「しんぱいなことがありすぎます!」
それはいったいどんなしんぱい事なのでしょう。
ももがしんぱいなのはまずは忘れ物です。忘れ物をして泣いていたり、不自由をしていたり、ケンカしているクラスメイトたちを見て、ぜったいに忘れ物をしたくないと思うのです。おかげで、教科書やノートがぎゅうぎゅうに詰め込まれたもものランドセルは、いつもパンパンです。さらに右手にも左手にもたくさんの荷物を持って、ももは学校へ向かいます。
そんなももの登校姿を見て、「ヤドカリみたいだな」と言ってきたのは、同じクラスのかずまくん。かずまくんは、ももとはまるっきり違って、とっても身軽な様子です。どうしてかずまくんは軽そうなの? そんなかずまくんはクラスでも忘れ物ナンバーワンで、先生に注意されても、えへへへへって笑っています。どうしてしかられてるのに、わらってるんだろう。ももはかずまくんが不思議でたまりません。
その日の学校帰り、かずまくんと帰り道でばったり会ったもも。かずまくんにでっかいコイがいる、と言われて川をのぞくと、思いがけない出来事が……。
しっかり者のももちゃんと、元気でお調子者のかずまくん。ももちゃんタイプの子もかずまくんタイプの子も、どちらでもないけど似ている子がクラスにいるなあ、なんて思い浮かぶ子も、共感しながら、思わず笑っちゃうような場面がいっぱいです。個人的にとくに笑ってしまったのは、かずまくんから金魚の話を聞いてびっくりするももちゃんの表情! ふたりのユーモラスなやりとりの中に、それぞれの個性が生き生きと光ります。
作者は、子どもたちの身近な場所を舞台に、子どもたちの本音に寄り添うお話をつぎつぎに生み出されている児童文学作家の工藤純子さん。全ページに絵本作家の吉田尚令さんの楽しく生き生きとしたさし絵が入り、文字も大きいので、はじめてのひとり読みに挑戦する本としてもおすすめです。大人の方が読んであげるのもいいですね。
入学前の子どもたちや小学1年生にとくにおすすめの一冊。ももちゃんとかずまくんのやりとりに触れて、緊張する気持ちが少しでもほどけていきますように。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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