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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  かけることで美味しさ倍増! シズル感、満載の食べ物絵本 『かける』はらぺこめがねさんインタビュー

『かける』はシズル感満載の絵本

───器の話からはじまりましたが、この『かける』という絵本は、どのように生まれたのですか?

:おはなしのコンセプトは、編集者さんが提案してくれたんです。色々な料理に「かける」という、そのテーマが面白いと思ったことと、少し前から動きのある美味しい料理の絵本を作ってみたいと思っていたこともあって、おはなしの展開はとんとん拍子に進んでいきました。

原田:これが初期の頃のプロットですね。このときから、最初にかける場面が出てきて、その後、料理が登場するという構成は固まっていたと思います。あとは、「何を」「どの料理に」かけるかを決めていきましたね。

───プロットには、「粉チーズ ナポリタン ミートソース」や「シロップ かき氷」など今の絵本に登場する食べ物もすでに出てきていますね。

:そのあたりの「かけるもの」と「料理」の組み合わせはあまり悩まなかった気がします。ケチャップをホットドッグにかけようか悩んだり、青のりをお好み焼きにかけようか悩んだり、そういう試行錯誤はありましたね。

原田:「牛乳をコーンフレークにかける」、「刻みのりをざるそばにかける」という案も出たのですが、他の料理とのバランスを考えてボツにしました。最後のオチも、このときにはすでに決まっていましたね。

───先程、たこ焼きを作られたということで、ほかの料理も実際に作ったんですか?

原田:はい。ぼくらの絵本に出てくる料理は、ほぼすべて調理して撮影したり、料理屋さんを取材して写真を撮らせてもらってから、絵を描きはじめています。今回はコロナ禍だったこともあり、お店に取材に行くことができなかったので、絵本に出てくる食べ物は、自分たちで作りました。

───すべての料理を作るのは、すごく大変な作業だと思うのですが。1回に何食くらい作るのですか?

:大体、昼食用、夕食用にひとつ作って、お皿に載せて、色々な角度から撮影します。最後は家族で美味しくいただきます。

原田:たこ焼きなどの得意料理は1回で成功するので、問題ないのですが、大変だったのがオムライス。周りを包んでいる卵を、きれいな黄色ではなく、白身が残っているようなタイプにしたかったので、白身と黄身のバランスが保たれるように焼くことと、穴が空かないように綺麗に包むことに苦労しました……。

:オムライスはケチャップをかけた後のビジュアルも大切だったので、2、3回作りましたね。あと、ラーメンはスピード重視。のびる前に撮影をして、美味しい状態で食べました。

原田:カレーは一回で、理想的な粘度のカレーが作れたので、良かったですね。おたまからカレーが落ちるバランスとかも絶妙でした。

───料理だけでなく、「かける」動きの部分も撮影しているのですか?

原田:もちろんそうです。今はスマホがとても高性能なので、動画で撮影して、気に入った場面を画像で残してモデルにしています。

:しょうゆとかき氷のシロップの撮影は、白い紙を背景に、下にボウルを置いて、上からかけています。ポイントはスナップを効かせてしょうゆやシロップに躍動感を出すこと。あと、かき氷のシロップは、かけている場面は粘度の少ないサラッとしたタイプ。かかった後の場面は果汁がしっかりしているドロッとしたタイプと、同じイチゴシロップでも、違うものを使っています。

───粉チーズやコショウ、青のりも上からかけて撮影しているのですか?

