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インタビュー

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2021.01.28

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かけることで美味しさ倍増! シズル感、満載の食べ物絵本 『かける』はらぺこめがねさんインタビュー

美味しい食べ物絵本が大好きな皆さん、お待たせいたしました! 美味しく美しく食べ物を描く、夫婦ユニット「はらぺこめがね」さんから、シズル感満載の絵本が届きました。その名も『かける』(佼成出版社)。
登場するのは、カレーライスにオムライス、ホットケーキにスパゲッティと上から何かをかけることで美味しさが倍増する料理たちです。絵本制作にあたって、実際に登場する料理を作ることはもちろん、今回は「器」にもこだわられたとか。「はらぺこめがね」の原田しんやさん、関かおりさんにお話を伺いました。

  • かける

    みどころ

    オムライスにはケチャップ、冷や奴にはお醤油、かき氷にはシロップ……。人気のイラストユニットによる、「かける」をテーマにした食べもの絵本です。リアルでシズル感たっぷりの絵とユニークな擬音語で、身近な料理がより一層おいしそうに見えてくる、食べもの絵本の新定番。「かける」は楽しい、「かける」はおいしい!

この書籍を作った人

はらぺこめがね

はらぺこめがね (はらぺこめがね)

2005年京都精華大学デザイン学科卒業後、グラフィックデザイナーを経て2008年にイラストレーターとして独立。2011年はらぺこめがねを結成。絵本に『フルーツポンチ』(ニジノ絵本屋)、『やきそばばんばん』(あかね書房)、『くだものさがしもの』(PHP研究所)、『かんぱい よっぱらい』(岩崎書店)、『みんなのおすし』(ポプラ社)、『にくのくに』(教育画劇)などがある。 また、「ごちそんぐDJの音楽」(DJみそしるとMCごはん)のジャケットアートを担当するなど「食べ物と人」をテーマに幅広く活動している。

器オーディションってなあに?

───まずはコチラの写真にご注目。色々な大きさ、形のお皿がずらーっと。これは一体なんなのでしょう?

原田:これは『かける』に登場する食べ物を載せた器たちです。

───この器が全部、絵本に登場しているんですか?

原田:はい。真ん中の青いお皿、これはカレーライスのお皿です。

そして、右側の女性の絵が描かれている絵皿、これはスパゲッティのお皿です。

──本当だ! 絵本に登場するお皿と同じですね。いつも、食べ物を載せるお皿を選んで描いているのですか?

関:絵本を描くとき、「オーディション」と銘打って、色々選ぶことは多いです。例えば『にくのくに』(教育画劇)を作ったときは、「肉オーディション」をしました。

──肉オーディション?

関:決まったページ数の中でどの肉料理を登場させるか、オーディションを行ったんです。鶏肉や豚肉など種類のバランスもあるし、調理方法もあまり偏ってはいけないし……。本当は焼き鳥やステーキ、あとハンバーグも登場させたかったけれど、他の肉料理とのバランスを考えて、泣く泣く落選にしました。

原田:ステーキが落選になったのは、ぼくがローストビーフの断面をどうしても描きたかったからでもあるんですよね。ローストビーフが出てくるんだったら、ステーキはなしだね……となって。

───どの肉料理がオーディションに通ったのか考えながら読むと、また違った面白さがありますね。今回「器オーディション」で選ばれた器たちは、元々お家にあった器なのでしょうか?

原田:普段から使っている器もありますし、『かける』用に買い求めたものもあります。「この料理にはこの器が合う!」と思って買ったけれど、いざ料理を載せてみるとあまりしっくりこなくて、使わなかった器もありますね。

───たこ焼きの器とラーメン丼ぶりは、ザ・定番という印象を受けました。これは新たに購入されたのですか?

原田:ラーメン丼ぶりは、陶器でなくメラミン素材のつるんとした感じが欲しかったので、購入しました。たこ焼きの器は家にあったものです。実はぼく、以前たこ焼き屋さんでアルバイトしていたことがあって、たこ焼きを焼くのが得意なんです。たこ焼き機ももちろん持っています。

───では、絵本に出てくるたこ焼きは買ったのではなく、原田さんお手製なんですか?

