子ども達が大好きな「じゃんけん」、そして大好物の「おにぎり」、さらに「でんしゃごっこ」が登場する…こんな盛り沢山な内容なら、子ども達が大喜びするにちがいない!
ひと目見たときからピンときてしまった絵本が『じゃんけんでんしゃ』です。
- じゃんけんでんしゃ
- 作:高木 さんご
- 出版社:えほんの杜
おにぎり、ハンバーガー、デザートまで!?おいしいともだちたくさんのせて出発進行!みんなが大好きな食べ物たちが集まって、じゃんけんぽん!じゃんけんをして、でんしゃごっこをはじめました。でんしゃはどんどん長くなり、やがて……!読み聞かせにぴったりの大判の体験型絵本。読んだ後は、じゃんけん、でんしゃごっこ、食べ物さがしで遊びましょう!
その作者である高木さんごさんが、絵本ナビオフィスに遊びにいらしてくださいました!!
『じゃんけんでんしゃ』は絵本ナビでも発売と同時に反響がかなりあって、好評なんです。サイン本も早い段階で売り切れてしまって…。
「ぼくの姪が保育士をやっているんですが、彼女の同僚の先生たちが気に入って、送ってほしいって言ってきています。ぼくの周りの反応もすごくいい作品です」
長崎県長崎市にある「おにぎり山」。正式には「大岳」というそうです。
大人のわたしが見ると、まず「おいしそう!」ってさけんじゃったんですが(笑)
誕生エピソードを教えてください。
「もともと、おにぎりを主人公にした絵本の構想があったんです。九州に「おにぎり山」という名前の山に、おにぎりが登るお話なんですが、おにぎりのフォルムだから、コロコロ転がってしまう…そんな内容でした。ただ、ちょっと単純すぎる話だったので、お蔵入りして、そのとき生まれたキャラクターでおにぎりでんしゃを作ろうと思ったんです。」
そうだったんですね。ちなみにおにぎりの種類が尋常じゃないですよね(笑)。絵を描くときに、実際に本物を作ったりされたんですか?
「もちろん作りましたし、講演で出かけることが多いので、東京駅の売店で売っているおにぎりやさんを見たり、かなり研究しましたね。」
「ピラフちゃんとおせきはんの2人が生まれたとき、この絵本はいけるなって思いました。
ピラフちゃんはシャンソンを歌ってそうだよね(笑)。おせきはんは京風な感じ。」
数いるおにぎりたちの中でもパッと目を引くコンビ!
おにぎりだけかと思ったら、ハンバーガーや、肉まん、タコ焼き、それからプリンなどのデザートまで登場して、どんどんおいしさが広がっていくのが本当においしそう!
「はじめはおにぎりの絵本だと思ったでしょ? すぐに色々登場するんですよ(笑)。
でも、食べ物ならなんでもOKかというと、そうでもなくて、大きさや形などで厳選しているんです。
下絵には、クリームパンの姿が! 「クリームパンは形が丸くないのでボツになりました」
下絵と実物では、微妙に列の長さが違いました! 細かい修正が何度も入っているそうです。「この行列を全部描くのが大変だったんだよ」
じゃんけんでんしゃ遊びは、子ども達も大好きですが、負けた子がお客さんになるのは、面白いですよね。
「やっぱり、勝っていく方がワクワクするし、一番後ろの子も車掌さん役で役割があると嬉しいと思うんだよね。負けた子がお客さんになったり、じゃんけんに紐を使って結んでいるのはぼくの創作ですね。でも、実際にやってみたらきっと楽しいと思います。」
絵本を見た子は、きっとまねしてみたくなりますね。
これだけたくさんの食べ物が登場しているので、制作もかなり時間がかかったのではないですか?
「文章はすぐに完成したんですが、絵は1つ1つが細かいし、たくさんあるし、描いても描いても終わらない!完成までに5か月ぐらいかかりました。」
ご自身で、一番好きなページは?
「この先頭を追いかけているページです。」
「あと、おかしランドのページも好きです。描くのはめちゃくちゃ大変でしたが…」
高木さんはご自身で作絵の絵本も手掛けられますが、文章だけ、絵だけの絵本も作られていて、オールマイティというイメージを持ちました。
文章だけを担当するときの制作の仕方で違いはありますか?