:粉状のものは、白い紙の上にふりかけて、それを上から撮っています。粉の散り方が、紙に載せた方がイメージ通りだったので。

───料理を想像で描くのではなく、実際に作ったり、かける動きを撮影してから描いているから、すごくリアルで美味しさが際立って感じるんですね。

:絵本を読んで、「おいしそう」って言ってもらえるのが何よりも嬉しいですね。私たちが料理の絵を描くとき、「シズル感」を大切にしているのですが、『かける』は、特にこの「シズル感」がうまく出せたと思っています。

───「シズル感」は、肉などがジュージュー焼けるという意味の「sizzle」という単語からきている言葉。最近では、美味しい食べ物の写真や絵に対して多く使われていますが、『かける』に出てくる食べ物はどの料理も本当に美味しそう。「シズル感」が溢れています。

:私たちなりの分析ですが、今回は料理だけでなく、「かける」という動きがあることで、より出来立て感やみずみずしさ、ジューシーさが表現できたのではないかと思います。カレーをかける瞬間の動きがあって、その次のページにカレーがかかったカレーライスが登場する。まさに出来立ての瞬間ですよね。

───「オムライス パラダイス」や「ひややっこ ひゃっほーう」という言葉も、出来上がった瞬間のテンションの高さが表れているように感じました。文章も何度も考えられたのですか?

原田:ぼくたちは元々、美味しい食べ物を描きたいという思いからスタートして、絵本を作っているので、言葉を考えるのは後半になることが多いです。

:『かける』は言葉をとにかくシンプルにしたかったので、説明的にならない言葉で、なおかつユーモアあるフレーズをずっと考えていましたね。「オムライス パラダイス」が出たことで、作品全体の方向性が定まったように思います。

───お二人は、どちらかが文章担当、どちらかが絵を担当するなど、役割分担をされて絵本作りをされているのですか?

原田:ぼくらは絵も文章も一緒に制作することが多いですね。絵の分担については、作品によって変わりますが、基本はぼくが料理を描いて、関が人物や背景などを描きます。『かける』は人物がほとんど出てきませんので、関が器を描いて、ぼくが料理を描きました。

:私は見たものを忠実に描くというより、少し崩して描くタイプなので、今回は器と料理で分けた方が、より料理のシズル感が際立って見えるのではと分担しました。結果、とてもうまくいったと思っています。

原田:先に器を描いて渡されるので、後から描く方はドキドキしました。間違えたら器からやり直しになるので……。その反面、料理だけに集中して描いたらよいということだったので、結構、ダイナミックな気持ちで描くことができて、楽しかったですね。

───お二人の中で、特に好きなページはありますか?

:難しいですね……。カレーも良いですし、たこ焼きも美味しそうですし、オムライスも自信があります。でも、やっぱりホットケーキかな?

原田:ホットケーキはぼくも好きですね。実際に5枚重ねて撮影したホットケーキも、すごく美味しそうにできたんです。やっぱりモデルが上手く行けば、絵もすごく良いものが描けるなっていうのを実感しました。


ホットケーキの原画。美味しい香りもしてきそう!

:料理としては簡単だけど、描くのが大変なものナンバー1は白いご飯でしょ?

原田:そうそう、ぼくたち『ごはん山』(白泉社)という絵本を作ったときも、白いご飯に苦戦しました。炊き立ての白いご飯の感じを出すのが、すごく難しいんです。これは、食べ物の絵を描く人あるあるだと思います。ご飯の光沢感、炊き立て感をどう表現するか、今回も試行錯誤を重ねました。『ごはん山』とはまた違った書き方で、美味しそうなご飯を表現できたと思います。

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はらぺこめがね(原田しんや・関かおり)

  • 2005年京都精華大学デザイン学科卒業後、グラフィックデザイナーを経て2008年にイラストレーターとして独立。2011年はらぺこめがねを結成。絵本に『フルーツポンチ』(ニジノ絵本屋)、『やきそばばんばん』(あかね書房)、『くだものさがしもの』(PHP研究所)、『かんぱい よっぱらい』(岩崎書店)、『みんなのおすし』(ポプラ社)、『にくのくに』(教育画劇)などがある。また、「ごちそんぐDJの音楽」(DJみそしるとMCごはん)のジャケットアートを担当するなど「食べ物と人」をテーマに幅広く活動している。

作品紹介

かける
かけるの試し読みができます!
作:はらぺこめがね
出版社:佼成出版社
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