- びっくり
- 役立つ
絵本紹介
2021.07.31
昔話や伝記、戦争の話、障がいのこと、人種問題ーーこの世界には、実にたくさんの事象が存在し、日々変化しながら未来へ向かって進んでいます。今まで知らなかった新しいものに触れると、世界に広さに、人類の叡智の偉大さに、人の心の豊かさにハッとさせられる……本には、そんな不思議な力が宿っている気がしませんか?
そんな風に子どもの世界観をひろげてくれる、様々なテーマの読み物を10冊紹介しましょう。
出版社からの内容紹介
世界一有名なイヌ「スヌーピー」を生み出した、「ピーナッツ」の作者チャールズ・シュルツ。これは、その子ども時代、絵を描くのが大好きで、人気マンガのキャラクターにちなんで「スパーキー」と呼ばれるシュルツ少年と、その愛犬で、スヌーピーのモデルになった「スパイク」のお話です。まんが家になるのを夢見るスパーキーは、愛犬・スパイクの絵を描いて新聞に投稿しますが……。
本書の絵を手がけたダン・アンドレイアセンは、子どものころシュルツにファンレター書きました。巻末にはその返事の手紙を掲載。自分と同じように絵を描くのが大好きな少年にあてたあたたかい言葉と直筆のサイン、そしてもちろんそこにはスヌーピーもいます。
出版社からの内容紹介
「よく見て、考えて、本物どおりにスケッチしたい」
世界中で愛される絵本作家は、生き物と自然が大好きなサイエンス・ガールでした。
ビアトリクスは少女時代、スコットランド高地の自然のなかを歩き回り、気にいったものすべてを集めてスケッチに熱中しました。たくさんのペットを飼い、動物の骨格まで観察して正確に描こうとしました。大人になるとキノコに魅せられ、スケッチはもちろん、研究を重ねて論文を書き、有名な学者たちに提出しました。1800年代の多くの女性と同様に、みとめられようと懸命だったのです。
のちに世界中で愛される絵本作家となったビアトリクスが、自然と芸術の両方に情熱をそそぎ、自分の道を見出すまでを描きます。知られざる一面に新たな光をあてた伝記絵本。
この書籍を作った人
翻訳家、エッセイスト。訳書に『中世の城日誌』(産経児童文化出版賞JR賞)、『ぼくだけのぶちまけ日記』(ともに岩波書店)、『せんそうがやってきた日』(鈴木出版)、『ピーターラビットのクリスマス』(文化出版局)、『ヤーガの走る家』(小学館)など。子どものころから筋金入りのネコ好き。紙芝居文化の会運営委員。
みどころ
窓辺に花が咲き、お父さんは弟に子守唄をうたい。お母さんは私の鼻にキスをして、学校まで送ってくれ。火山のことを勉強した後に、鳥の絵を描いた。そして、ランチタイムのすぐあとに……。
せんそうがやってきた。
せんそうは校庭の向こうからやってきて、全てを吹き飛ばし、私の家があった場所を黒い穴にし、誰もかも連れていってしまった。
小さな女の子に襲いかかった恐ろしい出来事は、そこで終わってはくれません。せんそうは、どこまで逃げても追いかけてくるのです。遠く遠くまでやってきて、やっと見つけた家の門は閉じ、学校に入ろうとするとこう言われるのです。
「あなたの場所はありません」
2016年春、イギリスで、3000人の孤児の難民の受け入れが拒否され、同じ頃、座るイスがないという理由で難民の女の子が学校への入学を断られました。そのことを聞いて作者が書いた詩が、この絵本の元になっているのだそう。イスは、全てを失い行き場のなくなった子ども達との連携のシンボルとなったのです。
世界には2,250万人という数の難民がいます。そして、その人たちが誰一人として望んで難民になっているわけではないのです。どんな子どもたちにも未来を夢見る権利があります。安全な場所にいる私たちにできる支援はあるのでしょうか。
