しかけをめくると妖怪が登場!今大人気の本格子ども向け図鑑
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出版社エディターズブログ
2021.08.13
夏に食べたいものといえば…
そう、すいかです!
すいかが主役の絵本、くもん出版にもありますよ。
その名も『30000このすいか』。
食べられそうになった30000このすいかたちが畑から脱走する、
奇想天外なナンセンス絵本です。
「ページをめくるたびに、予想外の展開!」
「ナンセンスな世界がくせになる!」
と刊行以来、好評をいただき、第21回日本絵本賞の大賞も受賞しました。
この絵本はどんな風にして生まれたのか…時は2014年にさかのぼります。
ある日、編集部にガガガガーと数枚のFAXが送られてきました。差出人は、絵本作家のあきびんごさん。『したのどうぶつえん』『したのすいぞくかん』『あいうえおん』『ゴロゴロゴロゴロ』(くもん出版刊)など、楽しいことばあそびの絵本を何冊も出させていただいている方です。
さっそく読もうとしたとたん、プルルルーと電話。あきびんごさんです。
「今、FAXを送ったんだけどね、すいかだよ、すいか」
「あの、今読み始めたところで…えっ、すいか?」
「そうそう。で、逃げるの、すいかが」
「逃げる? 甘いすいかが?」
と、まるでかみ合わない漫才のようでしたが、実はそのFAXはあきびんごさんの新作絵本の原稿でした。
すいか畑ですくすくと育った30000このすいか。ある日、カラスが「食べごろだね」と話すのを聞いてしまいます。すいかたちは「食べられるなんて、まっぴらごめん」と、夜中に畑から脱走。野を越え、山越え、そして海へ…。
すいかが脱走? しかも30000こ? 設定を聞いただけで、ワクワクしてきました。おもしろい物語がはじまりそうな、あの期待感。あきびんごワールドの扉がほんの少し開いて、そこからおいでおいでと呼ばれているような。これはぜひ絵本にしたいと思いました。
それから数か月後。私はあきびんごさんのアトリエで、すいかたちの脱走劇を一部始終目撃することになります。壁一面に並べられた絵本の原画は圧巻でした。擬人化されていない、丸々としたおいしそうな、リアルなすいか。それでも、彼らの声が確かに聞こえてくるのです。
「早く逃げよう」と、焦ってつるを切るすいか。
生まれてはじめての海を、目を丸くして見つめる(いや、目はないのだけれど)後ろ姿。(そもそもすいかに前後はあるのか)
なんだか、私も絵のなかのすいかになって、山を空を海を見つめているようでした。
「どうして、こんなおもしろいアイディアを思いつくのですか?」びんごさんに聞いてみました。
「そんなのかんたん。ボクは、もし自分が〇〇だったらっていつも考えるんだ。ボクが山田さんだったら…、猫だったら…、コップだったら…。で、ボクがすいかで、食べられるとなったら、真っ先に逃げるね。ごーろごろって。ハハハハ」
人間や動物ならまだしも、ものにまで…恐れ入りました。だから、すいかに感情移入できるのか。謎がひとつ解けた気がしました。けれど、もちろんアイディアだけではなく、ありえない状況を「いや、もしかしたらあるかもしれない」と思わせる、確かな画力があってこそです。
なんとも自由な風が吹いているあきびんごワールドで、子どもたちが気持ちよく遊んでくれたらと願っています。
(マーケティング部 山田)
この書籍を作った人
1948年、広島県尾道市生まれ。東京芸術大学日本画卒。絵画や染付などの個展活動を行っている。また、幼児教育の研究者でもあり、さまざまな教材・教具・文具の開発をした。 著書に、村上潔の名で『北風ママと太陽ママ』『太陽ママになろう!』(PHP研究所)がある。絵本に『したのどうぶつえん』<第14回日本絵本賞受賞>『したのすいぞくかん』、『あいうえおん』(くもん出版)がある。