
「ねえ、お願い、お話して!」 今回、ぼくがおじいちゃんにお話してほしいとお願いしたのは、おじいちゃんが8才の時に、もう少しでクリスマスをお祝いできなくなりそうだったという話。それはおそろしい事件でクリスマスが怖くなってしまうから話さない方がいいというおじいちゃんに、ぼくはお話して! とせがみます。
そうしてはじまったのは、あるクリスマス・イヴの夕方から夜にかけてのお話。 友だちとこおった池でスケートをした帰り道、森をぬけて近道で帰ろうとしたおじいちゃんの前にあらわれたのは太っていて髪がボサボサの魔女に、ガイコツのようにやせていて足のない魔女、大きな鼻にイボがありするどい目をした3人の魔女。あまりの恐ろしさに慌てて木によじ登って隠れたつもりのおじいちゃんでしたが、すぐに見つかってしまい、魔女につぎつぎに魔法をかけられます。いろいろなものに変身させられた挙句、最後にはブタの姿に……。このままでは家に入れないし、もちろんクリスマスのお祝いにだって間に合いません。せっかく魔女から逃げてきたおじいちゃんでしたが、元の姿に戻してもらうため、魔女の家へと向かいます。
これはなんという絶対絶命の状況なのでしょう。意地の悪い魔女がすんなり元に戻してくれるとは思えないし、おじいちゃんは、いったいどうやって助かったのでしょうか。
『おじいちゃんの おばけのはなし』で登場したおじいちゃんが、またとっておきの怖〜いお話を語ってくれる『おじいちゃんの 魔女のはなし』。著者のジェームズ・フローラさんは、1940年代から80年代にかけて活躍したアメリカの作家で、夜子どもたちを寝かしつける時にいつも即興で物語を語っていたのだそう。その中から本作のようなドキドキワクワクするお話が生まれたのですね。翻訳を手がけられた小宮由さんの文はリズム感があり、声に出して読むと誰もが楽しい語り手に早変わりしたように気持ち良く声が乗っていきます。怖いお話でもあるので、語り手が案内人になってくれることで、子どもたちも安心して物語に入っていけることでしょう。お母さんだけでなく、お父さんやおじいちゃんに読み聞かせに挑戦してもらうのもいいですね。大好きな人たちの声で語られるお話を耳で聞きながら、子どもたちにはあちこちにユーモアが込められた挿絵をたっぷり楽しんでほしいと思います。
大人はお話を語る楽しさを、子どもは人からお話を聞く楽しさを体験することのできる、おじいちゃんのお話。ぜひ『おじいちゃんの おばけのはなし』と合わせてお楽しみください。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)

あるクリスマス。おじいちゃんが話しはじめたのは魔女と出会った怖いお話。魔女の魔法でブタの姿に変えられたおじいちゃんは、どうやって助かったのか…。怖い…、でも続きが気になってお話に引き込まれていきます。
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