関:そうです。私、大阪出身なのでたこ焼きには一家言あるんですが、彼の作るたこ焼きはまん丸で中はトロッとして、美味しいんです。

原田:たこ焼きを焼くとき、いつも「食べたい!」って思いながら焼いているから、他の人が作るたこ焼きよりも気持ちがこもっていて、美味しくなるんだと思います(笑)。

───原田さんの作るたこ焼きが、食べたくなってきました(笑)。器を選ぶときに、特に悩んだ料理はありましたか?

関:意外と冷ややっこが難しかったですね。普段、家で冷ややっこを食べるとき、器をあまり意識していなかったので、どの器が冷ややっこにピッタリくるのか、色々試してもなかなかピンとこなくて……。最終的に庶民的な感じの器に落ち着きました。

『かける』はシズル感満載の絵本

───器の話からはじまりましたが、この『かける』という絵本は、どのように生まれたのですか?

関:おはなしのコンセプトは、編集者さんが提案してくれたんです。色々な料理に「かける」という、そのテーマが面白いと思ったことと、少し前から動きのある美味しい料理の絵本を作ってみたいと思っていたこともあって、おはなしの展開はとんとん拍子に進んでいきました。

原田:これが初期の頃のプロットですね。このときから、最初にかける場面が出てきて、その後、料理が登場するという構成は固まっていたと思います。あとは、「何を」「どの料理に」かけるかを決めていきましたね。

───プロットには、「粉チーズ ナポリタン ミートソース」や「シロップ かき氷」など今の絵本に登場する食べ物もすでに出てきていますね。

関:そのあたりの「かけるもの」と「料理」の組み合わせはあまり悩まなかった気がします。ケチャップをホットドッグにかけようか悩んだり、青のりをお好み焼きにかけようか悩んだり、そういう試行錯誤はありましたね。

原田:「牛乳をコーンフレークにかける」、「刻みのりをざるそばにかける」という案も出たのですが、他の料理とのバランスを考えてボツにしました。最後のオチも、このときにはすでに決まっていましたね。

───先程、たこ焼きを作られたということで、ほかの料理も実際に作ったんですか?

原田:はい。ぼくらの絵本に出てくる料理は、ほぼすべて調理して撮影したり、料理屋さんを取材して写真を撮らせてもらってから、絵を描きはじめています。今回はコロナ禍だったこともあり、お店に取材に行くことができなかったので、絵本に出てくる食べ物は、自分たちで作りました。

───すべての料理を作るのは、すごく大変な作業だと思うのですが。1回に何食くらい作るのですか?

関:大体、昼食用、夕食用にひとつ作って、お皿に載せて、色々な角度から撮影します。最後は家族で美味しくいただきます。

原田:たこ焼きなどの得意料理は1回で成功するので、問題ないのですが、大変だったのがオムライス。周りを包んでいる卵を、きれいな黄色ではなく、白身が残っているようなタイプにしたかったので、白身と黄身のバランスが保たれるように焼くことと、穴が空かないように綺麗に包むことに苦労しました……。

関:オムライスはケチャップをかけた後のビジュアルも大切だったので、2、3回作りましたね。あと、ラーメンはスピード重視。のびる前に撮影をして、美味しい状態で食べました。

原田:カレーは一回で、理想的な粘度のカレーが作れたので、良かったですね。おたまからカレーが落ちるバランスとかも絶妙でした。

───料理だけでなく、「かける」動きの部分も撮影しているのですか?

原田:もちろんそうです。今はスマホがとても高性能なので、動画で撮影して、気に入った場面を画像で残してモデルにしています。

関:しょうゆとかき氷のシロップの撮影は、白い紙を背景に、下にボウルを置いて、上からかけています。ポイントはスナップを効かせてしょうゆやシロップに躍動感を出すこと。あと、かき氷のシロップは、かけている場面は粘度の少ないサラッとしたタイプ。かかった後の場面は果汁がしっかりしているドロッとしたタイプと、同じイチゴシロップでも、違うものを使っています。

───粉チーズやコショウ、青のりも上からかけて撮影しているのですか?