「どの作品も最初は文章から作っていくので、文章のときにはあまり違いはないです。
画家さんと組んだときによく言われるのは、“文章から絵がイメージしやすいって”こと。僕自身が画家で、画家が作る文章だからなんだと思います。」
私が特に好きなのは、黒井健さんが絵を描かれた『つきをあらいに』と、古内ヨシさんと作られた『テレビごっこ』。この2冊について少し伺えますか?
「『つきをあらいに』は元々画家さんを決めずに文章を書いていたんです。数年前、黒井健さんに会ったとき、「今、こんな話を書いているんだ」と文章を見せたんです。そうしたら次に会ったときには下絵を描いて持ってきてくれた。すっごく忙しい人で一緒に仕事ができると思っていなかったけれど、おはなしに共感してくれたんだと嬉しかったですね。」
「『テレビごっこ』は保育園、幼稚園の子ども達に大人気で、すぐに段ボールを持ってきて同じことをやりたがります。ただ、先生方にお願いしたいのは、どんなにやる気のある子でも、実際にテレビの中に入ると、恥ずかしがっちゃうので(笑)、インタビュアーになっていろいろ質問してあげてくださいってことね。」
高木さんは、講演会などで回られる色んな場所で、子ども達の様子を肌で感じているんですね。『じゃんけんでんしゃ』は、最初からご自身で描こうと思ったんですか?
「キャラクターができていたっていうのもあるし、このおはなしは、文章だけじゃ画家さんにイメージが伝わらないと思ったんです。だから自分で描くことにしました。」
絵本の制作をしていて、一番楽しいのはどんな時?
「色を塗っているとき!!
特にこの『じゃんけんでんしゃ』には時間がかかっています。」
「それから、原画を全部塗り終わって、絵皿を洗う瞬間(笑)。
終わったー!ってホッとします」
絵は水彩と色鉛筆を使って、背景の色も全部手描きで塗っているんだそう!
原画が見たくなりますよね。
絵の技法はおはなしの内容によって変えることも多く、今回の『じゃんけんでんしゃ』は小さいお子さん向けということもあって、フチに線を入れて、分かりやすい絵になるよう考えられたそうです。
月刊絵本などでもご活躍の高木さんごさん。
高畑勲監督の映画「太陽の王子 ホルスの大冒険」に感動し、上京。絵本作家を目指されたそうです。(なんと、高畑さんや、同じく尊敬するアニメーター森やすじさんと、手紙のやりとりをされていたとか!)
絵本の制作以外にも、絵本関係のイベントを主催したり、講演会に参加したりと、絵本の普及活動もたくさん行っています。
「やっぱり作った絵本が、多くの子ども達に手渡しできることは嬉しいし、そこで新たな発見や創作のヒントを見つけることもできるから、子ども達と出会う機会はなるべく増やしていきたいんですよね。何年も参加しているイベントだと、子ども達が成長していく様子も見れて、純粋に嬉しいです。」
幼少時代は集中力が続かず、読書は苦手だったそうです。ご自分のお子さんには読み聞かせをされていたのでしょうか?
「息子にはよく絵本を読みました。でも、ぼくは読むのがあまり得意じゃなかったから、ある時期から子どもに読んでもらうことが多かった(笑)。息子は読むのがどんどん上手くなって、高校時代は放送部で活躍していたよ。」
絵本を子どもに読んでもらうのは、とってもいいアイデアですね!
さっそく家でも実践してみたいです!
「子どもは読むのも好きだから、やってみると面白いと思いますよ。普段子どもに読んでいる絵本も、読んでもらうと違った面白さを感じるんじゃないかな…。」
すてきなアドバイス、ありがとうございます。
最後に改めて『じゃんけんでんしゃ』のオススメポイントを教えてください。
「うーん。読んでもらえたら、子どもたちはすぐに引き込まれると思います。
そういう思いを込めて一生懸命描きましたから。保育園の先生たちや子どもたちにも大人気な絵本なので、きっと喜んでもらえるはずです!」
今は新作のあかちゃん絵本の制作をすすめているという高木さんごさん。『じゃんけんでんしゃ』の原画展も近々予定されているそうです。
新しい作品もますます楽しみになりました。