おとうさんもおかあさんもいないアンは、緑の切り妻屋根の家に住むマリラとその兄マシューに引き取られて「プリンス・エドワード島」で暮らしています。
ある日、日曜学校のピクニックで、アイスクリームが出ると聞いて、大興奮! なぜならアンはまだ一度も、アイスクリームを食べたことがないのです。ピクニックへも行ったことがありません。
ああ、食べてみたい。行ってみたい。
けれどもピクニックを水曜日にひかえた月曜日に事件が起こります。
マリラがとても大切にしているアメジストのブローチがなくなってしまったのです。
はたしてアンは、ピクニックへ行くことができるのでしょうか。
『赤毛のアン』は、世界中で愛されている、孤児の女の子の物語。カナダの作家、L.M.モンゴメリが1908年に発表した長編小説です。こちらの『はじめての赤毛のアン アイスクリームのピクニック』は全38章からなる『赤毛のアン』から13章と14章をもとに構成されています。特徴として挙げたいのが、全体を短くまとめたあらすじではないということ。長編の『赤毛のアン』を短くして全体を伝えるのではなく、2章分を丁寧に描き出すことで、原作『赤毛のアン』から感じられる魅力をたっぷりと伝えてくれています。
アンの前向きな明るさや奔放さ、マリラの厳しくも深いアンへの愛情、言葉少ない中にも優しさに溢れたマシュー、プリンス・エドワード島の美しい自然の風景‥‥‥。原作の『赤毛のアン』はまだ難しくて読めない年齢の子どもたちも、本書によってアンの魅力に触れられることでしょう。ひとり読みなら小学3年生くらいから読める易しい1冊です。
アンの希望や想像力に満ちあふれたことばや、暮らしぶりを生き生きと描くのは、作家の小手鞠るいさん。あっという間にひきこまれる語り口に、オールカラーの挿絵がやさしくかわいらしくて、読み始めたらどんどん読めてしまうはず。挿絵を描かれたのは、さこももみさん。色彩豊かなプリンス・エドワード島の自然の景色のページはずっと眺めていたくなるほど美しく、家の中のインテリアや家具、ピクニックの小物は可愛らしく魅力的です。またアンをはじめとする登場人物の表情も豊かで生き生きとしていて、それぞれの気持ちがしっかりと伝わるとともに、さまざま想像も膨らんでいきそうです。
巻末には、『赤毛のアン』ぜんぶのお話が読める本の紹介がありますので、いつか読む日のために、参考にしてみて下さいね。
本書のあとがきにはこんなメッセージがあります。
「将来、モンゴメリが書いた原作を英語で読んでみたり、物語の舞台プリンス・エドワード島にあるグリーン・ゲイブルズをたずねてみたりしてくださったら、どんなに素敵だろうと思います。世界中にいる、アンやマリラ、マシューが好きな人たちにあなたもぜひ、くわわってくださいね。」
あらゆる夢や世界が広がる「赤毛のアン」との出会い。その入り口となる本書も子どもたちにとって特別な1冊となることでしょう。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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