まあるい耳とまっかな鼻。しましま服に赤いスカーフを巻いた子犬、「ティニー」。ある日、大好きな黄色い風船を体に巻いたティニーはふわふわと空に浮かびあがって…。ティニーとふうせんどうぶつたちの冒険を描いた『ティニー ふうせんいぬのものがたり』が発売されました。発売を記念して作者である川村元気さん、佐野研二郎さんによるトークイベントが開催。イベントの様子と絵本ナビ独占インタビューをお届けいたします!
2013年12月16日、代官山にある蔦屋書店1号館のイベントスペースで「ティニー」の生みの親、川村元気さん、佐野研二郎さんによるトークイベントが開催されました。
文を担当された川村元気さんは、「電車男」「告白」「悪人」「おおかみこどもの雨と雪」などのヒット作を生み出す映画プロデューサー。2012年には『世界から猫が消えたなら』で小説家としてもデビューしました。
絵を担当した佐野研二郎さんはTVCMやグラフィックデザインなどで数々の作品を発表するアートディレクター。サントリーの「グリーンダカラちゃん」や日光江戸村のキャラクター「にゃんまげ」、TBSの「ブーブ」など、佐野さんのキャラクターを誰もが一度は目にされているのではないでしょうか…。
そんなお二人ですが、絵本を手掛けるのは初めてのこと。トークショーでは絵本を作ることになったきっかけのお話や、打ち合わせでの二人のやり取り、制作中に発見した絵本の魅力や苦労など、たくさんのおはなしが飛び交いました。
体に風船を巻いた「ふうせんどうぶつ」という面白いキャラクターは川村さんが子どもの頃に見た夢が発想の元となったのだそう・・・ということはこの絵本、構想30年!?
川村:この夢以外にもでっかいダンゴ虫に襲われる夢も見ていたんですが、それは宮崎駿監督が「風の谷のナウシカ」で先に映像化されていたので…(笑)。ティニーは他の人が思いつく前に完成させることができて良かったです。
主人公のティニーは打ち合わせを重ねるたびにどんどん変わっていったのだそうです。その回数、実に100回?!
佐野:川村さんがほめ上手なので、もっといいものを作ろうと思って。ティニーだけじゃなく、他のキャラクターも同じくらい描き直しをしましたね(笑)。
川村:結構大変なお願いをしたこともあったのですが、佐野さんの絵はどんなに直しても重くも暗くもならずにポップでありつづけるのが、すごいなと思いました。
そして、『Casa BRUTUS』での『ティニー』連載時のおはなしに。最初は雑誌での連載のみで、絵本化の予定はなかったそうです。しかし、読者の方から要望が多くあり、絵本として出版することが決定に!
雑誌掲載時のデザインイメージは市松模様。文章も大人を意識した少し長いものでした。
絵本化をするにあたり、文章と絵は大幅に修正されたそうです。
佐野:連載で一度完成しているので、多少の修正でも良いかと思うのですが、文章も書き直したんですよね。
川村:僕は、谷川俊太郎さんの絵本が大好きで、それがゆえに絵本の文章を書くのは非常に難しいと思っていました。絵本化にあたって、絵とのシンクロ感を再度考えたいと思ったとき、自然と文章も書き直すことにしました。
1時間半にわたるトークショーは連載時から絵本完成までの道のりをぎゅっと濃縮して見せてくれたような、とっても貴重な時間となりました。それぞれ業界の第一線で活躍されているお二人の、この場所でしか聞けない興味深いエピソードが飛び交い、特に、佐野さんのキャラクターづくりの原点が美大時代の卒業制作にあった…というおはなしには川村さんをはじめ参加者全員がビックリ!
お二人の絵本へのこだわりの深さにはただただ驚くばかりでした。
トークショーの最後には参加者の方からの質疑応答タイムとサイン会。
読者とも和気あいあいとした雰囲気の中で言葉を交わし、大盛況のうちにイベント終了となりました。
こんな素敵なイラスト入りサインも!→