タイトルからは予測のできない、衝撃的な絵本でした。
なんと、広島原爆をアリの目線から捉えているのです。
広島原爆の惨状を痛いほど目にしてきた者としては、ちょっと不謹慎な取り組みのように思えたのですが、後書きに付された1枚の写真がきっかけだと分かったら少し腑に落ちました。
長い間、自然は元には戻らないだろうと放射能の恐怖を語られていた中で、原爆投下直後の9月に、爆心地近くでカンナの花が咲いていたというのです。
汚染された花だったかもしれません。
でも、そこでしか咲くことのできない花の生命が生きていたことに驚きました。
地面の下にいたありたちも生きていたのでしょう。
毛利まさみちさんの切り絵は、ありやカンナの視点から、原爆の惨状を辛辣に描いています。
カンナは来年も咲いて、原爆のことを伝えようと締めくくられていました。