
「ドドット、ドドーン。 ドドット、ドドーン。」
滝つぼにいるガマが目にしたのは、激しく流れ落ちる水めがけて突進していくイワナの姿。くり返し滝を登ろうとしては、半分も行かずして落ちてくるのです。
「いつか、のぼっていける気がするんだ」
夏になっても挑戦し続けるイワナの言葉に呆れ、怒りさえ覚えていたガマですが、その心はいつしか憧れに変わり、好きになっていきます。そしてある大嵐の日、イワナは滝の中ほどでキラッと体を光らせたかと思うと、ついに滝を登っていったのです。残されたガマは、何日も滝を見つめ、イワナの言葉を思い出しているうちに、心の中でポッと燃え立つものがあり……。
ともに第73回小学館児童出版文化賞を受賞された児童文学作家最上一平と二人組の絵本作家ザ・キャビンカンパニーの最強タッグにより生まれたこの絵本。傷だらけになりながらもひたむきに頑張るイワナ、その姿に触発されて思いもよらぬ行動をとるガマ。どうしてそこまで夢中になれるのか、夢を叶えた先にあるものは何なのか。そのストーリーに読者の心はどうにも掴まれてしまい、その先に広がる光景に唖然としてしまうのです。
迫力がありながらユーモラスでもあるガマとイワナの表情、次々に姿を変えていく豊かな水の表現、まるでそれぞれが一枚の屏風絵の様に豪華で印象に残る自然の風景。それらの絵とともに、年齢や置かれた環境、タイミングによって変化していくであろう見え方や味わい方をじっくりと楽しんでもらいたい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)

滝を登ろうとしては、途中で落ちてしまうイワナ。ガマは「登れっこないよ」と呆れつつも、イワナのひたむきさに憧れもしていた。そして、ある大嵐の日、ついにイワナは、滝を登っていってしまう。残されたガマがとった行動は?

未知の世界へ
失敗しても失敗しても、傷だらけになっても、滝を登って上の世界を見てみたいと語るイワナの気合いに圧倒されました。
イワナは挫折を知らないのです。
ひたむきに信念を通そうとします。
この愚直さを笑ってはいけません。
一方イワナが姿を見せなくなって、ガマも滝の上を目指すことにしました。
ガマは滝に向かうのではなく、ただひたすらに歩き続けます。
こちらも根気のいることです。
そして滝の上の世界にたどり着いた時、目の前にあるのはとんでもない光景でした。
とんでもない数のイワナとガマを見たとき、ガマはどう思ったでしょうか。
達成感と自信でしょうか。
やり遂げたものだけが味わえる至福の時間でしょうか。
そう考えると語る、最後の絵は意味深です。
どちらが現実なのだろうかと思いつつ、チャレンジャーなることの孤独も感じました。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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