「みんな、ごはんですよーっ」飼育員のミドリさんの声に、リスたちが集まってきました。ここは自然動物園のなかの「リスの森」。100匹をこえるニホンリスがくらしています。
巣箱から飛びだした食いしん坊のカリンは「早くいこう。クルミがなくなっちゃうよー」と、仲良しのキッコの巣によびかけます。ここでくらすほとんどのリスが、人間が作った巣箱を使うのに、キッコは木の皮や小枝をあつめて居心地のいい巣を作るのです。
カリンとキッコ、そしてカリンの弟ポックルと、キッコの弟トトは、春にうまれたばかりのニホンリスの子ども。いちばん年寄りのチャパおばあちゃんが「外の森」の話をしたことから、4匹の冒険がはじまります――。
外の森からきたさいごのリス「クッポさん」が、かつてどんなに早く枝を駆け上がったか。動物園では食べられない「赤松の木の実」のおいしさ。チャパおばあちゃんから言い伝えを聞いた2匹は、あこがれを募らせます。自然動物園のまわりには森が広がっていると思いこんだ2匹。ある日思い切った行動に出て、「リスの森」を飛び出しますが・・・。
現実には自然動物園の外には、道路や住宅街が広がるばかり。落ちていたアイスクリームをなめてふらふらになったり、カラスに襲われそうになったり、人間に写真を撮られたり。出会った犬から、近くに松林があることを聞いて林をめざしますが、行けども行けども着きません。カリンとキッコ、2匹を追いかけてきた弟のポックルとトト。4匹は、松林にたどり着くことができるのでしょうか!?
冒険で学んだポックルが「木はぼくたちの味方なんだ」と胸をはる場面が、心に沁みます。そう、何が味方かを見きわめることができれば、きっとどんな場所でも生き延びることはできるはず。子リスたちの冒険にハラハラしながら、自分だったらどうするだろうかと自然に考えてしまうかもしれません。ポックルが言うように「金網にぶつからないのが、ほんとうのくらし」か、それとも・・・?
読みやすい大きさの文字にルビがふられ、小学校3年生くらいからおすすめ。動物園のリスたちが、とっても身近になりそうな読み物ですよ。「いのちいきいきシリーズ」のなかの1冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む