関:粉状のものは、白い紙の上にふりかけて、それを上から撮っています。粉の散り方が、紙に載せた方がイメージ通りだったので。

───料理を想像で描くのではなく、実際に作ったり、かける動きを撮影してから描いているから、すごくリアルで美味しさが際立って感じるんですね。

関:絵本を読んで、「おいしそう」って言ってもらえるのが何よりも嬉しいですね。私たちが料理の絵を描くとき、「シズル感」を大切にしているのですが、『かける』は、特にこの「シズル感」がうまく出せたと思っています。

───「シズル感」は、肉などがジュージュー焼けるという意味の「sizzle」という単語からきている言葉。最近では、美味しい食べ物の写真や絵に対して多く使われていますが、『かける』に出てくる食べ物はどの料理も本当に美味しそう。「シズル感」が溢れています。

関:私たちなりの分析ですが、今回は料理だけでなく、「かける」という動きがあることで、より出来立て感やみずみずしさ、ジューシーさが表現できたのではないかと思います。カレーをかける瞬間の動きがあって、その次のページにカレーがかかったカレーライスが登場する。まさに出来立ての瞬間ですよね。

───「オムライス パラダイス」や「ひややっこ ひゃっほーう」という言葉も、出来上がった瞬間のテンションの高さが表れているように感じました。文章も何度も考えられたのですか?

原田:ぼくたちは元々、美味しい食べ物を描きたいという思いからスタートして、絵本を作っているので、言葉を考えるのは後半になることが多いです。

関:『かける』は言葉をとにかくシンプルにしたかったので、説明的にならない言葉で、なおかつユーモアあるフレーズをずっと考えていましたね。「オムライス パラダイス」が出たことで、作品全体の方向性が定まったように思います。

───お二人は、どちらかが文章担当、どちらかが絵を担当するなど、役割分担をされて絵本作りをされているのですか?

原田:ぼくらは絵も文章も一緒に制作することが多いですね。絵の分担については、作品によって変わりますが、基本はぼくが料理を描いて、関が人物や背景などを描きます。『かける』は人物がほとんど出てきませんので、関が器を描いて、ぼくが料理を描きました。

関:私は見たものを忠実に描くというより、少し崩して描くタイプなので、今回は器と料理で分けた方が、より料理のシズル感が際立って見えるのではと分担しました。結果、とてもうまくいったと思っています。

原田:先に器を描いて渡されるので、後から描く方はドキドキしました。間違えたら器からやり直しになるので。その反面、料理だけに集中して描いたらよいということだったので、結構、ダイナミックな気持ちで描くことができて、楽しかったですね。

───お二人の中で、特に好きなページはありますか?

関:難しいですね。カレーも良いですし、たこ焼きも美味しそうですし、オムライスも自信があります。でも、やっぱりホットケーキかな?

原田:ホットケーキはぼくも好きですね。実際に5枚重ねて撮影したホットケーキも、すごく美味しそうにできたんです。やっぱりモデルが上手く行けば、絵もすごく良いものが描けるなっていうのを実感しました。

ホットケーキの原画。美味しい香りもしてきそう!

関:料理としては簡単だけど、描くのが大変なものナンバー1は白いご飯でしょ?

原田:そうそう、ぼくたち『ごはん山』(白泉社)という絵本を作ったときも、白いご飯に苦戦しました。炊き立ての白いご飯の感じを出すのが、すごく難しいんです。これは、食べ物の絵を描く人あるあるだと思います。ご飯の光沢感、炊き立て感をどう表現するか、今回も試行錯誤を重ねました。『ごはん山』とはまた違った書き方で、美味しそうなご飯を表現できたと思います。

ユニット名「はらぺこめがね」とは?

───お二人は「食べ物と人」をテーマに、イラストレーターとして活躍されていますが、絵本を作ることは以前から興味があったのですか?

関:実は絵本作家になろうと思ったことは、二人ともないんです。「はらぺこめがね」として活動をスタートさせたばかりの頃、都立大駅近くにある「ニジノ絵本屋」の店主・石井彩さんと出会いました。「ニジノ絵本屋」は本屋だけでなく、絵本の編集・出版もしている所なのですが、石井彩さんは本当にパワフルで、スピード感ある仕事人。出会ってすぐに「一緒に絵本を作りましょう」と言っていただいて、あれよあれよという間に、はじめての絵本『フルーツポンチ はらぺこ印1』が完成。すると、それを読んでくださった編集者の方から、絵本の依頼をいくつかいただけるようになったんです。

関かおりさん

───絵を描きはじめた頃から、食べ物を描くことが好きだったんですか?