だけど、当たり前だと思っていた日常がある日突然壊される、この悲しみと恐ろしさは絵本を通して痛いほど伝わってきます。ひとりぼっちになってしまった女の子の絶望感に打ちのめされます。今自分が何を感じ、どんなことを考えたのか。絵本を読んだ後にその感情をしっかり受け止める。子どもたちには、そんな力がきっとあるのだと思います。
世界がどこへ向かっていくのか、しっかりと見極めていかなければならない今。大事なヒントとなる1冊なのかもしれません。
この書籍を作った人
ケンブリッジ大学で動物学を専攻。くじらやこうもりをはじめ、数かずの動物の研究、子ども向けの本の執筆、英国BBCで野生動物や自然をテーマにした番組のプロデュースにも関わっている。絵本に『びっくりどっきり寄生虫』(フレーベル館)、『ちいさなちいさなめにみえないびせいぶつのせかい』(ゴブリン書房)、『北極熊ナヌーク』『やくそく』(以上、BL出版)などがある。
出版社からの内容紹介
「狼の血が流れてるらしいぜ」
狼とともに育った少年キセキ。1万年以上前の縄文時代に繰り広げられる、少年と狼たちの絆と進化の物語。
前作『こんぴら狗』で、第64回 青少年読書感想文全国コンクール課題図書に選定、日本児童文学者協会賞、産経児童出版文化賞(産経新聞社賞)、小学館児童出版文化賞など複数の賞を受賞した作家・今井恭子渾身作。
(著者あとがきより)
いつの時代でも、どこででも、技術や生活における変化というものは、一斉に一様に進むわけではありません。現代でも着々と宇宙旅行への準備をしている人がいる一方で、いまだに電気も水道も使わず生活している人がいます。昔からの伝統的な生活を当然のこととして続けている人々は、技術的には遅れているかもしれませんが、人間として劣っているわけではありません。この作品を書きながら、書いている本人が強く気づかされたことです。それは昨今、頻繁に話題にのぼる多様性への尊重ということに結びつくでしょう。
……狼に興味を持ち、犬を愛する者として、今作でも主人公と狼や犬との強い絆を描きました。縄文時代の遺跡からは、犬が大切にされていた証拠が出てくることを密かにうれしく思いました。
出版社からの内容紹介
「朝、目をさますといつも、ぼくのまわりはことばの音だらけ。そして、ぼくには、うまくいえない音がある」
苦手な音をどもってしまうぼくは、クラスの朝の発表でもまったくしゃべることができなかった。放課後にむかえにきたお父さんは、そんなぼくを静かな川べりにつれていって、ある忘れられない言葉をかけてくれた。
吃音をもつカナダの詩人、ジョーダン・スコットの実体験をもとにした絵本。デビュー以来、作品を発表するごとに数々の賞を受賞して注目を集めるシドニー・スミスが、少年の繊細な心の動きと、父親の言葉とともに彼を救ってくれた美しい川の光景を瑞々しいタッチで描いている。
この書籍を作った人
カナダのノヴァ・スコシア州郊外に生まれる。ノヴァ・スコシア美術デザイン大学卒業。ジョナルノ・ローソン原案の文字のない絵本『おはなをあげる』(ポプラ社)で、カナダ総督文学賞(児童書部門)、ニューヨークタイムズ・ニューヨーク公共図書館絵本賞など、さまざまな賞を受賞する。海辺の炭鉱のまちのいちにちを描いた『うみべのまちで』(BL出版)で、2018年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞。2児の父。家族とともにトロントに在住。
出版社からの内容紹介
プリンツ賞オナー作家が描く、
心にひびく物語
小学校4年のゲイブリエルには、
こわいものがたくさんある。
クモ、いじめっ子の上級生、大きなトラック……。
でも、何よりこわいのは、5年生に進級すること。
5年になると、いやな上級生と同じ校舎になるから……。
ぜったいに5年生にはならない、と決めた。
親友の女の子フリータは、これに大反対!
