甲斐信枝さんが描く絵本のファンは多い。
2023年11月30日、93歳で亡くなった甲斐さんは、
その晩年の2016年には里山で植物や虫たちと向き合う姿がドキュメント番組になるなど、
「足元の小宇宙」を見つめる絵本作家として評価が高い。
じっと見つめることで、世界の真実が見えてくる。
そんな絵本作家だろう。
そんな甲斐さんが描いた『きゃべつばたけのぴょこり』は、2003年に発表され、
2017年に「幼児絵本ふしぎなたね」シリーズの一冊として絵本になった作品。
「ぴょこり」というのは、きゃべつの葉の裏についている不思議な形のもの。
アリだとかかめむしとかがたたくと、ぴょこりと動く、変なもの。
さあて、これは何だろう。
実は、そのヒントが絵本の最初にちゃんと描かれている。
「きゃべつばたけにちょうちょがたくさんいる。」
そう、ぴょこりはちょうちょのさなぎ。
甲斐さんはさなぎからちょうちょが羽化するさまもちゃんと描いていて、
羽化したてのちょうちょがそれでもなかなか飛び立たないことも描いている。
おそらく実際その様子を観察しないと描けない世界だ。
子どもたちは甲斐さんの絵本から、土の匂いとか虫たちのささやきとかを体験できるはず。
私たちの世界はそんな生き生きとしたものたちと共にある。