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作: 風木 一人 絵: 田中ひろみ  出版社: KADOKAWA KADOKAWAの特集ページがあります!
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連載

【連載】せなけいこさん 絵本作家デビュー50周年おめでとう! せなさんを囲む人たちインタビュー

2019/08/15

第4回 ポプラ社 小堺加奈子さんインタビュー

第4回 ポプラ社 小堺加奈子さんインタビュー

まん丸黒ぶちめがねをかけたうさぎの「うさこ」と、お人よしのおばけが人気の「めがねうさぎ」シリーズ(ポプラ社)。
ポプラ社編集部の小堺加奈子さんは、子どもの頃から「めがねうさぎ」の大ファンだったのだそうです。
せなさんと10年以上に渡り絵本を作り続けてきた小堺さんにせなさんとの出会い、せなさんの魅力についてお話を伺いました。

●息子を思う母の気持ちから生まれた『めがねうさぎ』。
――「めがねうさぎ」シリーズについては、シリーズ40周年記念のときに絵本ナビでもお話をお伺いしたことがあります。
めがねうさぎのモデルはせなさんの息子さんなんですよね。
はい。息子さんが小学校に上がってめがねをかけなくてはいけなくなったとき、母として、息子さんの気分が落ち込まないように「めがねをかけることは楽しいことなんだよ」というおはなしを作ろうと思ったのがきっかけだったそうです。
どうしてうさぎにしたのかは、『めがねうさぎ』35周年のときに、せな先生からコメントをいただきました。
『めがねうさぎ』の由来が書かれているせなさんからの手紙。
私のえほんにウサギとオバケが多いのは、それが好きだったからです。
子供のころ、学校でウサギ当番をやったほどです。
オバケの方は飼ったことはありませんが、それは息子のため。
まだ三つくらいの息子がテレビで「ゲゲゲの鬼太郎」に夢中になり、毎日見ていました。
こわいんだけど好き! ママとなりに居て!」と言うので、そんなにこわいんならストップしましょう」と言うと「ううん、見たいもん!」私自身は子供の時から伝説は好きでしたけど、日本のオバケに熱中したのは子供の影響です。
そして、ウサギがめがねをかけているのは、息子が小学校2年からめがねをかけ始めたからです。
息子も娘も、私に絵本のモデルにされるのはいやだそうです。
常識的にオバケはこわいもの、ウサギは弱いものと言われていますが、そんな事はありません。
私の飼ったウサギは2匹とも強気でした。オバケは飼ったことないので???
(原文ママ)
―― とっても素敵なメッセージですね。
『めがねうさぎ』が出版されたのが1975年。そして続編の『おばけのてんぷら』が1976年に出版されています。
おばけのてんぷら』もお子さんとのやり取りから生まれた作品です。
お子さんがとてもてんぷらが好きで、先生はいつも台所でてんぷらを揚げて、そのままお子さんに出していたんだそうです。
「次、エビ!」「ぼくは、おいも!」ってリクエストを聞きながらてんぷらを揚げるのは、お子さんも先生もとても楽しかったんでしょう。
絵本にうさこが「てんぷらは あげたてが いちばん」って言っているのですが、まさに先生たちもそう言いながら食べていたんだと思います。
―― てんぷらを揚げて食べているうさこの表情がとても幸せそうで、絵本を読み終わったら、家でもてんぷらを揚げて食べたくなります。
誰もが共感できる楽しさが、長年読み継がれる理由のひとつなのかもしれませんね。
刊行当時は、まだ文章が先行してそれに挿絵がつくような絵本が主流だったそうです。
そこで、小さい読者が楽しめるような、絵と文章が一体となって展開する新しい絵本を作ろうという思いのもと、ポプラ社では「絵本のひろば」というシリーズを立ち上げました。
『めがねうさぎ』はその9冊目として出版された作品です。
この「絵本のひろば」シリーズの中には、のちにベストセラーとなる『ねずみくんのチョッキ』もありました。
―― 今も子どもたちに愛されている作品を、作家さんや編集者さんたちが強い思いを持って作っていたのですね。
それから3冊目の『めがねうさぎの クリスマスったらクリスマス』が出版されるまでに20年近く間が空いています。
私が新入社員としてポプラ社に入ったとき、めがねうさぎの続編を描いてくださることが決まり、その準備が始まっていました。
『めがねうさぎ』が春の話、『おばけのてんぷら』が秋の話だったので、夏と冬の話を描いてくださいとせな先生にお願いしたと先輩編集者から聞いています。
編集者としてせなさんと作品を作り続けてきた小堺加奈子さん。
―― はじめてせなさんにお会いしたときのことは覚えていますか?
はい。私は子どもの頃から『おばけのてんぷら』が大好きで、先生のファンだったこともあって、打ち合わせの場に同席させてもらい、そのまま担当ということになりました。
はじめて先生のお宅に伺ったとき、先生は、風格漂う感じで座っていらして、私はただただ緊張でドキドキしていました。
すると先生が一言、「私は原稿を1日も遅れずに出します。でも、あなたが1分でも取りに来るのが遅れたら、渡しませんよ」っておっしゃったんです。
その一言で、せな先生のファンの気持ちでいた私は吹っ飛んでいきました。
私はもう、作り手側なんだという責任を感じました。
―― すごく重い一言ですね。
でも、「それぐらいこちらも真剣にやりますからね」と、新人編集者にもしっかりと向き合ってくださる先生のプロ意識と愛情を感じました。
先生のお宅に打ち合わせに伺うのも、最初はとても緊張しましたが、その後、一緒に古書店を回ったり、美術展に行くようになって……。
お陰様でせな先生と20冊以上絵本を作らせていただけるようになりました。
●『おばけなんてないさ』で描きたかったワンシーン。
―― せなさんと作られた作品の中で、特に思い出深い作品について教えていただけますか。
そうですね……どれも思い出がたくさんあるので迷ってしまうのですが……ひとつは『おばけなんてないさ』です。

