●谷川俊太郎さんと「絵本」
─── 本当に沢山のジャンルに渡り活動をされている谷川さんですが、谷川さんにとっての「絵本」というのは?)
簡単に言うと映像メディアですよね。今のインターネットや何かとも共通のもので。
僕は若い頃から写真に興味があって、親に写真機を買ってもらって写真を撮ったりしていて。それからまもなくフォトストーリーという写真に物語をつけるようなのが、ある程度女性雑誌なんかで流行って。そういう仕事がきたんですね。それからまもなくドキュメンタリー映画の脚本の仕事がきて、それからテレビの仕事をして。それと絵本の仕事がだいたい並行して入ってきた感じで。だから最初から映像と言葉の組み合わせというのには、すごく興味があってね。詩だけじゃなくて、それと絵とか写真がつくということで表現の範囲が広がるので。それをずっとやりたいなと思っていたので、絵本をどんどんやるようになっちゃったんですね。
桃太郎とか一寸法師とか、日本の伝統的な本じゃない絵本に興味があって。物語を書くのは苦手だったので、いわゆる認識絵本と言われるジャンルですね。最初にわりと意識して作ったのは、『コップ』(福音館書店)という写真絵本。あれはコップをいろいろな見方で、ただ水を飲む道具じゃないということを作った。ああいう形の絵本がわりと自分の得意分野だったんです。
─── そうすると、子どもに向けて・・・というよりは表現の一環として?
そうですね。もちろんある程度難しい漢字を使わないとか、子どもにわからないような言葉は使わないというのはあるけど。僕はあまり子どもに向けてということよりは、まず大人が面白がってくれなきゃ、子どもも面白くないだろうという感じですよね。
─── そんな谷川さんが最近関心を持たれているジャンルというのはありますか?
詩のメディアとして、つまり電子メディアとか紙もあるんだけど、何かちょっと違うものもしようかと思って。今、顕微鏡で読む詩というのと、電光掲示板で読む詩というのをやってるんですね。
─── 顕微鏡……!!
肉眼じゃ見えないんですよ。見るとちゃんと詩がね、立体的にエッチングというか、彫り込まれていて。ちょっとずつずらしながら読む。 まあ、これは遊びですけどね。
─── 詩というのを一つのテーマにして、それをどう読んでもらうかと考えるだけで、いくらでもアイデアが出てきそうですね。
そうね。もうiPadなんかだと文字も動かせるしね。いろいろなことができるし、映像も入れられるしね。
※実はこの取材の前の日に「Twitter」に谷川さんがご本人の言葉が初登場!「お仕事の流れで・・・」とおっしゃっていましたが、どんなジャンルやメディアについても瞬時にその特徴や役割を消化されているその姿勢に脱帽してしまうのでした。
●最後に
─── 最後に絵本ナビ読者に向けても一言お願いします!絵本をこんな風に読んだら面白いんじゃないか、とか・・・。
それは親の才能にかかってるんだけどね(笑)。
─── なるほど(笑)。
少なくとも、親のひざの上か何かに座らせて、絵本を同じ目線で読んでほしいと思うのね。時々前に子どもを置いて、向かい合って読み聞かせるお母さんもいるじゃない。親子でやる意味がないと思うんですよ。だからスキンシップぐるみで絵本を読んでくれると、絵も生きるし言葉も生きるっていう感じがしますね。
例えば毎晩2冊か3冊ずつ子どもに読んであげていたとしても、その読み方がすごく速くてまったく義務感みたいにしてバーッと読んで「おやすみなさい」っていうお母さんもいて。そういう読み方でいいのかなって思ったこともあります。
やっぱり親がまず楽しまないとね。
─── ありがとうございました!
記念にぱちり。
サインを描いてくださっています!!さらさらっと速いのです。
「あの世からのサイン」!堀内誠一さんが生前使ってらしたというハンコも押して頂きました。
新作『いくつかな?』も合わせて「ことばとかずのえほん」シリーズ全4冊箱入りセット。
中味もわかるように持ってくださいました!!
応接間に飾られていたラジオの数々もご紹介しちゃいます!
(谷川さんが組み立てられたものばかりだそうです)
<最後に・・・>
とても緊張しながらお伺いした“あの谷川俊太郎さん”のご自宅でしたが、気さくに対応してくださり貴重な時間を楽しく過ごすことができました。この日お会いした谷川さんは日焼けされていて、とてもアクティブなイメージ!運動をされているのかとお伺いしたら「いや、全然僕はスポーツ音痴で、スポーツは体に悪いって思い込んでるから、スポーツはしたことないし見たこともほとんどないんですよ。今やってるのは呼吸法だけ。」とのお返事(笑)。それでも、どこにでも電車なんかでお一人で出かけられるらしく、フットワークは今も昔もとても軽いのだそうですよ。