グリム童話と言えば『赤ずきん』や『白雪姫』などが有名ですが、実はあまり知られていないお話もたくさんあるんです。そんな中からとてもおもしろいお話を選んで本にしたのが「グリムの本だな」シリーズ。
今回は、けちな王様のお宝を手に入れようと考える6人組のお話です。
頭がよくて勇敢な男は、王様の兵隊になっていくさで戦いましたが、もらえたものは小さな銅貨3枚だけ。そこで、仲間を集めて王様からお宝をいただいてやろうと考えます。道中、兵隊は出会った男たちを次々に仲間にしていきます。びっくりするくらい体の大きな力持ち、すごく目がいい猟師、鼻息で風車を回せる男、足が勝手に走り出す早足の男、帽子をまっすぐかぶると辺りが寒くなる男を仲間にし、みんなでお城へ向かいました。
ところで、王様にはとても足の速いお姫様がいました。速すぎて競争する相手がいなかったので、王様は「ひめと きょうそうをして、かったものは、だれでも ひめと けっこんできる」というおふれを出していました。
この競争に挑むことにした6人。早足の男がいるのだから楽勝かと思いきや?
こばようこさんの描く登場人物たちはとても個性的で、ひとりずつのセリフが少なくてもどんな人なのかすぐに想像できてしまいます。何が起こっても知恵と特技で乗り越えるクールな6人と表情豊かな王様の対比もおかしく、そこへ自由奔放なお姫様が加わって、ますますにぎやかに。
竹下文子さんの文章も読みやすく、漢字にはふりがなが振ってあるので子どもがひとりで読める「グリム童話」としておすすめの一冊です。
(近野明日花 絵本ナビライター)
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