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きみの話を聞かせて しろさめ作品集

きみの話を聞かせて しろさめ作品集(小学館集英社プロダクション)

全編透明水彩画で描かれたイラスト作品に、描き下ろしのショートコミックを大幅に加えた、待望の作品集!

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絵本ナビホーム  >  スペシャルコンテンツ  >  インタビュー  >  なかや みわ さん 『どんぐりむらのぱんやさん』インタビュー

「おしごと」をテーマにどんぐりたちが活躍する「どんぐりむら」シリーズ、第1作目の『どんぐりむらのぼうしやさん』から約1年、早くも第2弾が発売されました!
タイトルは『どんぐりむらのぱんやさん』!
ふわっふわのパンは、子どもも大人も大好きですよね!
おはなしの中に出てくるパンは、どれもこれもとっても美味しそうなんです。
それもそのはず、今回は実際にパン屋さんに取材をされたというのですから。
そんな新作のおはなしや前作『ぼうしやさん』ファンも楽しめる隠れたヒミツなどを、作者のなかやみわさんに伺いました。

  • どんぐりむらのぱんやさん

    出版社からの内容紹介

    どんぐりむらのぱんやさんは行列のできる人気店。でも、ぱんやのぱぱ・ままには、ある仕事の悩みが…。仕事と子育て、両方がんばるぱぱ・まま&けなげな子どもたちの、ちょっぴりホロリなあったか家族の物語。

取材に行ったパン屋さんがこの絵本のモデルそのものだったんです。

─── 今回は前作と同じ「おしごと」をテーマに扱いながら、同時に「家族」もテーマとなっていますよね。そもそも、パン屋さんを取り上げようと思ったのはどうしてですか?

実は今回、「ぱんやさん」に決まったのは出版社である学研サイドからのリクエストだったんですよ。
「どんぐりむらの次のお仕事はパン屋さんがいいです!なかやさんの描くパンは絶対美味しそう!」って。
本当は私、パンよりもご飯党だったので、最初は「え、パン…?」という感じで、あまりピンとこなかったんですが (笑)。でも、その様子を感じ取ったのか、担当編集者さんが「まず取材に行きましょう」と場所を決めてくれて。そこで、初めてパンのできる工程を見せてもらったんです。

─── 取材に行く前に、おはなしのプロットとかはできていたんですか?

それが全然できていなくて(笑)。「どうしよう…」という感じで、取材に行きました。でも、幸運なことに取材に行ったパン屋さんから作品が生まれるきっかけをいただきました。

─── …といいますと?

取材に行ったのは東京・阿佐ヶ谷にある「ロードベーカリー」(http://www.panya.co.jp/)というお店で、戦後すぐにオープンした、本当に地元密着の町のパン屋さん。ちょうど、取材したときは、3代目の若夫婦がお店を継いだばかりだったんです。後を継いだばかりのご主人に色々お話を伺ったんですが、その中で、自分が小さい頃、日曜日はお店があるので家族で出かけることができなくて、友達が日曜日に家族で出かけたなんて話を聞いて寂しい思いを沢山した。だから、「僕は絶対にパン屋にはならない」と思っていた…ということを話されて…。そこから今回のパン屋さんのストーリーが生まれたんです。

─── ご主人はくっぺくんだったんですね。

そうですね。ご主人は、くっぺくんであり、ぱんやさんのパパでもあるのです。
そのご主人に「では、どうして後を継いだんですか?」って聞いたのですが、ご主人本人にも「わからない」と。一度もお父さんにパン屋を継いでくれとは言われていないのに、自然に「パン作りをやってみたいって思った」そうなんです。それを聞いて、お店をやるって言うことは、家族ぐるみのことなんだって感じました。お店で働くお父さんとお母さんのその背中を、子どもは一番近くで見ていて、その職業に対する愛着や働いている親への尊敬の気持ちを知らず知らずのうちに感じ取るのだろうなぁと思いました。そういう、お店をやっている家族の姿を、絵本で伝えたいなと思って、この作品が生まれました。

─── なるほど…。その思いが今回のパン屋さん一家という形になったんですね。
今回の『どんぐりむらのぱんやさん』にも前作同様、楽しめる工夫がたくさん用意されていますが、まずは前作『どんぐりむらのぼうしやさん』で募集されていた、帽子デザインの発表ですよね!

はい。読者の皆さんから本当にたくさんのご応募をいただいて、ありがとうございました。
すごく嬉しかったです。どれも、すてきなわくわく帽子で、皆さん一生懸命工夫して描いてくださっていて…編集者さんと一緒に悩んで悩んで…最終的に10個の帽子を今回の絵本に登場させました!

─── 応募いただいた作品と比べてみると分かるのですが、非常に忠実に再現されていますよね!
そして帽子がどれも個性的で、可愛いデザインばかり!

選ばれた作品の応募はがきです。力作ですよね!

