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インタビュー

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2020.04.09

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地下の世界はワンダーランド! 『ちかてつ もぐらごう』で出発だ!『ちかてつ もぐらごう』大森裕子さんインタビュー

『へんなかお』や『なにからできているでしょーか?』、『おすしのずかん』にはじまる「ずかんシリーズ」(すべて白泉社)など、数々の人気絵本を生み出している、大森裕子さん。動物から美味しい食べ物まで、いろいろなテーマを描き分ける大森さんの中で、初ののりもの絵本となる『ちかてつ もぐらごう』(交通新聞社)が現在、好評発売中です。
どうしてのりものの絵本を描こうと思ったのか? のりもの絵本を描くことで感じた新たな発見と苦労とは……? 大森さんのご自宅にお邪魔してお話を伺いました。

  • ちかてつ もぐらごう

    出版社からの内容紹介

    地下の世界はワンダーランド!!
    "ちかてつ もぐらごう"で出発だ〜‼

    モグラたちが運行する"ちかてつもぐらごう"で、つちのしたツアーに動物たちが出かけます。
    地下には、野菜の収穫・化石博物館見学・根っこのアスレチックなど、ワクワクすることがたくさん!

    人気絵本作家・大森裕子氏が手掛ける新作、でんしゃのおはなし絵本です。
    表情豊かな動物やオリジナリティあふれる電車のデザイン、駅弁、電車のすれ違いシーンなど、
    電車が好きなお子さまがグッとくるポイントがたくさん盛り込まれています。
    さぁ、ワクワク・ドキドキの地下ツアーに出かけましょう!!

この書籍を作った人

大森 裕子

大森 裕子 (おおもりひろこ)

1974年神奈川県生まれ。東京藝術大学大学院在学中よりフリーランスで活動をはじめる。主な絵本に、『おすしのずかん』『パンのずかん』『ねこのずかん』「へんなえほん」シリーズ(白泉社)、「よこしまくん」シリーズ(偕成社)、『ぼく、あめふりお』(教育画劇)、『チュンとカァのじゃんけんぽん!』(PHP研究所)、『どうぶつまねっこたいそう』(交通新聞社)など多数。

「電車の絵本を作ってください」と言われて、声にならない悲鳴をあげました(笑)

───『ちかてつ もぐらごう』は、ご自身初となるのりもの絵本ですが、乗客として動物たちがたくさん出てくるところや、美味しそうな駅弁、みずみずしいとれたて野菜など、大森さんの絵本の魅力が随所にちりばめられた作品だと思いました。以前から、のりものの絵本を作りたいと思われていたのですか?

息子が2人いるのですが、2人とも子どもの頃に熱烈な鉄道ファンというわけではなかったので、私も男の子のママの中では鉄道の知識は少ない方でした。
今回、のりもの絵本を作ることになったきっかけは、編集者さんから「電車の絵本を作ってください」と依頼されたからなのです。

───『ちかてつ もぐらごう』の出版社である交通新聞社さんは、「JR時刻表」や「交通新聞」など、旅と鉄道に関わる出版物を多く出している出版社さんですよね。そこからの依頼ということはとてもプレッシャーだったのではないですか?

そうなんです。ご依頼をいただいたときは「ギャー!」と、声にならない悲鳴を上げました (笑)。でも、知らないジャンルだからこそ、調べてみたら面白い発見があるかもしれない。
そこで、絵本を描く前に、自分が鉄道好きな子の気持ちになってみようと思い、鉄道好きの息子の友だちに、話を聞くことにしました。

───どんなことを聞いたのですか?

鉄道のどんな所が好きなのか、どういう風に好きなのか教えてもらったんです。
知らないながらに、電車に乗って旅をするのが好きな人を「乗り鉄」、電車を撮影することが好きな人を「撮り鉄」というくらいは知っていたのですが、鉄道好きな子の話を聞くと、「顔(電車の正面)が好き」「カラーリングが好き」「時刻表を見るのが好き」「電車が発着するときのメロディが好き」「路線図を見るのが好き」「電車同士がすれ違うところが好き」「貨物線が好き」「景色を見るのが好き」などなど……。好きなところが本当に多岐に渡っていて、ビックリしました。

─── 一口に「鉄道好き」と言っても、好きな部分がいろいろあるんですね。

話を聞いているうちに、段々と自分が子どもの頃、家族旅行で電車に乗って出かけるのが楽しかったことを思い出しました。まず、駅弁を買って食べるところからワクワクするんです……。

───駅弁は旅の醍醐味ですよね。

それと、座席が向かい合わせになっている車両に、父と母と兄と4人で座ったことが嬉しかったとか、温泉地へ行ったときに温泉で泳いだとか……。そういう小さな出来事を、鮮明に覚えていることに気づいたんです。なので、絵本でも小さな楽しさをいっぱい詰め込んだ内容にしようと思いました。

───それで「もぐらごう」が生まれたのですね。普通の地下鉄ではなく、モチーフをモグラにしたのはどうしてですか?

