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【長新太没後10年記念連載】 担当編集者&絵本作家インタビュー2016/03/24
今回、おはなし頂くのは大日本図書の當田マスミさんです。『みんなでつくっちゃった』を復刊したときのエピソードや、姪っ子さんに長新太作品を読んだときの反応など、當田さんが感じている長新太さんの魅力について伺いました。
●デザイン、判型を一新させ、復刻させた『みんなでつくっちゃった』
―― 長さんとは直接お話をされてないと伺ったのですが『みんなでつくっちゃった』を出版することになった経緯を教えてください。
『みんなでつくっちゃった』は、2014年11月に発行したのですが、実は復刊なんです。もともとは1974年に発行され、その後、長く品切れの状態が続いていました。 1974年というと、42年前ですね。私はまだまだ子どもで、長さんと一緒に絵本づくりをすることはできませんでした(笑)。 そして今回、復刊を決めたときには、長さんはすでにお亡くなりになって約10年という月日が経っており、長さんの絵本づくりに関われたものの、直接お会いすることはできませんでした。 でもそのかわり、と言ってはなんですが、長さんと長く深く親好のあった土井章史(※)さんに、『みんなでつくっちゃった』の復刊についてのご相談ができまして、長さんの絵本づくりについてのいろいろなエピソードを伺うことができました。 ※土井章史…トムズボックス店主。装丁家・小野明と共に絵本作家を養成する「あとさき塾」を運営し、酒井駒子や島田ゆか、どいかやなど、数多くの絵本作家を輩出する。 森に新聞がたくさん落ちていましたが、少したつとなくなっていました。「いばってあるく ねこのぼうしを みてちょうだい」新聞は猫の帽子になっています! 新聞はうさぎのドレスになったり、ねずみの家になったり、りすの手袋になったり。この絵本を見て、子どもたちも新聞紙でいろいろつくりたくなるはず。愛らしい動物たちと新聞紙のコラージュが楽しい絵本、40年ぶりの復刊。
―― 42年の歳月を経て、復刊されるなんてすごい事ですね。復刊することになって変えたところ、復刊作業で大変だったことなどはありましたか?
『みんなでつくちゃった』は、復刊する前は今よりも小さい判型だったんです。でも、復刊するときには大きくしたいなと思っていました。 そこでまず、土井さんに原画をお持ちかどうか聞きましたが「持ってないね〜」ということでした。 40年前の原画ですからね、やっぱりないか〜と思って、じゃあ、もとの本から絵をスキャニングして……と考えていたところ、もしかして会社の倉庫に保管してあるかも……という話になり探してみたら、あったんですよ! 40年前の原画が!! もう嬉しくて嬉しくて(笑)。 40年前の原画ですよ! それを目にすることができた〜という喜びと、原画から絵本が作れる〜という嬉しさと。 同僚と一緒に会社で大騒ぎしました(笑)。 早速、土井さんにも「原画ありました〜」と報告したら、土井さんも「あったの! 見たい!!」って。 40年前に描かれた原画がずーっと倉庫にあってだれも見てなかったということですからね。
長さんファンとしては、まず「見たい!」ってなりますよね(笑)
―― なります! 私も見てみたいです。
『みんなでつくっちゃった』が復刊できること自体も嬉しいことでしたが、原画が見つかったこともすごくよかったなあと。 おかげさまで、その後、長さんの原画展で『みんなでつくっちゃった』の原画も展示していただいたんです。絵本も、長さんの新しい作品として読んでくださる読者もいれば、懐かしみながら読んでくださる読者もいて、さらに40年前の原画を見ることもできるようになって、本当に復刊してよかったと思います。 さらに言えば、復刊した後、判型やデザインを新たにしたことにより「すごくいい絵本になった。復刊の意味があることがよくわかる絵本だ」と褒めていただけたりしました。これは一重にデザインをしてくださった日下潤一さんと、「日下さんにお願いしようか」と言ってくれた土井さんのおかげです。
―― 判型やデザインを変えて復刊するのは珍しい事なのではないでしょうか?
復刊の意味って、とてもいい絵本なのに、なんらかの理由で品切れになってしまった、それをもう一度、読んでもらうということだと思っていたんですが、内容だけでなく、デザインや仕様にも大きな意味があるということを認識することができました。 『みんなでつくっちゃった』のデザインでいえば、判型を大きくするといっても、以前のページをそのまま大きくするのではなく、以前のよさを残しながら、新たにどんな書体がいいのかをデザイナーの方が考えた上で、今回の判型のためにデザインし直してくださっているんです。ですので、今の読者にとって読みやすくなっていると思います。 こういうことをひとつひとつ確認できるというのは、編集という仕事に携わる者にとっては、とても大切なことだと思います。『みんなでつくっちゃった』の復刊は私個人にとっても、いろいろなことをもたらしてくれました。
―― 『みんなでつくっちゃった』の復刊にそんないろいろな方が関わっていて、その方たちの思いが込められているなんて、知りませんでした。當田さんの中で『みんなでつくっちゃった』以外に思い入れ深い、長新太作品はありますか?
たくさんあって、すごく難しいんですが……。 長さんの作品がナンセンスというジャンルに位置づけられることが、すごく実感できたというエピソードがあるので、その絵本を。 『しんくんとへんてこライオン』(小学館)が発行されたとき、「あ、長さんの絵本だ」と思って購入し、たまたま家に遊びにきていた姪っ子に読んであげたんです。そうしたら、あるページで「あはははは〜」とすごく笑い出したんです。 絵本としても楽しんでいたと思いますが、もう、その笑いの勢いがすごくて、びっくりしました(笑)。それで読み終わると「もいっかい、もいっかい」と。で、また最初から読むんですが、同じページにくると「あはははは〜」と。「なぜ、毎回そこ!?」と思いました。
それを20回くらい繰り返したかなあ。もう疲れちゃって……でも子どもが読んでというときは、おしまいにしちゃいけない! と自分に言い聞かせて読みました(苦笑)。「夕ご飯よ〜」と言われなければ、まだ続いていたかもしれません…。長さんってすごい〜と実感しました。 ―― 子どもたちは理屈なく、長さんのナンセンスの虜になるんですね。2015年、長新太さんが亡くなられて10年になりますが、これからもきっと長さんの作品は子どもたちに親しまれていくことでしょう。 そうですね。最近、すばらしい作家さんが亡くなる度に、改めて作品を読んだりしてます。亡くなられると、とても残念ですが、作品は読み続けられるということを大切にしたいなあ、と思ったりします。長さんの絵本もぜひ愉しんでほしいです! 大日本図書 長新太さんの絵本
1958年のデビューから2005年まで独自のナンセンス世界を生み出し続けてきた長新太さん。 長さんってどんなひと? 知りたい方はこちら>>
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