そうなんです。一応、どんぐりむらの世界にマッチした素材で作られているという基準を作って選んだんですが、応募した子どもたちに「私の帽子はこんなふうじゃない」って言われないように、忠実に描くことを心がけました。
「めがねつき帽子」や「およめさん帽子」など、アイディアが本当に面白くて、可愛いですよね。
今回のどんぐりぼうしコンテストに応募していない子や選ばれなかった子たちも楽しめるように、どんぐり新聞で受賞した帽子を紹介して、絵本の中で探してもらえるようにしているんですよ。

─── この「どんぐり新聞」も前回よりもさらにパワーアップした充実度ですよね。

ありがとうございます。今回のどんぐり新聞では、「ぱんやさん」の後日談が載っていたりするので、是非じっくり読んで楽しんでもらいたいですね。それからこれは『どんぐりむらのぼうしやさん』のときの新聞なんですけど、ここに『どんぐりむらのぱんやさん』で出てくる「どんぐりぱん」が登場しているんですよ。

前作の「どんぐり新聞」より

─── あ、本当に!限定30個って書いてありますね。
え?じゃあ、1作目の『ぼうしやさん』のときからどんぐりぱんは登場させる予定だったんですか?

それが先ほどもお話したように、取材をするまでおはなしの内容は決まっていなかったので…。実はこの新聞に「限定30個」って書いていたことから、最後のあのディスプレイを思いつきました。

─── なるほど。このディスプレイも子どもたちの失敗をいい形で生かしているところが素敵ですよね。新作がすごく「特別なパン」という感じが出ていますし。

それと、くっぺくんとこっぺちゃんがお手伝いしているというところでも、家族でお店をやっている良さや意味を出したかったんです。
そうそう、このどんぐりぱんですが、どんぐり新聞に載っているHPにアクセスすると、作り方を見ることができるんです。これはパン料理研究家 片山智香子さんというプロの方にご家庭でも簡単に作れるレシピをお願いしたので、お母さんにぜひチャレンジしていただきたいです。

『どんぐりむらのぱんやさん』どんぐりぱんレシピ大公開!!>>>

─── 子ども達は絶対喜びますね!一緒に作るのも楽しそう〜。

磯崎さんも息子さんと一緒に作ってくださいよ。

─── そ、それはちょっと…。プレッシャーかけないでください〜〜〜(焦)。

ここだけの話…帯に実はお金がかかってます(笑)

─── 気を取り直して…。
今回もカバーの袖部分を使ってお店屋さんが出来るようになっていますが、『どんぐりむらのぱんやさん』はさらに素敵な出来ですよね。

この大きさの中で組み立てられるようにするのが、プロの技ですよね…。ただ、パンの数がカバー袖だけでは少なかったので、帯にもパンを描かせていただきました。
…正直、帯は5色を使っているんですよ。

─── 5色?!
(通常、絵本の印刷はシアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4色を使います)

はい。それと通常、絵本のカバーや表紙にはPP(ピーピー)フィルムというフィルムを貼って、丈夫さを保つ「PP加工(ピーピーかこう)」を行うのですが、それがこの絵本では帯の両面に加工が施されているんですよ。

─── それは、ものすごく贅沢な作りなのではないですか?

普通、絵本でも、まずやらないですね…、帯に5色使うのは。でも今回は「これは5色でやりましょう」って出版社の方が乗ってくれて実現しました。しかも、「帯が切れたら困るので、丈夫にするため、裏にPPかけましょう」って。その心遣いにとても感動しました。帯の裏PP加工なんて、たぶん誰も気づかない部分なんですが…、この記事を読んだ絵本ナビ読者さんだけが知っている情報です(笑)。

─── なんか、すごい…。絵本に対するプロの意識を見せていただいた気分です…。

それと、袖の部分のお店屋は、最終的には全作そろうと、どんぐりむらになるように考えて作っているんです。最後は「どんぐりむらマップ」を作るのが目標ですね。

カバー、帯、見返し…今回もかなり楽しませてくれます

親の仕事を一緒に体験!親子でコミュニケーション

─── 私自身、働くママとして、このおはなしのどんぐりママの姿に「あ、そういうこと、あるある!」とものすごく共感してしまいました。

子どもを保育園に送り出すときの、ものすごいスピードで自転車を漕ぐところとかですよね(笑)。

─── はい。この弾丸のように、殺気立っている姿…まるで自分を見ているようで…(笑)。

今回、描きたかったもののひとつが働くママと保育園に預けられる子どもたちの姿です。
読者の子どもたちは、パン屋さんのママと自分のママをリンクさせて考えるだろうから、そうすることで「働くママの子は、保育園に預けられてかわいそう」というマイナスイメージを払拭してもらえるんじゃないか…と思って描きました。

─── レビューにも、パパとママが子どもとの約束を破ってしまう場面で、「かわいそう」と感じている方と、「家も同じで…」と実体験とダブらせて考える方がいて、その感じ方の多様性がすごい興味深かったです。

やっぱり仕事をしていると色んな事情があって、子どもの約束を破ってしまうこともあると思うんです。…私も息子に我慢させることが沢山ありましたし…。でも、それを「かわいそう」と決めつけるのではなく、『どんぐりむらのぱんやさん』では、親の仕事を一緒に体験することでコミュニケーションを取っていたり…、子どもを入れた全員が家族の一員で、一生懸命生きているんだよという事実を知ってほしいと思ったんです。

シリーズものって苦しいんです…

─── 『どんぐりむらのぱんやさん』では、2作目ならではの楽しさと苦労があったと思うのですが…?