正統派の地下鉄のデザインも、もちろん考えたのですが、それよりもおはなしの世界にもぐって、迷路をしたり、「かせきはくぶつかん」を見学したりする方が楽しそうだと思ったんです。
そういう楽しい地下鉄は、人間よりも動物が乗る地下鉄の方が向いていると思いました。……でも、一番は野菜の収穫をする場面を地下から描きたかったからですね。

───「はたけのした」での、収穫の場面ですね。野菜を土からぬく作品は多いですが、まさか、地下に向かって野菜をぬくなんて、すごく斬新だと思いました。

ここは、子どもが小さい頃、よく行った、芋ほりを思い出をしながら描きました。収穫ももちろん楽しいですが、家に帰って、掘ってきたお芋を蒸かしたり、スイートポテトにする工程がまた、楽しいんですよね。なので、「もぐらごう」でもちゃんと料理のシーンまで描こうと思いました。

───「もぐらごう」の初期の頃のデザインラフ(下絵)も拝見させていただいていますが、正面にドリルがついていたり、いろいろ試行錯誤を経て、今のフォルムになっていることが分かります。モグラ以外にも電車のラフがありますが、これはすれ違いの場面に出てくる電車たちですね。

そうです。電車好きの子に聞くと、やはりすれちがいは、電車の醍醐味なんだそうです。ここの電車は、実際に走っている電車の名前を参考に、カラーリングも似せているんです。

───そうなんですか?

例えば「リゾート かたつむり」は「リゾートしらかみ」、「きらきら みみず」は「きらきらうえつ」、「とっきゅう カブート」は「特急ラピート」がモデルです。

すれ違いの場面

───実際の電車と比べてみると、カラーリングが似ていて、本当に面白いですね。地下にいる生き物が電車になっているのもユニークですし、いろいろな電車がすれ違う場面は見ごたえ抜群です。

すれ違う場面、鉄道好きの子の間でも人気があるんですよね。あと、鉄道関係で働いている人への憧れもあるということを聞いて、物語の中に、働いているモグラたちの姿を多く入れるようにしました。

───見返しの部分に、名前と共にお仕事が載っているので、どのモグラがどこで働いているのか、発見する楽しみがあるのも、子どもはワクワクしますよね。

私も、電車の絵本を描かなければ知らなかった職業がたくさんありました。「保線係員」や「車体清掃員」など、ストーリーのメインでない部分でもお仕事をしているモグラがいるので、ぜひ見つけてみてください。

───いろんな人に支えられて鉄道は運行されていることを、この絵本を通して知ることができますね。

そうですね、『ちかてつ もぐらごう』については私自身、いろんな方たちに支えていただいてできた作品だという思いが強いですね。

───それは、息子さんのお友だちの協力があったからですか?

もちろんそれもありますが、出版社の方たちがとても鉄道に詳しい方たちばかりでしたので、今までの絵本とは違った視点でチェックしてもらいました。
例えば、「もぐらごう」の車輪は前後ひとつずつの方がいい、窓やドアの数、路線図とすれ違いの場面は整合性を取るべきか……などなど。

───それはすごい……。

最初の頃、「はたけのした」で収穫した野菜がひとつ、線路に落ちている場面を描いていたんです。そうしたら「線路に物を落とすのは危ないからやめてください」と言われて、ビックリ。
絶対安全運転が大原則だということで、野菜の荷台の上から、ネットをかけて、「絶対に落ちません!」と安全を強調しました(笑)。

───出版社さん独自のこだわりは、お話を聞かないと分からない部分ですね。ほかに、制作の中で大変だったこと、楽しかったことはありますか?

