フランス詩人ラ・フォンテーヌの有名な寓話集がとっておきの絵本になりました。
マーガレット・ワイズ・ブラウン再話の13篇に、フランスの画家アンドレ・エレの絵が添えられています。
“ラ・フォンテーヌのおはなし”は、紀元前から語り継がれてきたイソップ童話を下敷きに、詩人ラ・フォンテーヌが、17世紀当時の皇帝ルイ14世の6歳の王太子に捧げたといわれる寓話集です。
シャガールら有名な画家がこの寓話集に心惹かれ、絵をつけてきましたが、アンドレ・エレもその一人。
アンドレ・エレが素朴で味わい深いタッチの挿絵をつけフランスで出版した絵本を、さらに再話編集したアメリカ版が1940年に出版され、本書はその日本語訳なのです。
主人公は動物たち。ひとつひとつの話は1、2ページでともすればあっさりと読み過ごしてしまいそう。
でもそこには人生のおもしろみや切なさ、深ーい真実がうつし出されています。
わが家の4歳の娘が好きだったのは「二頭のロバ」。
片方のロバは背中に積んだ黄金を自慢に思っていましたが、どろぼうに襲われて死にそうな目にあいます。
一方、干し草を積んだロバは無事で、「金目の荷物をはこんだり、りっぱな役目をめいじられたりすることが、かならずしもいいとはかぎらないんだよ」と襲われたロバを諭します。
「アリとコオロギ」「オオカミとヤギと子ヤギ」(7匹ではなくここでは1匹の子ヤギ)など、知っていそうで「あれ?」と違いに驚くお話もありますよ。
あなたはどんなお話が好きでしょうか?
絵も言葉もむずかしくないからこそ、隠れたエッセンスが光ります。
一口には味わいきれない、ちょっとずつ時間をかけて読みたい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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