おばけなんてないさ おばけなんてないさ」 作・絵:せな けいこ 出版社:ポプラ社

誰もが歌ったことのある童謡「オバケなんてないさ」が、せなけいこのユーモアあふれる貼り絵で楽しい絵本になりました。楽譜つき。

―― せなさんは絵も文もご自身で作られる絵本が多いですが、これは歌が元になっていますね。
先生は本と同じくらい歌もお好きなんです。
特にイタリアやドイツの歌、オペラ、日本の童謡も大好きで、お酒を飲んでちょっと気分良くなると、すぐ歌いはじめます(笑)。
その中でも「オバケなんてないさ」は特別にお好きで、しょっちゅう歌われるんです。
この歌を絵本にしたいというのは先生のご希望だったのですが、「れいぞうこにいれて カチカチにしちゃおう」というシーンが描きたくて……とおっしゃっていました。

―― この歌を作曲された峯陽さんは、『あっちゃんあがつく たべものあいうえお』の元の歌を作られた方でもありますね。
実は、『おばけなんてないさ』を出版した後、峯陽先生とせな先生は直接会われているんです。
弊社にお越しいただいて、一緒に「オバケなんてないさ」を歌いました。
峯陽さん(左)との2ショット。
―― 峯陽さんと一緒に並んでいるせなさん、とても嬉しそうです。
せな先生が着ていらっしゃるのはお子さんとおそろいで買ったお気に入りのうさぎ柄セーターです。
当日は峯先生から「オバケなんてないさ」が生まれる秘話も伺ったのですが、この歌は、当時、峯先生と保育士をしていた槇みのりさんが、子どもたちの前で「おばけなんて〜」「ないさ〜!」と掛け合いをして遊びながら即興で作ったものなのだそうです。
せな先生も目の前に子どもがいるように作品を作るやり方で絵本を生み出している方なので、この歌と先生の絵本が出合うことは必然だったのかもしれないなぁ……とお話を聞きながら思いました。
―― 「おばけなんてないさ」も「子どもなら ともだちになろう」と言っていますものね。
この作品を作るときにせなさんとどのようなやり取りをされたのですか?
表紙のラフが残っているのですが、最初は、おばけが1匹でシルエットのみを先生はイメージされていたようなんです。
ところが、何回目かの打ち合わせで、このおばけがおばけを驚かしている今の表紙のアイディアが出てきました。
先生曰く、これは親子のおばけで、大人が子どもに人間の驚かし方を教えている場面なんだそうです。
おばけ同士でもおどかし合うというのが、せな先生らしいユーモアですよね。
『おばけなんてないさ』表紙のラフ2案。
―― もしかして、せなさんの作品に出てくるおばけは、みんな半人前の子どものおばけなのかもしれないと思いました。
そうですね。基本的に先生の作品に出てくるおばけはまだ一人前に人をおどかせない、子どもおばけなんだと思います。
だからいつも失敗してしまうし、うさぎとも子どもとも友だちになれるんです。
―― 自分たちと同じように子どものおばけもいるって知ったら、子どもたちはもっとおばけが大好きになりますね。ほかに印象的な作品はありますか?
先生は読者の声をとても大事にされているというエピソードとして『ぼくはかさ』をご紹介したいと思います。

