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《スペシャルコンテンツ》インタビュー

2011.11.30

おくはら ゆめ さん
『やきいもするぞ』インタビュー

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やきいもの神様は実在する神社です。

─── 『やきいもするぞ』で、何といってもユニークなのが「やきいものかみさま」だと思うんです。一番最初に読んだときは、やきいものかみさまが突然動物達の前に出てきたように思ったんですね。でも、実は最初から登場していて、少しずつ動物達に加わっていっているのを見つけて、この自然な混ざり具合がすごくお気に入りになってしまいました(笑)。やきいものかみさまはどうやって生まれたんですか?

焼いもの神様にはモデルがあって、今すんでいる家の近くにある神社なんです。そこにあるお社に焼き芋の神様が祭られているんですよ。(神明社のいも神社:http://www.shinmeisha.com/imo.html

─── 実在するんですか?

はい。本当にお芋の形をした像があって、我が家ではお腹を壊したときや飼っている猫が下痢気味なときによくお参りに行くんです(笑)。
このお社の前で動物達が「やきいもするぞ、エイエイオー!」って雄たけびをあげているイメージが浮かんできたのがこの作品の生まれるきっかけになっているんです。

─── この「エイエイオー!」というフレーズがずーっと頭の中に残っているのですが、言葉もかなり考えて選んでいるのでしょうか?

そうですね。言葉は大体いつも100回以上は読んで、引っかかるところや読みにくいと感じるところはないか、もっといい言葉があるんじゃないかを考えます。部屋を閉め切って、「やきいもするぞ、エイエイオー!」って、動物になった気分で雄たけびをあげたりもしました(笑)。
私、この「エイエイオー!」と同じくらい「こうなったらしょうがない」という言葉が好きなんですよ。「こうなったらしかたないやろ〜〜」っていう投げやり感というか、「しょうがない、いっちょやるか!」というような納得の仕方が、いいですよね。

─── たしかに、この動物達のキャラクターがすごく良く感じられる言葉ですね(笑)。
おならの音を考えるときは楽しかったですか?

楽しかったですねー(笑)。
何回も口に出して、「ぽへー」とか「ぶおーん」とか言っていました。
そうそう、コゲラのおならは、最初「プペポペブー」だったんです。でも、編集さんがテキストを入れるときに「プヘポヘブー」と間違えて。でも、その力の抜け加減がとても気に入ってしまったので、そのまま採用になりました。
おならには臭いと音があるから、最初は両方の大会にしようかとも考えていたんです。でも、今回は音だけの大会にして。もしかしたら、次の日は「誰が一番くさいおならか?」の大会になっているかもしれません(笑)

─── このおならの場面は読者の方にどんな風に楽しんでもらいたいですか?

もう、恥じも何もかもみんな捨てて(笑)、思いっきり読んでほしいです。
布団の中で、みんなでおならの音大会してもらえたら嬉しいですね。

友達の子どもに作った絵本が、絵本作家を目指すきっかけでした

─── 2007年に『ワニばあちゃん』でデビューしてから、毎年、多くの作品を出している、おくはらさんですが、そもそも絵本作家になるきっかけはなんだったんでしょうか?

絵本作家になろうと思ったのは、友達の子どもに手作り絵本をプレゼントしたときでした。今から思うと、ただその子が散歩するだけのシンプルなおはなしだったんですけど、すごく喜んでくれて、「もう一回、もう一回!」って言ってくれたことが嬉しかったです。

─── 元々、絵に興味を持っていたりしたんですか?

いいえ、特には…。絵を描くようになったのは絵本作家になりたいって思ってからなんです。
それでも2作目、3作目と作って知り合いに見せると、みんな喜んでくれるし、私も楽しいし。「あ、どうしよう、私、天才や。すぐ絵本作家になれるわ!」って思って、絵本作家になるために東京の友達の家に転がり込んだんです。

─── え!作品の出版が決まっていたとかではないんですか?

そうなんです。絵本作家になるって思ったら、矢も楯もたまらなくなっちゃって、すぐにでも行動しなきゃと(笑)。でも、東京に来て勇んで出版社に持ち込みに行ったら、どこからも「使い物にならない」って言われて…。「うそやん〜〜。ちゃんとみて〜〜(涙)」って。
そのうち、「持ち込みに行っても嫌なことばかりだし…、もう行かない」って、持ち込みを止めて井の頭公園でやっているアート系のフリーマーケットに自分で作った手作り絵本とポストカードを並べてた時期もありました。
そのフリーマーケットでとても素敵な絵を描く人と知り合って、「すごい素敵な色使いやね」って声をかけたら、その人が、「ぼく、荒井良二のことがすごく好きで、影響されているんだよ」って教えてくれたんです。でも私、そのとき荒井良二さんを知らなくて「誰?」って聞いたんですよ(笑)。そうしたらメチャクチャビックリされて、「ゆめちゃん、絵本作家になりたくて兵庫県から来たんだよね?」って。「トムズボックスに原画が飾ってあるから見てこい!」って。
そこではじめて荒井さんの絵に出会ったんです。もう「絵本の絵ってこんなに鮮やかなんだ…」ってものすごい衝撃を受けて。それからですね、絵本にはまっていったのは…。

─── 荒井良二さんのように衝撃を受けた絵本作家さんは他にもいますか?

