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【長新太没後10年記念連載】 担当編集者&絵本作家インタビュー

2016/03/31

【連載】第8回 『わたしのうみべ』担当編集者 小山菜穂子さん(佼成出版社)インタビュー

【連載】第8回 『わたしのうみべ』担当編集者 小山菜穂子さん(佼成出版社)インタビュー

今回おはなしを伺うのは、佼成出版社の小山菜穂子さん。もともと長新太さんのファンだった小山さんは、編集者となり、念願だった長さんの絵本を編集しました。「にぎやかで楽しいナンセンス」とは対照的な、「静かなナンセンス」と小山さんが語る、『わたしのうみべ』が生まれたきっかけを伺いました。
●いつも和やかな雰囲気を作ってくださる、優しい方でした。
―― 長さんとはじめて会ったときのことを教えてください。

入社1年目、授賞式でお見かけしたのが最初です。以前から長先生の作品のファンでしたので、緊張しながらご挨拶をしました。長先生は「あ、そう。がんばってね」と、そっけなくおっしゃっていました。けれどもその後、別の機会でお会いしたときに、私のことをおぼえてくださっていて、お声をかけていただいたのがとてもうれしかったです。作品を担当することになると、私の失敗談をとても楽しそうに聞いてくださって、「いやー、小山さんがそういう人だとは思わなかったなあ」と、豪快に笑っていらっしゃいました。会うたびにその話を持ち出して、また笑うことをくり返し、いつもなごやかな雰囲気を作ってくださる、優しい方でした。
―― 絵本に対する長さんの姿勢、絵本を作っているときのエピソードなどをお聞かせください。

「子どもの描いた絵にはかなわない」というようなことをおっしゃったことがあります。理論的ではなく、感覚的なことをとても大事にされていました。 私が担当させていただいた『わたしのうみべ』には、長先生らしからぬタッチのお人形が出てくるのですが、それを質問したところ、「ああ、これを描いたんだよ」と、かたわらのお人形を見せてくださったこともありました。長先生は、常に作品全体のおもしろさのバランスを考えて、とことん追求し、そのためには新しいタッチも積極的に取りこんでいこうという意欲をお持ちでした。

わたしのうみべ わたしのうみべ」 作・絵:長 新太 出版社:佼成出版社

私は朝の海辺が大好き。海はいろいろな物を運んでくるから。木やビン……、オバケに怪獣?!ふしぎな物が流れ着く。でも、何もない日もある。それでも、私は毎日海へ行く。海の向こうにはいったい、どんな世界があるのかしら?朝がくるたびに流れ着く物は、海がさまざまなドラマを生み出す、ふしぎな「生き物」であることを物語ります。ページをめくるごとに、ヘンテコなドラマのかけらが打ち寄せられる、この絵本は、ナンセンス作家・長新太が描く、何だかヘンだけど、ふしぎに叙情的な海の詩です。



―― 『わたしのうみべ』を出版するまでの経緯を教えてください。

「長先生の絵本を出したい!」と熱い思いを持ち続け、企画書を出し続け、ようやく長先生にお会いして出版の打診をしたところ、「いーですよー」と、ゆるーくOKをいただきました。
海辺に毎朝流れ着く、いろいろな「モノ」たち。それをすべて受け入れ、「朝の海辺が大好き」と言う女の子。にぎやかで楽しいナンセンスとは対照的な、「静かなナンセンス」。長先生にとっても新しいことにチャレンジなさった作品です。製作中はそのお手伝いをさせていただくことに、私自身もとても興奮していました。
出版後は販促活動にも積極的に協力してくださいました。クレヨンハウス(※)でサイン会を催したのですが、長先生の人気は私たちの想像を超えていて、開始時間前から売り場に人がごった返していました。人数や時間に制限を設けていなかったので、100人以上が列に並んでしまいました。真っ青になって頭を下げる私に「終わったらお酒がおいしいね」とおっしゃって、それから3時間かけて、全員に丁寧にサインをしてくださいました。
※クレヨンハウス……青山にある絵本専門店
―― ご自身の中で一番思い入れの深い、長新太さんの作品は?

『へんてこ へんてこ』です。渡ろうとするとどんな動物も体が伸びてしまう、不思議な橋のお話です。「ヘーーービーーー」とか、「イーーーヌーーー」とか、字を読むだけで笑ってしまう絵本です。当社で発行したこともあり、くり返しくり返し、何度も読んで、おもしろさのヒミツを研究した作品でもあります。その絵本の担当者を質問責めにして、「そんなに長さんが好きなんだねえ」とあきれさせ、とうとう根負けして長先生に引き会わせてもらったという、思い出深い作品です。

へんてこ へんてこ へんてこ へんてこ」 作・絵:長 新太 出版社:佼成出版社

森の中にある橋は、とても不思議。なぜかというと、その橋を渡ると体がニューッと伸びてしまうから。イヌもネコもゾウさんも…。


―― 他社の本の中で、「実はこの本が好き…」という作品はありますか?

くまさんのおなか』(復刊ドットコム)です。テディベアのような、くまさんの姿に衝撃を受けて手に取りました。ビビットなピンク色のくまさんがかわいらしい印象なのですが、「かわいい」のと「ちょっとこわい」が同居していて、くすぐったくなるような不思議なおもしろさです。くまさんのおなかを開いて、ふわふわの中身に顔をうずめて……という妄想に引きずり込まれ、「ハッ! いかんいかん!」と正気に返る。大人でもうっかり長新太マジックにはまってしまいます。


序章 ナンセンスの王様 長新太さんってどんなひと?
1958年のデビューから2005年まで独自のナンセンス世界を生み出し続けてきた長新太さん。
長さんってどんなひと? 知りたい方はこちら>>





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