発売以来、じわじわと人気がひろまっている絵本『たぶん ほんと』。その文を手がけた間部香代さんの登場です。児童文学作家でありコピーライターであるほかに、雑貨ショップ「マッシュノート」のオーナーでもある間部さん。人気アーティスト、ナタリー・レテさんとの交友から生まれた『たぶん ほんと』は、ナタリーさんの日本初の絵本としても注目を集めています。これまでにない不思議な雰囲気をもつ、おしゃれな1冊。その魅力について、うかがいました。
世界中の人々を魅了するフランスの人気アーティスト、ナタリー・レテ。彼女の絵を存分に楽しめる日本で初めての本格絵本。ハッピーとユーモアとほんの少しの毒。気になる言葉と独創的な絵で綴る、15の「たぶん ほんと」。プレゼントにもオススメです。
───今日はよろしくお願いします。さっそくですが、『たぶん ほんと』は表紙がとても印象的ですね。ピンクの背景にフクロウがドーンといて、タイトルもなんだか不思議です。
ありがとうございます。
ナタリー・レテのイラストのなかでも、かなりインパクトのあるものを選びました。キノコの上に小さな犬がいたり、恐竜がいたり、ネギがささっていたり。もうメチャクチャですよね(笑)。
タイトルも、この無責任な感じが気になって、手にとってくれる方も多いようです。
本のサイズも、ギフトとして気軽に活用してほしいので、あまり大きくないほうがいいかと思って。絵本にしては、小さめにしました。
───この絵本はストーリーがあるのではなく、ページをめくるごとに『たぶんほんと』の言葉と、それに関連した絵が描かれているのですよね。このアイデアはどこから生まれたのですか?
ふつう絵本は、ストーリーや言葉が先にあり、それに合わせて絵を描きますが、この本は、絵はナタリーのこれまでの作品を使い、言葉もこれまでに私が書き留めておいたものを使い、それを組み合わせてつくりました。一部、例外もありますが、ほとんどがそうです。
組み合わせにした理由は、パリと東京という距離的なことや、時間的なこともありますが、ページをめくるたびに新しい世界がひろがるこのスタイルが、ふたりにとっていちばん力を発揮できると思ったからです。組み合わせの作業は、私がやりました。
───たしかにさまざまな世界を見ることができ、とても贅沢な感じがします。絵と言葉を組み合わせて1冊の本にするまでに、どんな工夫をされましたか?
ナタリーの絵は、古いものから新しいものまで、またシルクスクリーンからコラージュまで、できるだけ幅広く使うようにしました。言葉に関しては、私は作家になる前から長年コピーライターをしてきたので、コピーを書く感覚に近かったです。
ただナタリーの絵は、それだけでも十分伝わるものがあるほど強いし、私の言葉もキャッチコピーのように強い。ナタリーも同じことを言っていました。ですから、絵と言葉の距離感をとても大切にしました。近すぎてはつまらない、遠すぎてはピンとこない。ほどよい距離に置いて、読む人がそのまんなかに立てるような。これはコピーライターとして、ずっと広告を作ってきた経験が生きているかもしれません。なんちゃって(笑)。
───レビューコンテストでも、言葉への反響が多く寄せられましたね。みなさんの感想をご覧になって、いかがでしたか?
感激しながら、丁寧に読ませていただきました。「おとなは ときどき ものすごく おいしい チョコレートを たべたりします。ごめん ごめん。」というページは、多くの大人が共感してくれたようで、ヨカッタ!と思っています。これは、娘が5歳のころに「DEMEL」のチョコレートを少し食べさせたら、目をまん丸にして「お、お、おいしー! いつものチョコとぜんぜんちがうー」と言ったのを思い出して、書き留めておいたんです。
───印象的な感想はありますか?
私が心がけていたことをピタリと言い当ててくれた方がいました。それは「教訓めいてない」ということ。教訓やら道徳ではなく、ただただ、ものの見方や表し方のちょっとしたセンスで、読む人の感覚をくすぐりたかったんです。
またこの本は、大人が子どもに「読んであげる」のではなく「いっしょに読む」ことを想定していて、それに気づいてくれたレビューもあり、うれしかったです。
───後半の「ママを つくった ひとは、えらい。」から「ママを つくった ひとって、だれ?」のページ、そしていちばん最後の家族についてのページも反響がありました。いかがですか?
よかったよかった‥‥よかったよかった‥‥(笑)。
───親子だけでなく、大人の女性にも人気がありますよね。
そうですね。ナタリー・レテのファンの方を中心に、大人の方にもたくさん読んでいただいているようです。本を手にして、子どもの気持ちになったり、大人の気持ちになったり、自由に心を動かしてくれているそうで。絵本の醍醐味ですよね。