そうですね…。でも、続きものってどちらかといえば、苦しみの方が多いんですよ。続けば続くほど苦しくなる…だから、きっと次はもっと苦しいと思うんですよね(笑)
でも今回はロードさんという、いいモデルさんがいたので、かなり助けられました。

─── なかやさんの作品には『そらまめくん』や『くれよんくろくん』などのシリーズが多いですが、今回、作品の作り方などで変えているところなどはありますか?

『どんぐりむら』と今までのシリーズとの決定的な違いは、毎回主人公が変わるところです。どんぐりむらの持つ雰囲気を崩さないという大前提はありますが、気持ち的に毎回、新作を作っているような感覚でいます。それと、今までの作品は自分が伝えたいことを中心におはなしに落し込むことが多かったんですが、『どんぐりむら』はいろんな方の意見やアンケート、子どもに人気の職業などをしっかりとリサーチして、総合的な見地からの作品作りを意識しています。
作家としては自分の伝えたいことや表現したいことが作品を生み出す元になっている部分もあるので、個人の思いだけでは作れないこのシリーズはアイディアが出ないときは本当に苦しいです…。
でも、私はどんぐりむらを通して、子どもたちにいろいろな職業に興味を持ってもらって、「大人になったらこれになりたい!」と希望を持ってほしい、そのきっかけとなるシリーズを作りたかったんです。

ラフも見せていただきました!ほぼ完成作品と同じイメージなんです。 厨房は取材されたパン屋さんを忠実に再現されているそうですよ

─── なりたい仕事と出会えることは、とても幸せですよね。
ちなみに、次回作はどんなお仕事がメインになるのか、もう決まっているんですか?

一応お仕事は決まっているんですよ。お話もだいたいは…。
お仕事のヒントは…。前の2作にちょろちょろ出ているどんぐりです(笑)。

─── そうなんですか!私の中では、3つくらい候補があるのですが…(笑)。色々想像するのも楽しいですね。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

これからも、『どんぐりむら』シリーズを読んだ子どもたちが、「将来、何になろうかな」「こんなお仕事もすてきだな」と「仕事」に対して、良いイメージを持ってもらえるような絵本を描いていきたいと思います。応援よろしくおねがいいたします。
それから、読者のママの皆さん、私も同じく子育て中のママなので、お互い子育て頑張りましょう!(笑)

─── 私も子育て、頑張ります!
今日は本当にありがとうございました。

この人にインタビューしました

なかや みわ

なかや みわ (なかやみわ)

埼玉県生まれ。女子美術短期大学造形科グラフィックデザイン教室卒業。企業のデザイナーを経て、絵本作家になる。主な絵本に「そらまめくん」シリーズ(福音館書店・小学館)、「ばすくん」シリーズ(小学館)、「くれよんのくろくん」シリーズ(童心社)、「どんぐりむら」シリーズ(学研)、「こぐまのくうぴい」シリーズ(ミキハウス)など多数ある。愛くるしく魅力的な登場人物を描いた絵本作品は、子どもたちの絶大な支持を受けている。

(インタビューを終えて)

─── 前作『どんぐりむらのぼうしやさん』を読んで、うちの金柿が非常に感銘を受けているんです。工夫をして、試行錯誤をしていくぼうしやさんの様子に、「ビジネスの本質が描かれている!」と熱く語っておりまして…(笑)。それを、なかやさんにぜひお伝えしたくて。

ありがとうございます。他の書評でもそのように書いていただいたことがあって、とっても嬉しいです。

─── なかやさんご自身が絵本を作るときに、チャレンジしていることはどんなことがありますか?

プロとして出した物は確実に売るということですね。初版で終わる本は作らない。絵本って決して安いものじゃないですよね。買って損をしたとは思ってほしくないんです。絵本を買って良かった、得をしたという気持ちを読者の方に持ってもらいたい。そんな使命感は強く感じていますね。

─── なかやさんの中でその意識に近いと感じられる作家さんはどなたですか?

児童書界の中では原ゆたかさんでしょうか…。『かいけつゾロリ』の最初から最後まで飽きさせない工夫、原さんのサービス精神はすごいですよね。そのサービス精神、見習いたいと思っています。

─── なるほど…。どんぐりむらシリーズにも読者の方へのサービス精神が強く感じる訳が分かりました。これからも絵本界のキーマンとして、なかやさんの作品を楽しみにしています!
今日は本当にありがとうございました。

(編集協力 木村春子)

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