ゲイブリエルの弱虫をなおす作戦を考えて、
夏休みのあいだ、その作戦に、
ふたりでとりくむことになった。
とちゅうまでは、うまくいっていた。
ところが、ゲイブリエルのある思いつきのせいで、
フリータの家族をまきこんでしまい…。
1976年アメリカ・ジョージア州を舞台に、
偏見や人種差別の問題にふれつつ、
苦手を克服する子どもたちの成長を描いた、
心にひびく物語。
出版社からの内容紹介
第二次世界大戦中のフランスの山間部。12歳の少年ジョーは、戦争に行った父のかわりに、ヒツジの世話をしています。ある日、山の中で見知らぬ人に出会ったことから、ナチスの迫害をのがれたユダヤ人とかかわることに……。イギリス児童文学界を代表する作家、マイケル・モーパーゴの新作です。
この書籍を作った人
1943年、イギリス、ハートフォードシャ―生まれ。ロンドン大学キングズ・カレッジ卒業。小学校教師を経て児童文学作家になる。ウィットプレッド賞、スマーティーズ賞、チルドレンズ・ブック賞など数々の賞を受賞。邦訳作品に『最後のオオカミ』『忘れないよリトル・ジョッシュ』(ともに文研出版)、『世界で一番の贈りもの』、『おじいちゃんが のこしたものは…』、『希望の海へ』、『戦火の馬』(以上、評論社)、『モーツァルトはおことわり』(岩崎書店)、『ロバのジョジョとおひめさま』(徳間書店)、『月にハミング』(小学館)などがある。
出版社からの内容紹介
アフリカの民話の宝庫、タンザニア。
この地で生まれ育った絵本作家ジョン・キラカが、
タンザニア南西部に暮らすフィパの人たちの語りを記録し、この絵本をつくりました。
ティンガティンガ・アートを学び、ユニークな独自の画風を確立したキラカの絵と、
素朴な昔話のおもしろさを味わえます。
キラカの絵本は、スイス、ドイツ、スウェーデン、アメリカなど多くの国で翻訳出版されており、
また、キラカは各地でストーリーテラーとしても活躍しています。
【ティンガティンガ・アートって?】
1960年代、タンザニアのエドワード・サイディ・ティンガティンガによりはじめられた、ポップアートの手法です。
この書籍を作った人
東京生まれ。出版社勤務を経て、翻訳家・編集となる。JBBY会長、「アフリカ子どもの本プロジェクト」代表。青山学院女子短期大学教授。著書に『エンザロ村のかまど』(福音館書店)、『どうしてアフリカ? どうして図書館?』(あかね書房)など。アフリカ系アメリカ人を主人公にした絵本の翻訳に『ローザ』『わたしには夢がある』『つぼつくりのデイブ』『かあさんをまつふゆ』『むこうがわのあのこ』『川のうた』『リンカーンとダグラス』(以上光村教育図書)、『ひとりひとりのやさしさ』(BL出版)、『きみたちにおくるうた』(明石書店)、『イライジャの天使』(晶文社)、『ふれ、ふれ、あめ!』『ぼくのものがたり あなたのものがたり』(以上岩崎書店)、『じゆうをめざして』(ほるぷ出版)などがある。翻訳で産経児童出版文化賞、日本絵本賞、ゲスナー賞などを受賞している。訳書に『ゆき』『シャーロットのおくりもの』(ともにあすなろ書房)、『くらやみのなかのゆめ』(小学館)、『ひとりひとりのやさしさ』『やくそく』(ともにBL出版)など多数。
出版社からの内容紹介
本が大、大、大好きな、くろねこの本屋さん
本を読むのが何よりも大好きなくろねこがいました。
家族のねこたちは、ロボット作りや、コックさん、ダンサーや、音楽家などをしていますが、このくろねこときたら、本を読んでいるばかり。
そんなある日、くろねこは町で小さな子どもの本屋さんを見つけて、お手伝いをすることに。
おもしろい本に詳しいくろねこですから、子ども達ひとりひとりにぴったりのを教えてあげることができます。くろねこは評判になり、本屋さんは大人気店になりました。
ところが、ある日、大雨でお店が水びたしになってしまいます。何日もかけて元通りにしたものの、お客さんはぜんぜんこなくなってしまいました……。
すっかり元気をなくして、ごはんはおろか、本さえも読めなくなってしまったくろねこですが……。
読書の楽しさを伝えると共に、好きなことを見つけ伸ばしていくことを応援する絵本です。
【編集担当からのおすすめ情報】
『としょかんライオン』訳者の福本友美子さんによる翻訳絵本です。
読み聞かせにぴったりの「声に出して読みやすく、耳で聞いて心地いい」文章と、ボローニャ国際絵本原画展に入選した若手アーティストの伸び伸びとした絵が楽しい絵本です。
出版社からの内容紹介
宇宙人が一堂に会する人気百貨店の物語
「あらゆる星の商品と、最高のおもてなしを提供する、泣く子も笑う宇宙百貨店。どうぞごゆっくりお楽しみくださいませ。」
宇宙一の品揃えを誇る老舗の百貨店は、いろいろな星からお客さんが集まって大人気。社長は社長室から店内をモニターで監視中。そんな中、ひと組の仏頂面の親子を発見。「もっと笑顔になるおもてなしをしろ。」社長の指令に店員たちはあの手この手で親子をおもてなし。それでも笑わない親子。さてその結末はいかに。
【編集担当からのおすすめ情報】
様々な素材と手法で独自の世界観を表現する現代美術家の、初めてのオリジナル絵本です。絵本の中にも独自の世界は表現されていて、細かいところまで描き込まれた絵と、妖しい雰囲気には圧倒されました。ワクワクしながら、何度も読み返したくなるような絵本ができたと思います。