リトル・ビリーのママはいつも言う。「いい子にしてなさい」って。
でもリトル・ビリーにとって、してもいいって言われることは、なにもかもつまらないことばっかり。
いい子にしていることにうんざりしていたリトル・ビリーは、ママからぜったいに行ってはいけないといわれている「あやまちの森」に探検に行くことにします。そこにはおそろしい怪物がいて、一度入ったら出てこれないというのですが、それは本当なのでしょうか? 「あやまちの森」の入り口についたリトル・ビリーは、怪物なんていやしない、と静かな森の中に入っていきます。けれども遠くからへんな息遣いが聞こえてきて、それはたちまちゴウゴウほえるおそろしい音に変わり、リトル・ビリーを追いかけてきます。これがママのいう「チヲスイ・ハヲヌキ・コナゴナニシテポイ」なのでしょうか!?
決死の思いで矢のように走り、目の前に現れた大きな木の幹によじ登ったリトル・ビリー。怪物は消え去り、ほっとひと息ついたところに現れたのは、小さな人たち「ミンピン」でした。ミンピンは木の上に町を作り、鳥たちと仲良くしながら、地上に降りずに暮らしていける方法を編み出していました。けれどもリトル・ビリーは地上に降りなければ家に帰ることができません。そこでリトル・ビリーが考えた怪物をやっつける方法とは……?
ダメと言われていることこそ気になってしまうのは好奇心旺盛な子どもなら自然なことですよね。行ってはいけないと言われていた「あやまちの森」で、リトル・ビリーは確かにママの言うとおり怪物と出会ってしまいます。しかしそこでひるまない姿は頼もしく、ミンピンとの出会いやさまざまな鳥が飛び交う様子を目にする体験はかけがえのないものとして映ります。さらに怪物を倒すために、リトル・ビリーは大きな冒険へと繰り出すのです。
お話を書いたのは、イギリスの作家、ロアルド・ダール。『チョコレート工場の秘密』『マチルダは大天才』などユーモアたっぷり奇想天外なお話は、世界中の子どもたちを夢中にさせる面白さ。ロアルド・ダールのお話を読んだら、本ってつまらない、本って難しそうなんて考えは吹き飛んでしまうことでしょう。はじめて読む時には、こんな面白いことを書く作家がいるんだ!ときっとびっくりしてしまうはず。その中でも本書はとくに読みやすく、読み物の世界に入り始めた小学三年生ぐらいから楽しく読めることでしょう。
さらに、ロアルド・ダールの作品の挿絵といえば、クェンティン・ブレイクが有名ですが、ロアルド・ダールのストーリーの面白さをさらに際立たせている重要な存在です。そのクェンティン・ブレイクが、たった一冊だけ挿絵を描いていなかったというのが本作品。なぜかといえば、すでに『ふしぎの森のミンピン』(1993年評論社刊、現在は絶版)というタイトルで、すでに他の画家がすばらしい絵をつけていたからなのだそうです。しかし今回めでたくクェンティン・ブレイクの挿絵がついて、「ロアルド・ダールコレクション」の21巻に加わりました。
「いつでも、きみのまわりの世界を、こうきしんいっぱいに目を見ひらいて、見まわしていてほしいんだ。」ロアルド・ダールが作品に込めたメッセージ。元気いっぱいの子どもたちにぜひたっぷり感じ取ってほしいと思います。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
続きを読む
「いい子にしていなさい」といつも言われているリトル・ビリー。リトル・ビリーは、いい子にしていることに、ウンザリしていた。ママが絶対やってはいけないということ――すぐそこにある「あやまちの森」を探検すること――をやってみたくてしょうがない。よし、かんたんだ。窓を乗りこえて庭に出て森まで走っていけばいい。ところが、シーンと静かだった森に、やがて、何か大きなものが近づいてくるような音がひびきはじめた……あれは森に住んでいると噂されるカイブツにちがいない! 音はどんどん大きくなり、カイブツのはきだす煙がもくもくとあたりをおおいはじめた。必死で逃げるリトル・ビリー。大きな木の枝にとびつき、下を見ずにどんどんのぼっていった。長い木登りのあと、やっとほっとしてあたりを見まわすと、そこにはなんと……!! 小さな森の住人「ミンピン」たちの町があったのだ。ミンピンたちも、カイブツのせいで、地面を安心して歩くことができず、樹上高く暮らしているという。このままでは、リトル・ビリーもうちに帰れない。リトル・ビリーとミンピンは、なんとかあのカイブツをやっつける方法はないかと考えをめぐらせる。――物語の名手、ロアルド・ダールの心おどる冒険物語。ダールの児童書ほぼすべてにイラストを添えてきたクェンティン・ブレイクが今回この作品に初めて絵を描き、ロアルド・ダール コレクションに新たに加えられた。
続きを読む