の翻訳者、きたがわしずえさんへもお話を伺いました!


訳者・きたがわしずえさん

───どのようなきっかけでこの作品を翻訳することになったのですか?

この本の前に翻訳した『3人の王子』(著:バーリー・ドハティ 絵:かわ こうせい 出版社:バベルプレス)が、2018年10月に出版されました。想像以上の出来栄えと反響に胸をなでおろしている間もなく、当時の担当者から次の翻訳候補としてこの『エセルとアーネスト』が届きました。
内容の深い、戦時下のイギリス人夫婦の実話で、読み進めていくうちに歴史書が好きな私は引き込まれました。グラフィックノベルははじめてですし、104ページの大作も魅力的です。夫に相談したところ、「おもしろそうだね。協力するから、やるべきだよ」と言われました。協力するとは、翻訳中は自分が家事、まかないをするということでしょう。強い味方と応援を約束されれば、やるしかありませんよね(笑)。

───作品からはどのようなメッセージを受けられましたか?

ブリッグズの他の作品で、原爆をテーマにした『風が吹くとき』を以前読んでいましたが、あのときの主人公夫婦はエセルとアーネストがモデルではないのかと思えてきました。 あまり先の心配をせず、日々うまく、平穏に暮らせればよしとしている夫婦は、戦争や原爆投下という状況下でもあまり深刻さを感じませません。『エセルとアーネスト』の物語もそうですね。ブリッグズは皮肉をこめて、あえてそのように描いたのかもしれません。 第二次世界大戦は全世界がまき込まれ、多くの人が死に飢えに苦しみました。当然ブリッグズの心の中には反戦の思いが根深いでしょう。私の世代はまだ戦争の影響が色濃くあり、豊かではない時代に育ちましたから、戦争が物語の大きな比重を占める『エセルとアーネスト』に出合えたことは偶然とは思えず幸せなことでした。


戦時中のシェルター(防空壕)

───エセルとアーネスト夫婦についてどんな風に思われましたか?

翻訳が順調に進み、予定の締め切り日まであと半分という折り返し地点にさしかかった4月半ば、夫が突然他界しました。力強いサポーターを失ったばかりでなく、私は一人ぼっちになったのです。今になってみますと、残った翻訳の責務がなかったら後を追っていたのではないかというぐらい、悲しい出来事でした。 『エセルとアーネスト』と私たち夫婦は、とても共通点があると思いました。私も息子が一人、恋に落ち終生連れ合いひとすじに愛し合いました。エセルは歯に衣を着せず自分の意見をしっかり語り、その夫アーネストは、エセルを思いやり、常に喜ばせてやりたいとエセルの希望をできるだけかなえてやろうとする。アーネストは新聞を手ばなさず、エセルに世界情勢を語る。二人のあいだはトーク、トークで、いつまでも新婚夫婦のようです。二人一緒のときが何より安らぐ。翻訳を進めていくうちに、そのように思えてきました。 私の夫も友であり、気の合う同士でした。夫の死で心の支えを失いましたので、エセルに先立たれたアーネストの気持ちが痛いほどわかります。

───舞台が20世紀のイギリスということで難しさはありましたか。

イギリス人と日本人はよく似ている国民性のように感じます。島国だから気質が近いのでしょうか。まず礼儀正しい。責任感が強くまじめで、派手さがない。イギリスはとても美しい国です。何度でも訪れたい国イギリス。私のベストワンです。私も物見遊山ではありますが、数回訪れました。
この本を訳すにあたり、少しだけ私の味方になってくれる人が現れました。イギリスの政治家、ウィンストン・チャーチルです。私は以前、チャーチルの名言集を読んでいたのです。チャーチルに興味を持ったのは、広島の原爆投下にチャーチルが関わっていたと聞いたからです。そういった興味から関連書を読んでいたことは、翻訳する上で多いに役立ちました。

───日本との違いは何か感じましたか。

イギリスのこの時代の生活は、日本より15年は先をいっていたのではないでしょうか。電化製品が日本の家庭に普及するのは戦後15年ぐらいたってからでしょう。イギリスの生活ぶりがわかってくると、ますます翻訳が楽しくなってきました。

───絵本ナビ読者へメッセージをお願いします。

『エセルとアーネスト ふたりの物語』は、とても大変な時代だったにもかかわらず、苦労より楽しい毎日を送ったように描かれていて、翻訳していて、随分のんきな夫婦だな、お気楽夫婦だなと言いたいくらいのときもありました。それぐらい、普通に生きた方たちです。
戦争の中の暮らしですから、60代・70代の、戦争が身近だった方に響く作品だろうと思います。しかし、ナチス・ドイツの台頭、イギリスを含む連合国に敗れてから劣勢が続き、やがて終戦を迎えるという流れは、小学校高学年なら理解できると思います。戦争の悲劇を風化させないためにも、ぜひ他国の戦時中の生活も若い方々に知っておいてもらいたいです。その意味でもこの本はお薦めです。

───アニメーション映画をご覧になっていかがでしたか。

映画は、ブリッグズの仕事場の作業風景から始まります。デスクの上にはたくさんの画材が並べてあり、このデスクの上で『スノーマン』や『さむがりやのサンタ』といった作品が生まれたのだと、感慨もひとしお。ブリッグズがエセルとアーネストを丁寧に描いています。お顔は穏やかですが、作業中の彼の目は真剣そのもの。助手も使わず、ひとりでこの量のデッサンを描いたことには驚き。さすが、プロフェッショナル。ますますファンになりました。
観終わったあとは力が抜け、動くことも、言葉もなく、ただじっと座って、余韻にひたっておりました。
映画は音楽も流れますし、ブリッグズの大ファンだというポール・マッカートニーが書き下ろしたエンディング曲が素敵で、絵本とはまた違う楽しみがあると思います。

───ありがとうございました!

映画「エセルとアーネスト ふたりの物語」2019年9月28日より全国順次公開!

『エセルとアーネスト ふたりの物語』
9月28日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー


© Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A., The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016

監督:ロジャー・メインウッド 
原作:『エセルとアーネスト ふたりの物語』(作:レイモンド・ブリッグズ/出版社:バベルプレス)
音楽:カール・デイヴィス 
エンディング曲:ポール・マッカートニー
声の出演:ブレンダ・ブレッシン/ジム・ブロードベント/ルーク・トレッダウェイ
原題:Ethel & Ernest
2016年/94分/カラー/ドルビー・デジタル/ヴィスタサイズ/イギリス・ルクセンブルク/
日本語字幕:斎藤敦子/後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:チャイルド・フィルム/ムヴィオラ

映画公式ページはこちら
https://child-film.com/ethelandernest/



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レイモンド・ブリッグズ

  • 1934年イギリス ロンドンで生まれる。『さむがりやのサンタ』(福音館書店刊)でケイト・グリーナウェイ賞、『スノーマン』(日本では評論社から『ゆきだるま』のタイトルで出版)でフランシス・ウィリアムズ・イラストレーション賞を受賞。「スノーマン」「さむがりやのサンタ」はビデオ化されている。

作品紹介

エセルとアーネスト ふたりの物語
作:レイモンド・ブリッグズ
訳:きたがわ しずえ
出版社:バベルプレス
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