ふだんフランスにいらっしゃることも多いそうですが、先日帰国された際『うんちっち』『あっ、オオカミだ!』出版に尽力されたいきさつや作品の魅力についてお話をうかがうことができました。
ふしみさんがお会いしたフランスの絵本作家たちの素顔もちょっぴり教えていただきました!
●お父さんが待っていた!? いけないうさぎの子「シモン」の絵本
───くりかえし出てくる「うんちっち」の声色を変えて読んで聞かせるだけで子どもが大喜びする本(笑)。まずは「うんちっち」しか言わないうさぎの男の子シモンのお話から聞かせてください。
『うんちっち』原書との出会いは、大学を卒業して洋書絵本卸会社に勤めていたときです。
小さな会社だったので、仕入れから営業までぜんぶが仕事でした。カタログを見て売れそうだなと思った本や、注目している作家の新刊をチェックして、仕入れて、売るために本屋さんを回りました。
洋書絵本のストーリーを説明するために、本屋さんでページをめくりながら即席で翻訳していたので、自然に翻訳できるようになりました。そして、すごくおもしろそうなのに日本で翻訳されていない絵本がけっこうあることにだんだん気づくようになりました。
『うんちっち』はまず絵が魅力的で独特でした。なかを開くと「うさぎのこがいました。そのこは、ことばをたったひとつしかいえませんでした。それは・・・」でページをめくると「うんちっち」。
2見開き目にして心がつかまれてしまう。これはおもしろい絵本だと直感的に思いました。
───「うんちっち」と言うときのシモン、何も考えていないような確信犯なような、にくたらしいというか可愛いというか何ともいえない顔! この顔で一気に子どもたちを味方につけてしまいますよね。
「うさぎのこは、ことばをたったひとつしかいえませんでした。それは・・・」(1ページ目を開いています)
「うんちっち」!
「ぼうや、おきなさい!」といっても「うんちっち」
「ちびすけ、ほうれんそうをおたべ!」といっても「うんちっち」
うさぎのこをたべてしまったオオカミも・・・「うんちっち」
───そんなシモンがある日オオカミにぺろりと食べられてしまって、お腹が痛くなったオオカミがお医者さんを呼ぶと、その医者はなんとシモンのお父さん! さあどうなる?・・・とドキドキします。
フランス語で「うんちっち」は何ですか? もともとはどういう言葉を訳されたんでしょうか。
原題は『カカ ブーダン』なんです。カカはうんちのこと。ブーダンは血の腸詰、ソーセージのことなんですね。子どもがうんちのことをおもしろがって言うときの言葉だったりします。
───じゃあ、「うんち うんち」と言ってるようなものなんですね(笑)。
ブーダンは本当は食べ物ですけれどね(笑)。
あるとき、友人のうちで子どものおむつを替えるとき「うんちっち、替えようね」と声をかけていたのを聞いて、かわいい言い方だなーと思ったことからひらめいて、邦題を『うんちっち』にしました。
ですから本当の名づけ親は「うんちっち、替えようね」とおっしゃっていた友人のお母様(子どもからするとおばあちゃん)です。