やはり、食べ物が出てくるところは楽しかったですね。駅弁も個人的にすごく気に入っています。

───「ちそうサンドイッチ」に「もぐもぐべんとう」「もぐらごうべんとう」それも栄養バランスが整っていて、美味しそう! 現実にもあったら、買いたいです。あと、各駅で開催されているスタンプラリーも、すごくやってみたいと思いました。

スタンプラリーは今や鉄道の一大イベントですよね。

───後ろの見返し部分にそれぞれの駅のスタンプが、スタンプラリーカードに押してあるのも、一緒に「もぐらごう」で旅をした気分になれて嬉しいです。このスタンプを使ったスタンプラリーもどこか駅でやってほしいです。

そうですね。今回、電車が好きな子にはもちろん届けたいと思いましたが、それだけでなく、動物が好きな子、お出かけするのが好きな子、食べるのが好きな子、いろいろな子が楽しめる内容になるよう、おはなしを考えました。
なので、男女問わず、多くのお子さんに手に取ってもらえたら嬉しいですね。

子どもの頃、描いた絵を大切にしています。

───『ちかてつ もぐらごう』のおはなしの中で、電車好きな子に取材されたと言っていましたが、大森さんご自身は、子どもの頃、熱中したものはありましたか?

そうですね。子どもの頃はとにかく絵を描くのが好きでした。
これは美大に通っていたときに作ったファイルなんですが、2歳くらいから20歳くらいまでの私の作品がまとめられているものです。

───小さい頃の絵が残っているのですね。あ、絵本もある!

そうなのです。はじめて絵本を描いたのは4歳くらいのときでした。これは「オニの絵本」。このとき、自分の名前の「子」の字が漢字で書けるようになって、ひらがなの「こ」も全部「子」にして書いているんです。

───「ど子(こ)だ ど子(こ)だ」と書いてあるのがかわいいですね。小さい頃からの作品を、こんなにきちんとまとめてあるなんて、すごいですね。

美大生のとき、将来に悩んでいた時期がありました。
受験勉強を頑張って、大学に入ったのは良いけれど、そこで目的を見失ってしまいました。自分が何を作りたいのか分からなくなって……。そのときに実家に帰ったら、子どもの頃の作品が残っていて。見返していると熱いものがこみあげてきて、気づくとファイリングしていました。今見ると、子どもの頃から絵本を作っているんですよね。

───絵本作家になりたいと、小さい頃から思っていたのですか?

当時はまだ思っていなかったと思います。絵を描くのは好きだったけれど、中学高校とバスケ部で、美術の授業くらいでしか、作品を作っていませんでした。
絵本を意識するきっかけをくれたのは、大学生協で売っていた絵本。新しい作品とかではなく、子どもの頃に読んでいた絵本との再会。あと、当時、大学院の担当教授の一言でした。

───教授の一言とは……?

私、大学院では現代アートのようなものを制作していたのですが、イラストを描く仕事も知り合いづてにいくつか請けていたんです。詩集の挿絵を描いたり、冊子の表紙を描いたり。それを見て、教授が「お前はもう、院での作品はいいから、絵本を描け」って。それを聞いて腑に落ちたというか、何か納得してしまって……。それからずっとフリーで絵の仕事を続けています。

───すごく先見の明のあった教授ですね。美大のときの経験が、イラストや絵本の仕事に生かされていることも多いですか?

実は美大で専攻していた油絵が、最後までずっと得意でなくて、あまり画材とかで使うことはないんですよ。私はもっとパリッ、ピシッと固くエッジをきかせた線で描きたいのだけど、油絵はキャンパスも波打つし、絵の具もやわらかく、扱いづらいと感じていました。イラストや絵本の仕事のときは、色鉛筆やコラージュ、あとパソコンを使って彩色しています。

───『ちかてつ もぐらごう』でも、色鉛筆やパソコンを使って彩色しているのですか?

そうです。原画を見ていただくと、よく分かると思います。

───なるほど! パソコンで彩色する部分は色を塗っていないんですね。

紙と鉛筆の質感は大好きで得意な技法なので、使うことが多いですが、常に新しい画材にチャレンジする気持ちはあるんです。水彩は『ちかてつ もぐらごう』の前に描いた、交通新聞社さんの『どうぶつまねっこたいそう』に使おうと思ってチャレンジしたんです。
でも、やっぱり難しくて、オイルパステルに変更しました。でも、描きたい絵が描けるように、画材はこれからもいろいろチャレンジしていこうと思います。

  • どうぶつまねっこたいそう

    出版社からの内容紹介

    せんせいは どうぶつたち!
    おうちは たいそうきょうしつだ!!