原田:ぼくはそうですね。それと今、思い返してみると、子どもの頃から、食べ物が出てくる絵本が大好きでした。『ぐりとぐら』のカステラ、『ちびくろ・さんぼ』のトラのバターのパンケーキはもちろん、『おおきなかぶ』のかぶも美味しそうだなって思っていました。

関:私は彼と出会うまで、食べることに興味がなかったというか、どちらかと言えば、苦手でした。私が子どもの頃、給食を全部食べ終えるまで、休み時間もずっと残されていたんですよね。それがすごくイヤだったんです。
大学時代に彼と出会って、すごく驚いたのは、食べることも作ることも大好きなこと。一緒にいるうちに私自身も段々食べることが好きになっていって。一緒に「はらぺこめがね」として活動する頃には、同じくらいの食いしん坊になりました(笑)。

原田しんやさん

───「はらぺこめがね」というユニット名はとてもユニークで、一度見ただけで誰もが覚えてしまいますよね。この名前はどうやって決まったのですか?

関:食べ物にちなんだユニット名にしたいと思っていて、色々考えました。ちょうど私が眼鏡をかけはじめた時期だったこともあり、二人とも眼鏡になったので「めがね」を入れたいなと……。そこにある日「はらぺこ」という単語がフッと出てきて、「はらぺこめがね」になりました。

───眼鏡をかけだしたのがひとつのきっかけというのは面白いですね。

関:私たち、新しい絵本を出版するたびに、新しい眼鏡を新調することにしているんです。最近、別の媒体で眼鏡メインの取材があったのですが、今まで買った眼鏡を並べてみたら、合計30本以上あったんですよ。

───新刊が出るたびに、新調するなんて、素敵! 思い入れもより一層深まりますね。

原田:そうなんです。『かける』の眼鏡はまだ買っていないので、近いうちに眼鏡屋さんに行かなくてはと思っています。ぼくらがいつも行っているお店は、オーナーさんがとってもユニークな人で、お店に行くと、すでにぼくら用の眼鏡が用意されているんです。

関:それがなかなか個性的で……(笑)。オーナーさんいわく、「はらぺこめがねっていう名前で絵本を作っている作家なんだから、普通の眼鏡をかけてちゃダメだ」って。いつも最初に手渡された1本目で決まってしまうんです。それくらい、私たちの顔に合ったものを把握してくれているお店なんです。

───これからお二人がどんな眼鏡を新調するのか、新しい絵本ができるたびに、すごく気になると思います。今後、どんな絵本を作っていきたいですか?

関:今まで通り、美味しい食べ物が出てくる絵本を作っていきたいと思います。先程、子どもの頃の話をして思い出したのですが、今、食べることが大好きな分、小さいときに食事が嫌いだったことを、もったいないなぁと思っているんです。だから、はらぺこめがねの絵本を読んで、食べることに対して、ちょっとでも興味を持ってもらえたり、好きになってくれる子がいたら……という願いを込めて、絵本を作っている部分はあると思います。

原田:そうですね。「食育」とか「バランスのいい食事」というような面ではなく、面白いなとか、シズル感がスゴイなという面から、あまり食事に興味を持てない子、好き嫌いが多い子が、この絵本、気になるな……と思ってくれたら嬉しいですね。

───『かける』はまさに、面白さとシズル感が合わさっている絵本ですね。

原田:ありがとうございます。『かける』は実は3部作になる予定なんです。

───そんなんですか! 次の作品がどんな絵本になるのか、ますます気になります。今日はいろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

「はらぺこめがね」の絵本が大好きなお嬢さんとの家族3ショット

アトリエ探訪

お二人が普段作業する机 手前が関さん、奥が原田さんなのだそう
原田さんの作業机周辺 「早起きは全てを救う」はお気に入りの格言なのだそうです
本棚にはお気に入りのものが並んでいます
こちらは、お嬢さんのお気に入りの絵本たち

取材・文/木村春子
撮影/所靖子

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