
ウエスト・ブルークの町には、マイヤーさんという犬の捕獲人がいます。のら犬をつかまえ、時には飼い犬でも、病気の犬、引っ越し先に連れていけなくなった犬、人にかみつくような犬などをどこかに連れていく仕事です。依頼を受けると、マイヤーさんは黒いトラックに乗ってやってきて、そのトラックに乗せられた犬は、二度と町に戻ることはありません。そんなマイヤーさんを、町の人たちは恐れていました。
ある日、ノディンさん一家に、小さくて白いかわいい子犬がやってきました。ノディンさん夫婦とふたりの子どものサラとトムは、子犬がとても気に入って「バターボール」と名づけてかわいがります。けれども子犬はみるみるノディンさんと同じぐらいまで大きくなり、力の強いいたずらっ子に。手に負えなくなった一家は、ついにマイヤーさんを呼ぶことにしてしまいます。はたしてバターボールの運命は、どうなってしまうのでしょうか。
かわいらしい犬たちと、いかにもこわそうな捕獲人のマイヤーさん。はたして連れていかれた犬たちやバターボールがどうなってしまうのか、とっても心配になってしまいますよね。けれどもそんな心配がありながらも、物語のあちこちにはユーモアがいっぱい散りばめられていて、笑ってしまう場面もたくさんあるんです。役に立ちたくて逆に騒ぎを起こしてしまったり、褒められたのが嬉しくて調子に乗りすぎてしまったり……。純粋だからこそ意のままにつき進むバターボールはじめ犬たちの無邪気な行動にはたまらない愛らしさも感じてしまうことでしょう。「バターボール ものをはこびすぎる」「マイヤーさんのひみつが ばれる」……など、11章ある目次にも読む期待が高まるようなユーモアが込められていて、訳者の小宮由さんがこの物語のユーモアをたっぷりと引き出すように訳されたことが伝わってきます。
さらにkei saitoさんが描く挿絵は、ころころとした犬がとってもかわいらしく、犬も人も表情がとっても豊か。挿絵にも思わず笑ってしまうような場面がいくつもありますので、ぜひ注目してみてくださいね。個人的には、五匹の犬が元の家を求めて帰る後ろ姿がお気に入りです。
子どもたちのこうだったらいいなという切なる願いがかなうような心温まる物語。お子さんに読んであげるなら4歳ぐらいから。ひとりで読むなら2、3年生ぐらいがおすすめです。たっぷり心を動かすことを楽しみながら読んでみてくださいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

ノディンさん一家に、かわいい子犬がやってきました。 名まえは、バターボール。 小さかったバターボールは、どんどん大きくなって、いたずらをくりかえすようになり、 ノディンさんたちをこまらせてしまうことに。 ある日、とうとう犬の捕獲人マイヤーさんが、やってきました。 一ど、マイヤーさんにつれていかれた犬は、もう二どと会えないのです! いったい、バターボールは、どうなってしまうのでしょう?
人と犬が心をかよわせる、たのしくて、心あたたまる物語。
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