長新太さんの『なんじゃもんじゃ博士』(福音館書店)に出会ったときは、荒井さんの絵と同じぐらい衝撃を受けました。長さんの作品で一番好きなのは『そよそよとかぜがふいている』(教育画劇)です。この絵本は時々、自分の読み聞かせのときに読んだりもしているんです。猫がしっぽでおにぎりの形を直す場面が特に好きです。

─── おくはらさんと同じ時期にデビューされた絵本作家さんや同年代の作家さんが、最近、活躍されていますが、気になった絵本や作家さんはいますか?

最近読んだものでは、やぎたみこさんの『ほげちゃん』(偕成社)が面白かったです。ムーが…(笑)。あと、山西ゲンイチさんの『ブルオはいぬごやのした』(岩崎書店)も好きですね。
あとは…身内ですが、石井聖岳の『わにあなぼこほる』は、すごく面白くて、悔しかったです。暴れん坊で、すごく子どもっぽくって(笑)。私もワニになって一緒に穴ぼこ掘りたかったです!

─── ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、おくはらゆめさんと石井聖岳さんはご夫婦なんですよね!
お二人がご結婚されたって聞いたとき、あまりにもピッタリすぎて、嫉妬したくらいなんですが(笑)、お家で絵本の話とかはされるんですか?

まったくしないです。お互い頑固者なので、仕事の話をするとケンカになるかもしれないから…(笑)。
2人とも製作するときは別々の部屋で描いていますし、私は石井君の部屋に入るときは目の焦点をぼかして…(笑)、なるべく彼の作品は見ないようにしています。見ると「ああ、またいい絵描きやがって、こいつ〜」って思っちゃうから(笑)。
石井君の絵本の評判が良いと、すごく嬉しい反面、悔しい気持ちも他の人に比べると大きくて…。小さい人間だなって思うこともありますね。

─── ご夫婦であると同時に、ライバルでもあるんですね〜。

でも、石井君も『やきいもするぞ』の見本ができたとき、一番最初に読んでもらおうと思ったのに、読んでくれなかったですよ。「絶対、良い気がするから、読まない」って(笑)。

─── そのやり取りを伺っているだけで、何だかほんわかしてきちゃいます(笑)。
おくはらさんにとって、今後目指していきたい絵本はどんなものでしょうか?

今はまだ、自分にとって絵本を作ることは、楽しいから描いている感じなんです。それは、今、私に子どもがいないということもあると思いますし、いつか、誰かのためにって本気で思って絵本を作れるようになったら、それはすごく良いことだなって思います。
でも、今はまだ、私は自分の「ヘンテコリンな世界」として確立していきたいと思っていて、それを強く思ったら伝わるんじゃないかと、絵本を作るときはいつも「もっと、もっと、ヘンテコリンな世界になりやがれ!」って筆に込めながら描いているんです。もしかしたら、その世界を作るには一生かかるかもしれないし、私が死んだ100年後に伝わるかもしれない…。けれど、今はそのヘンテコリンな世界を追及していきたいです。

─── おくはらさんの「ヘンテコリンな世界」にこれからもどっぷりはまっていきたいと思います(笑)。
今日は本当にありがとうございました。

(取材を終えて)

絵本ナビ内でも独特の和みムードを振りまいてくれたおくはらさん。最近、「明日できることは今日やらなくていい」というトルコの諺を知って、創作に詰まったときは無理をせずに、自転車に乗ったり散歩したりとリフレッシュ方法を変えているのだそうです。
「今、ブームの動物はいますか?」という質問に、「近所にいるカラスが、いつも“アワー、アワー”って鳴くから、“アワちゃん”って呼んでいるんですけど、それがすごく可愛いくて。こっちも真似して“アワーアワー”って鳴いたら、返事をしてくれるんです!」と嬉しそうに話してくれました。
自然体で生きるおくはらさんの次回作、楽しみですね
(編集協力 木村春子)

今回、更に特別企画として、初めての試み…
WEB上での原画展を開催してしまいます!絵本になった絵とはまた少し違った原画の絵をじっくりとお楽しみください。 こちら>>>

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おくはら ゆめ

  • 1977年、兵庫県生まれ。辻学園日本調理師専門学校卒業。2005年、MOE絵本・イラスト大賞 年間グランプリ佳作、2006年、第12回おひさま大賞最優秀賞、2007年、第8回ピンポイント絵本コンペ入選。『ワニばあちゃん』(理論社)でデビュー、同作で、第1回MOE絵本屋さん大賞新人賞入賞。『くさをはむ』(講談社)が第41回講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他主な作品に、『チュンタのあしあと』(あかね書房)、『まんまるがかり』(理論社)他多数。

作品紹介

やきいもするぞ
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:ゴブリン書房
ワニばあちゃん
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:理論社
チュンタのあしあと
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:あかね書房
まんまるがかり
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:理論社
バケミちゃん
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:講談社
ネコナ・デール船長
作・絵:おくはら ゆめ
出版社:イースト・プレス


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