    かわいらしくてダイナミックな動物の動きをまねすることで、就学前に身につけたい基礎体力を育みます。
    巻末では、スポーツ科学の専門家による、それぞれの動きのねらいや効能を解説します。
    楽しくて役に立つ絵本の登場です。

    ◇収録された動き
    ・くまあるき
    ・ぺんぎんあるき
    ・わにあるき
    ・かにばしり
    ・かえるじゃんぷ
    ・かんがるーじゃんぷ
    ・くもあるき
    ・ねころがり

───『どうぶつまねっこたいそう』は、『ちかてつ もぐらごう』と同じ交通新聞社さんから出版されていますが、のりものが出てきませんね。

そうですね(笑)。このときは、絵本を見て親子で一緒に体を動かすおはなしというテーマがすでにあって、スポーツ科学の専門家の先生方が考えられた、いろいろなどうぶつまねっこたいそうがありました。その中から、私がいくつか選んで構成し、絵本にしました。

───「くまあるき」や「ぺんぎんあるき」、「かにばしり」など、名前も動きもとってもかわいいですね。絵本の中の動物と子どもたちと一緒に、体を動かしたくなります。

この絵本ができたとき、次男が小学4年生だったので、一緒に動いてみました。「次はかえるじゃんぷね!」「次はくもあるき!」と部屋の端から端まで何往復もしてヘトヘトになりました……(苦笑)。
体もすごく使いますし、子どもたちも動物の動きを真似っこして楽しめるので、ぜひ、親子で読んで遊んでもらいたいです。

子どもの「好き」を見守っていける大人が増えますように。

───おはなしを伺っていると、息子さんととても仲が良いのが分かります。絵本を作るきっかけもお子さんとの関わりだと伺いました。

『へんなかお』(白泉社)は、次男がやっていたことがベースになっています。2歳くらいのとき、彼は変な顔を、気持ちを伝える手段としてやっていたんですよ。挨拶も変な顔、美味しいものを食べたときも変な顔、嬉しいときも変な顔。添い寝をしているときに「好きだよ」って言うと、言葉は返ってこないけど、変な顔(笑)。この子は、変な顔をコミュニケーションとして使っているんだと分かったとき、すごく面白いなと。そういう、子どもの言動や視点が、絵本を作るきっかけになったことは多いですね。

───『ちかてつ もぐらごう』も、息子さんのお友だちへの取材が、アイディアを生み出すきっかけになっていますよね。

そうです。あと、その子のお母さんが「息子があんなに目をキラキラさせて、電車のことを聴いてもらって嬉しいという姿を久しぶりに見ました」と、後で私に教えてくれました。
それを聞いて、好きなことの話をすること、誰かに聞いてもらうことはすごく嬉しいんだと改めて思いました。

───小学4年生くらいになると、自分の好きなことを周りに言うことが恥ずかしいと感じることもありますよね。

子どものときは純粋に、「電車が好き!」「虫が好き!」と言えるけれど、大きくなるにしたがって、大人の目とか、友だちの目とかで、「好き」を伝えづらくなりますよね。でも、「好き」って人生のエネルギーになると思うんです。
私も小さい頃からずっと「絵を描くのが好き」「物づくりが好き」と思っていて、それが今につながっています。子どもが好きなことを続けることも、親がそれを見守り続けることも、実際はとても難しいとは分かっているのですが、目をキラキラと輝かせて好きなことを語る姿を見守れるようになりたいと思いますね。

───これからもいろいろな絵本を作っていかれると思いますが、『ちかてつ もぐらごう』のように、新しいジャンルの絵本にチャレンジするとしたら、どんなテーマの作品を作りたいと思いますか?

そうですね……。まだアイディアを練っている段階ですが、少し大人向けのメッセージを込めた作品なんかも描いてみたいと思います。あと、おはなしのある作品を作るのが好きなので、ストーリー絵本は作っていきたいですね。

───大森さんの作品をこれからも楽しみに読んでいきたいと思います。今日はお話を伺わせていただき、ありがとうございました。

アトリエ探訪

大森裕子さんのアトリエを見せていただきました。

制作に使用する色鉛筆は、カラー別に分類して保管されています
小さくなった色鉛筆も大切にまとめられています あれ、後ろにいるのは……
大森家のチョビくんです!大森さんは大のねこ好きで、今は4匹のねこと暮らしています
茶トラのニィくんも出てきてくれました あと2匹は隠れてしまいました……

取材・文:木村春子
撮影:所靖子

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