独特な貼り絵のタッチと、ドキッとするようなストーリー展開で多くの子どもたちから人気を集めている絵本作家・せなけいこさん。『ねないこ だれだ』や『いやだ いやだ』(共に福音館書店)、『おばけの てんぷら』(ポプラ社)など、子どものころにせなさんの作品を楽しんだ方も多いのではないでしょうか? せなさんの半生をまとめた自伝的絵本『ねないこは わたし』(文藝春秋)がこの度、出版されました。発売を記念して、せなさんのお宅にお邪魔しました。貼り絵に使っている素材や、秘蔵の本なども見せていただいたとっても貴重なインタビュー。ぜひ、お楽しみください。
●『ねないこは わたし』 のみどころをご紹介します!
1969年に刊行されてから、いまだにあらゆる幼児に読み聞かせられる永遠の名作絵本『ねないこだれだ』。誰もが見覚えのある独特の貼り絵、そして夜更かししていた子どもが「おばけ」になって連れていかれてしまうという衝撃的なラストで、発行部数は200万部以上です。 実はこの絵本はせなけいこさんのデビューシリーズ4冊のうちの1冊でした。当時37歳、2児の母だった遅咲きのデビュー作が、決定的な代表作となり、せなさんはその後も「おばけ」の絵本を描き続けることになります。 その『ねないこだれだ』は、子どもを寝かしつけるしつけの本ではなかった、という驚きの告白からはじまる本書は、せなさんが初めて「自分のことを書いた絵本」。 各章では、デビュー4冊の『にんじん』『いやだいやだ』『もじゃもじゃ』『ねないこだれだ』などを入り口に、その独特すぎる世界、画風、文体やアイデアの源泉、そして本と絵への愛情をつづっていきます。 本書にはまた、貴重な貼り絵の原画の写真が満載。絵本作品ともひとあじ違う見え方で、さまざまな原画を楽しめます。誰もが知る名作はもちろん、絵本デビュー前の雑誌のカットまで、せなワールドをたっぷり楽しめます。 子育てをした人、子育てをする人、絵本が好きなこども、すべての人へ贈る、自伝的絵本。
100ページ以上の本では珍しく、すべてのページにふんだんにイラストが使われています。「おばけ」や「はんしろう」「ふうせんねこ」などのおなじみのキャラクターはもちろん、せなさんの紙芝居や幼児雑誌の挿絵など、珍しい作品まで。まるで画集のようにどのページも楽しめます。
せなさんといえば、やっぱり「貼り絵」! 『ねないこは わたし』の中には、せなさんの制作風景の一部が写真で紹介されています。「『ねないこ だれだ』の女の子が来ているパジャマは、封筒の裏。『ねがね うさぎ』の着ている緑の服は、お店の包み紙。」 身近にあるもので、こんなにステキな貼り絵ができるのなら、チャレンジしてみたくなりますね。
「『ねないこ だれだ』でおばけになって飛んでいきたかったのは、せなさん自身だった?」「“いい子にしていないと、ママに本にされちゃいますよ”が子どもたちの口癖だった?」など、絵本が生まれたエピソードが、たくさん。さらに、どのようにして絵本作家となったのかも紹介されているので、これを読めば絵本作家・せなけいこのすべてが分かる……かも?
● 編集者・高橋さんコメント
せなさんに自伝的絵本をお願いするきっかけは、宮藤官九郎さんのエッセイ『俺だって子供だ!』(文藝春秋)で、表紙を手がけていただいたのを見たことでした。その後、宮藤さんとせなさんの対談も拝読したところ、せなさんのお人柄や絵本への思い、子育てのエピソードが大変魅力的で、ぜひ、せなさんご自身のことを1冊にまとめたいと思いました。『ねないこはわたし』の制作中には、何度もせなさんのお宅にお邪魔し、お話しを伺いました。宝物の山ともいえる書庫の中から、原画やスケッチなどを見つけ、歓声を上げたこともありました。本書は、せなさんの子ども時代から、絵本作家になるまで、そして現在までのエピソードはもちろん、40年以上にわたる作品の原画を、すべてカラーで掲載しています。『ねないこ だれだ』や『おばけの てんぷら』など、せなさんの作品で育った多くの方に、手に取っていただきたい一冊です。
それでは、次のページから、せなけいこさんのインタビュー、スタートです。