───スタジオジブリのアニメ版に続いて、今度は『魔女の宅急便』が実写映画化されることになりました!このお話を最初に聞かれた時は驚かれたのではないでしょうか?どんなことを思われたのか教えていただけますか?
書いているとき思い浮かべる登場人物は、絵ではなくて、実体のある、あるだれかさんなので、実写ということに驚きはありませんでした。むしろ実写のキキに出会えることが楽しみでもありました。
───原作の中で、主人公のキキがひとり立ちの日を決めた時に言う 「今は、贈りもののふたをあけるときみたいにわくわくしてるわ」という言葉がとても印象的です。 角野さんご自身も「贈りもののふたをあけるときみたいにわくわくした」体験をされたことってありますか。

もちろんあります。この年になるまで、ずっとそういう気持ちで生きてきたと思います。この先に見えるものはなにか、この先自分が出来ることはなにか、今度は何をしようかと考えるのは、わくわくします。そしてきっといいことが待っているに違いないと思うのです。でも現実はいいことばかりではないことは、わかっていますが、うまくいかないと決めつけて、中止することはありません。
───「魔女の宅急便」シリーズの中で、キキは人から人へたくさんの届けものをしていますね。それは単なるものにとどまらず、その奥にある人の想いも運んでいて、届けものの中には見えるものと見えないものがあることを感じました。時にはうまくいったり、いかなかったりするキキの宅急便屋さん・・・。実写映画の中でも原作の中からいくつかのエピソードが使われていましたが、この届けもののエピソードの中で、角野さんが特に思い入れのある場面がありましたら教えていただけますか?
実写映画では、カバを運びます。動物ではカバが大好きですから、はこんだら、どんなことになるか、面白いお話になりそうと思って書きました。
2巻目ではおじいさんのおさんぽを運びます。目には見えないものです。でもみえないものから、いろいろなことが見えてくる、そこが書きたかったのです。
───「魔女の宅急便」といえば、気持ちよく空を「飛ぶ」キキの姿が印象的です。実写映画では、それがよりリアルに、自分が空を飛んでいるような感覚を味わうことができました。角野さんは、キキが飛んでいるところを描く時、どんな気持ちになられましたか?また「飛ぶ」ことについてどんな思いを持っておられるのでしょうか?
もちろん飛べたらいいなと思います。でもできないとおもったら、そこでおしまい。飛べる方法はあるのです。それは想像することで出来るのではないでしょうか。そこから見えてくるものは、きっと日常と違う物語が詰まっているような風景だと思うのです。
───「誰でも魔法をひとつは持っているんです。空を飛べたり、姿を消したりすることはできなくても、自分が好きなことで生きられれば、それは魔法になる。そんな気持ちを込めて、私はこの物語を書き続けてきました」というメッセージを福音館書店さんHPでのインタビューで拝見しました。 「誰でも魔法をひとつは持っている」・・・とても希望が湧いてくる言葉だと思います。そこでお伺いしてみたいのですが、人が自分の持つ魔法に気づくのはどんな時だと思われますか?また角野さんご自身の魔法に気づかれた時のことを教えていただけるでしょうか?
とっても簡単なことです。好きなことを見つけることです。それは本当に好きなことです。役に立ちそうというような、効率的なものではなく。それを見つけたら、大切に、辛抱強く、育てていくことだと思います。好きなことでも、挫折はあります。でも好きならまた工夫をしながら、乗り越えていくことでしょう。続けることです。毎日、毎日、するといつかそれはあなたの魔法になるでしょう。
───第1巻から第6巻まで、完結するまで24年続いたこちらのシリーズ!キキの成長の物語はひとり立ちしてからもずっと続き、キキとともに歩んできた読者もたくさんいることと思います。一方で、今回の実写映画化がきっかけで、初めてキキの物語に出会う子どもたちも多いかもしれません。最後に、そんな子どもたちへのメッセージをいただけたら嬉しいです。
まず読んでください。面白いと思います。やめられなくて、ずんずん読みたくなると思います。私はそれを信じて、書き続けてきました。
───角野さん、たくさんの素敵なお言葉をありがとうございました。
次は、絵本ナビスタッフによる試写会レポートです。