主人公が9歳ということなので、中学年以上の方にお薦めします。
1973年チリで起きた軍事クーデタをベースに書かれた作品です。
反戦(反独)を訴える作品ですが、大人も含め軍事政権体制下の民衆の生活というものが、いかなるものかを知る上で、貴重な一冊だと思いました。
日常の中に、ひたひたと、きな臭いにおいが立ちこめて、大人たちの狼狽の中、こどもたちも考えずにはいられなくなる非常事態。
ペデロは、チリの9歳の少年。
サッカーが好きで、愛する両親と暮らしています。
軍事クーデタが起こり、友だちの親が“独裁反対”をとなえたかどで、日常の真っ昼間、仕事着のまま軍人に連行されていきます。
ペデロの家では、夜、口数も少なく両親が遠い外国の周波数に合わせ、ラジオ放送に聞き入っています。
友人の親が連行された夜、お母さんは泣いていました。
翌日、学校に軍人が現れ、『我が家の夜のすごしかた』というタイトルの作文を書かせられます。
こどもの口から親の反独裁因子をさがしあてようとする画策か、なんとも卑劣な行為だと思いました。
ペドロの作文を読んで、このような嘘を書いて親を守らなければならないなんて、なんて悲しいことだろうと思いました。
ペドロのように機転のきく子でなければ、真実を書いて親が連行され、自分の作文が理由だったとわかったら…。想像すると、その子の人生がねじ曲げられてしまうようで、やりきれません。
嘘を諫める事もできず、父親が「こんど、チェスを買ってこなくっちゃ。」と笑っていう一言を読んで、胸が苦しくなりました。
“純粋な子どもの心”まで利用するものは、戦争であれなんであれ許されるものでは無いと思います。
「卑怯、卑怯、ひきょう〜、でも怖い!」これが息子の一事です。
お子さんが小さい方は、ご家族にもご一読をお薦めします。