ぼくはかさ ぼくはかさ」 作・絵:せな けいこ 出版社:ポプラ社

ぼくはかさ。たろうちゃんのおきにいりのかさだよ。だけど、このごろたろうちゃんは……。せなけいこがおくる、人気シリーズ第3弾。

この絵本の中に、主人公のたろうちゃんがおばけの絵本を読んでいるページがあるんです。
あるとき、読者の方からそのページに出ている『どろどろ』という絵本は出版されていないのですか?というお問い合わせをいただいたことがありました。
そのお話を聞いたせな先生は、本当に『どろどろ』という絵本を作ってしまわれたんです。
読者の声で生まれた絵本『どろどろ』。
―― 絵本の中にご自身の作品を登場させる絵本作家さんはいらっしゃいますが、そこから新しい絵本を作られるのはすごく珍しいことですよね。
「一人でも『読みたい』と言ってくれるお子さんがいるなら、応えなきゃ」というのが、せな先生の思いなんです。

どろどろ どろどろ」 作・絵:せな けいこ 出版社:ポプラ社

ユーモアあふれる内容が多いせな先生の絵本の中でも、メッセージ性を強く持っている作品が、『おひさまと おつきさまのけんか』です。
これは、戦争を体験されている先生が、どうしても出版したいと強く願って出された作品です。
いつものせな先生の作品だと思って手に取られた方はかなりドキッとされると思います。
編集段階でのエピソードをお話しますと、先生から頂いた最初のラフは、「なんにも なくなった まっくらな そらの したで ちいさな どうぶつが ないていた」という場面で物語が終わっていました。
ただ、そこで終わってしまうとあまりにも救いがなくなってしまうので、先生にお願いして、「これは どこか とおい よその うちゅうの はなしだよ」という一文を足してもらったんです。
―― その一文があるおかげで、子どもはホッとするかもしれませんが、大人にはせなさんのメッセージがしっかりと伝わるように思います。
そうですね。大人の方には直に感じてもらって、お子さんも大人になったときに読み返してみて、せな先生からのメッセージを受け止めてもらえたら良いなと思っています。
―― 『おひさまとおつきさまのけんか』以外では『メロウ』もせなさんの絵本の中では珍しいおはなしなのではないかと思いました。
『メロウ』は先生がアイルランド民話が大好きなことと、すでに原画があったこともあり、絵本にさせていただきました。
先生は特に主人公ジャック・ドガティーが大好きで「かっこいいのよね」といつも言っていました。
なので、絵本ができたとき、表紙のジャックを切り抜いて、先生のリビングに貼らせてもらいました。
「これならいつでもジャックと一緒ですよ」とお伝えしたらとても喜んでいましたね(笑)。

メロウ −アイルランド民謡− メロウ −アイルランド民謡−」 再話・絵:せな けいこ 出版社:ポプラ社

アイルランドに昔から伝わる人魚「メロウ」の物語を、
「めがねうさぎ」のせなけいこが独自の語り口と精巧な切り絵で描きます。

●先生から見た世の中はすごく刺激的で面白いんだろうと思います。
―― 絵本のお話だけでも十分せなさんの魅力は伝わってきたのですが、小堺さんが知っているせなさんの秘密を教えていただけますか?
先生の面白エピソードならいくらでもお話しできます(笑)。例えば、先生は手袋とかボタンとか、よくなくしものをされるのですが、その度に「すぐ逃げるてぶくろのおはなしを作ろうかしら?」「居場所のないボタンって絵本ができるわね」っておっしゃるんです。
きっと先生にとって、身の回りのこと全てが物語の題材になる可能性を秘めているんだろうなといつも思います。
―― お子さんとのやり取りだけでなく、ご自身の体験まで、せなさんにかかると、全てが絵本になってしまうんですね。
本当にそうなんです。せな先生の目から見ると、世の中ってきっとすごく刺激的で面白いものなんだと思います。
●「私はタブロー画家ではなく、絵本作家だから個展はやらない」
―― 2019年から2020年にかけて全国各地で「せなけいこ展」が開催されます。
「めがねうさぎ」シリーズの原画や、制作で使用した紙などが会場に展示されると伺いました。
うさこの洋服のチェック柄は、せな先生のお家の近くにあった文房具屋さんの包装紙です。
実は『めがねうさぎの  うみぼうずがでる!!』のときに、紙の在庫がなくなってしまい、水着がチェック柄と緑のツートンカラーになっているんです。
―― そういう理由で水着の柄が洋服と違っているんですね。
幸い、その後、せな先生のお宅に紙が残っているということが分かったのですが、当時は「うさこの紙がなくなってしまったから、おはなしもこれでおしまいよ」っておっしゃっていました。
『めがねうさぎの うみぼうずがでる!!』の表紙とラフ(左)。
―― せなさんは、包装紙以外にもチラシや包み紙などいろいろな素材の紙を使われて作品を作られていると聞きました。
新しい紙をせなさんにお渡ししたりすることもあったのでしょうか?
それが、先生の中で、何かに使われた紙を使いたいというお考えがあるそうで、画用紙以外は、使用済みの包装紙や封筒が使われています。
どんな物でも大切にされる方なので、役目が終わったものに新たな役割を持たせたかったのだと思います。新作のラフをいただくときも、必ずチラシの裏に描かれているんです。
それと、制作に使うものは、子どもがお店で普通に買えるものしか使わないというポリシーをお持ちで、ハサミも普通のハサミですし、のりも工作用ののりと決めていらっしゃいます。
―― 展覧会で、せなさんの道具を見られた方は、あまりにも身近にある道具ばかりでびっくりされるかもしれませんね。
そうですね。あと、先生は紙に筋をつけるときなど、カラスやハトの羽根を使うんです。
それも、お散歩のときに拾ったものを。以前、仕事道具の写真を撮らせてもらったときに、ノリやはさみと一緒に羽が出てきて、とてもビックリした思い出があります。
―― おはなしの種も道具も、生活の中にあるものを使われるのがとてもせなさんらしいですね。
展覧会について、せなさんとお話されたりしましたか?
先日、せな先生のお宅にお伺いしたのですが、展覧会のポスターがお家の中に大きく貼られていて、先生もとても楽しみにしているんだと思いました。
―― 子どもにも大人にも人気のせなさんの作品が、今まで、一度もこのように大きな展覧会が開催されてこなかったことがふしぎなくらいですよね。
展覧会が開催されなかったのには、先生のお考えがあったからなんです。
せな先生は、紙に印刷されて絵本になったものが作品という主義で、「私はタブロー画家ではなく、絵本作家だから個展はやらない」ということを常におっしゃっていました。
これは、せな先生の師匠である武井武雄さんの教えらしいんですけれど、長年、それを守ってこられました。
ただ、やはり今回はデビュー50周年という節目なこともあって、開催を喜んでいらっしゃるようです。
ビール片手に「おばけに乾杯!」とおっしゃっていました(笑)。
―― 私たち読者にとっても、せなさんの貴重な原画を拝見できることはとても嬉しいことですね。
最後に改めて、せなさんの作品の魅力を教えてください。
せな先生の作品は、入り口はとても身近なのに、リズミカルな文章と絵で、パッと見知らぬ面白いところに連れて行ってくれるんです。
公園のすべり台やブランコのように、乗った瞬間にフッと体が浮くような、非日常にフッと連れて行ってくれるところがとにかく魅力です。
一度味わってしまうと、もう1回! もう1回!と何度も味わいたくなる……でも、少しお休みしたいなと思ったときには、すぐに現実に戻ってこられる。
そういう読者に自由さがゆだねられているところが、私たちを惹きつけるんだと思います。
―― 非日常にすぐに行ける魅力は大人になって読んでも感じますね。
はい。私は子どもの頃せな先生の作品に出合って、編集者として先生と同じ作る側に立った今でもやっぱり、せな先生の絵本のファンでもあります。
私のように大人になった人も、今だからこそ改めて、せな先生の作品を読み返してほしいと思います。
子どもの頃読んだなつかしさと共に、新しい発見がきっとありますよ。
―― ありがとうございました。

※掲載されている情報は公開当時のものです。

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【連載】10周年でかえってきた! しごとば・取材日記 その4
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